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2013年8月の1件の記事

2013.08.31

ただ聴くチカラ

クライアントさんとのコーチングセッションが終わったあと、
ログアウトせずにそのままスカイプを立ち上げていたら、
そこに「ヘルプ ミー!SOS!」というメッセージが入って、
内心、あぁ、失敗した、すぐにログアウトするんだった、
と、思いました。


メッセージの送り主は京極さん(仮名/男性/30代)。
障害者支援団体の研修がご縁で知り合った方ですが、
この方は当事者なんです。


高次脳機能脳障害で事故がきっかけと伺っていますが、
詳細はわかりません。
研修後にSNSでコンタクトを求めてきたので、
私も軽い気持ちで応じたのですが、
実はこの方、関連の各団体を悩ませている、
名うてのクレーマーさんだったんですね。。。


それでその後、
某団体へのクレームを仲介して欲しいと言われて、
私も結構、対応に苦慮した経験がある方なんですが、
たまにいただくSNSのメッセージも、
普通なら気にしないようなところへの怒りや疑問が多くて、
私は彼からの文面を見るたびに、
「あぁ、どうしようかな、これ…」と、負担に感じながら、
毎回、ものすごく考えて熟慮して返答して、
そのたびに大きなエネルギーを使う人だったんです。


その彼が夜に「ヘルプ ミー!SOS!」と言って来て、
「警察にも110番したけど埒があかない」と言って来て、
「ぷらたなすさんに電話したけど話し中でした」と言って来て、
私は私で、その時間帯はちょうど電話打合せで、
何度か着信があったのはわかっていましたが、
むしろ自分が打合せで話し中だったことを、
幸いに思う気持ちがありました。


正直言って、その日は提出物の締切などもあって、
私は彼には関わりたくなかったのね。
だから、自分が話し中であったことを「よかった」と思っていたら、
23時過ぎに、またかかってきたんです。


えっ、この時間でも来るの?
一瞬、どうしようかな、と思いました。
私には「電話に出ない」という選択肢もあったよね。
どうせいつもの、過敏で過激な不満と疑問に決まっている…


でもね、ヘルプ!とかSOS!とか、警察に電話した、とか、
これがもし万が一、本当に本人の命に係わる事だったら、
「あたし、一生後悔するかも」
そんな風に思い直して、電話に出ました。


ですが、話を聞いてみると、やっぱりいつもの、
「おかしい、変だ、納得いかない」という訴えでした。


    *    *    *    *    *    *


話しの中身をまとめると、こうです。


----------------------------
帰宅途中に、とあるチェーンのカフェに寄って、
サンドイッチを頼んだら、
スタッフが自分にサンドイッチを手渡す前に、
目ヤニをぬぐうのを目撃してしまった。
それを見て食べる気がしなくなって、
商品を返品しにいって理由を告げて指摘したら、
そのスタッフの態度が納得いかず、
パニック状態になってしまった。
----------------------------


と、いうものです。


彼は精神的におさまりがつかず、
その後、関係各所にクレームの電話をかけまくるのですが、
時間帯も遅くて一部は繋がらず、
繋がっても相手にされず、
なぜか110番にも電話を入れて、
そこでも適当にあしらわれ、
段々混乱してくるんですね。


それですっかり落ち着きを失って、
どうにもいたたまれなくなって、
私のところに電話をかけてきた、というわけです。


私ね、そこまでの彼の話を聞いて思ったんだよね。
ていうかなんか、見えたというかわかったというか。


たぶん、ものすごい不安な気持ちになったというのが、
なぜかそのときは理解できたのよ。


高次脳機能障害というのが、
どういう障害かはよくわからないけど、
話しを聴いているうちに、
「この人は理屈でカタが付かない状況に遭遇した時に、
思考の整合性が取れなくなって自己解決できず、
多大な不安に襲われるんだ、きっと…」
と、思いました。


この場合の自己解決というのは崇高なものではなく、
「ダメじゃん、この店」とジャッジして終わるとか、
「最低!二度と来ない!」と蔑んで、気持にピリオドを打つとか、
そういうことね。


    *    *    *    *    *    *


そのときに限ってなぜか心情が理解できた私は、
今、彼にとって一番必要なのは、
とにかく話をさせることだと思いました。
気持が落ち着くまでアウトプットしてもらって、
頷いて、受け止めて、共感して、承認して…


考えてみたらさ、今までの私は、
やりとりを早く終わらせようとして、
頃合いを見計らって解決策を提示するとか、
助言するとか、代案を示唆するとか、
物事が収束する方へ、収束する方へと、
意図的にやりとりしていたかもしれない。


でもさ、違うんだよ、そうじゃないんだよ、
彼は、妙に落ち着かず不安定でどうにもならない精神状態を、
誰かに解決してほしいんだと思ったの。
解決してほしいのはクレームじゃないんだ、自分の気持ちなんだって。


そう気が付いたときに、私は腹を決めました。


時計を見たら、もう23時半。
でもいいや、今からやりたかった仕事は、
取りあえず今日はあきらめる。(それが可能だったから)。
で、今日は、とことん聴く。
2~3時間はかかるかな、でもいい。
今まで、「言う」ほうに意識を置いていたけど、
違うんだよ、「聴く」ほうに重点を置かないと。
そう思いました。


    *    *    *    *    *    *


「それを見た時に、
あーーー、どうしよう、どうしよう、ってなって…」


「京極さん、今はどこにいるの?」


「自宅です。」


「そんなんで、よく家に帰れたね、すごいよ。
そこまでパニック状態になったら、
普通は電車にも乗れないと思う。」


「そういうときは、シフトチェンジするんです。」


「???」


「バタバタしている自分の気持ちを落ち着かせるために、
リズムを整えようって意識的に思うんです。」


「リズム?」


「はい。元に戻るまで待つんです。」


「それで落ち着くの?」


「はい、生活の知恵ってやつですかね。」


「それは自分で考えたの?」


「そうです。」


「そうか。。。色々苦労があるんだね。。。
やっぱり障害があるって大変だよね。
よくやっていると思うよ。
今日だってちゃんと帰宅できてるし、
京極さんは、自分のことをよくわかっているし、
状況に応じて自分で対処できる人なんだね。」


「はい。。。」


そんな会話を続けているうちに、
彼が平常心を取り戻してきたのがわかりました。
そして、「言いたい事」を言い尽くしたのか、
今まで早口でまくしたてるようだった京極さんが、
次の話題を探して、一瞬、沈黙になる瞬間がありました。


チャンスだ。


と、私は思いました。
私は話題を変えました。


「さっき話してくれた◯◯ってよくわからなかったんだけど、
それってどういう活動?」


京極さんは、絵を描くのが好きなのです。
それでそういう活動に参加しています。
ですがその話の途中で意外な事がわかりました。
ご両親が行方不明なのです。


「オレ、親にお金貸してるんですよ。
でも夜逃げして連絡つかないんです。」


    *    *    *    *    *    *


切ないね。


なんかね、こういうの、すごく多いの。


前職でもそうだった。


お仕事が出来なくて、
どうしても契約終了しなくちゃいけない面談で、
よくよく話を聞いてみると、
兄弟全員が定職を持たずに転々としていて、
ご両親は離婚とか破産とか夜逃げとか。。。
(ま、それは、また別の機会でいいや)


で。


その後は、段々普通の世間話になってきて、
私が今まで、
なんとなく「関わりたくない」と思っていた京極さんでしたが、
そのときの後半は、笑い合ったり本気で関心を持ったり、
ものすごく楽しく普通に充実した話ができたんだよね。


そして、さすがに、明日の仕事が気になった私が、
「京極さん、ごめんね、もうAM1:00を回っているし」と言うと、
「あ、すみません、今日はありがとうございます」
と言って、長い長い電話が清々しく終わったのでした。


    *    *    *    *    *    *


今回は、すっっごくうれしかったの。
だって、後半は会話を通じて普通に楽しかったんだもの。
色んな話を一杯、一杯しました。


それで思ったのはね、「ただ聴く」って大事だな、ってこと。


京極さんは、その名前を言えば、
関連の団体さんの多くは「あぁ」とわかるぐらいの、
困ったさん(クレーマー)の常連だと思うの。


でもね、彼はきっと、受け入れて欲しいんですよね。
何も言わずに、話に耳を傾けて欲しいんだと思う。
そして頷いて、「確かにそうだ!」と共感して欲しいんだと思う。


でも、ほら、クレームモードで接してくると、
人はどうしても、「解決」とか「終了」を目指すじゃない?
だけど、そこを目指さずに「ただ聴く」って、
すごく大事なんじゃないかと思いました。


人って不思議よね。


今回の一件で、私は彼を面倒な人と思えなくなりました。
むしろ、もっと色々聞かせて欲しい。


ネットに精通している京極さんのことなので、
何かの検索でこのブログにたどり着き、
「もしかしてこれは自分では?」と思うかもしれません。


でも、「それでもいい」と思って今日は書きました。
あの日を境に何かが変わったんだよね。
きっとそう、たぶん、あのときから彼は、
私の「友達」になったんだと思います。

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