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2013.01.08

主任の涙

皆様、あけましておめでとうございます。
最近は更新も少なく、以前にもまして放置状態の、
「ぷらたなすのひとりごと」ですが、
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

最近は電話応対の研修がたまに入ります。
コールセンター出身とは言え、
当時のセンターは研修も皆無に等しく、
私自身もいわゆる正しい「電話応対」を、
一度もきちんと教わったことがないまま、
いつも雰囲気と成り行きで適当に対応して来ました。

なのでそんな研修は自分には無理
(できればやりたくない、正統に教えられる自信がない)
と思っていましたが、
だったら自分にできる内容の研修をやればいいと考えを変えて、
ロープレ⇒録音⇒フィードバック⇒ロープレ⇒…を繰り返す、
トレーニング的な研修を今はやっています。
これならできるさー、敬語とか全然触れないしね(笑)

そして意外にも、敬語や言葉遣いを主体にしたものより、
どうやらそちらのほうが企業さんのご希望に沿う事も多く、
結構反響が良いので気を良くしちゃったりしています^^

    *    *    *    *    *    *

さて年末は、3回連続で、
イベントホールさんの内勤女性社員の方を対象に、
電話応対研修を行いました。
「好感の持てる名乗」「金額の問合せ」
そして「来場者への道案内」の3つにテーマを絞り、
前述の形式で行いました。

自分の話し方を録音で聞くと、みんなびっくりしますよね。
「思った以上に声が事務的」「口調が荒い」「暗い」「早い」
など、皆さんが勝手に気が付いてくれるので、
講師としては楽ですねー(笑)

毎回回収しているアンケートを眺めてみると、
「衝撃」「驚愕」の文字が多く使われており、
自分の話し方を客観的に聞く事で、
自分が思っていたものとはかなり違うという事に気が付けば、
それだけでも改善していくものだと思っています。

そして最終回。

回収したアンケートを見て、ふと手が止まりました。
書き間違えた箇所に訂正印が押してあるのです。

研修自体は私のキャラクターもあって、
わいわいガヤガヤとリラックスした雰囲気のため、
アンケートもそれを反映して賑やかです。
☆マークや♪マークや顔文字も多いし、
少々の書き間違いはどの人もボールペンで、
ぐちゃぐちゃ塗りつぶしたりして訂正しています。

でもその方は、二か所に二本線を定規で書いて、
訂正印を押してありました。
それを見た瞬間に、あー…と思いました。

この方はきっとアスペっこさん的な方だと直感しました。
だって普通、こういったアンケートの文字の書き直しごときに、
訂正印なんて使わないって。

その方、Aさん(20代女性)はちょっと幼い感じの雰囲気と、
がり勉さんのような(どこかオタクっぽい)顔立ちで、
研修中、定型トークは絶品のうまさでしたが、
臨機応変の応対になると大いに焦って言葉が出ない方でした。

「これはちょっと…」と思うところがあり、
思慮深く穏やかで優しい50代後半の、
ショートカットの主任(女性)さんに声をかけました。
「あの…少しだけいいですか?」

    *    *    *    *    *    *

主任さんに、他の人達に声が聞こえない、
部屋の片隅未来てもらい、
アンケートをお見せしました。
「これ、Aさんのアンケートなんですが見てもらえます?」

「はい…」

「ここに二か所、訂正印が押してあるでしょう?
でも普通は、こんなアンケートの訂正ぐらいで、
定規で二本線は引かないし、ハンコも押さないと思うんです。」

「あぁ…」

「この方ってもしかして、
場が読めない感じの人じゃないですか?
もしかしたら、クレームとか多くありません?
他にも、皆さん、この方で困っていませんか?」

「あぁ…」

主任さんはすぐに話を続けました。

「先生(今はそう呼ばれることも多くなりました^^)、
実は、今回の電話応対研修は、
彼女のための研修なだったんです。」

「えっそうだったんですか!」

「はい。」

今度は私が「あぁ…」ですよね。。。

「やる気はあって一生懸命なんだけど、
それが空回りしているというか、
私達もそれがいつも悩みの種でして、
それで今回、研修でもやってみようか、
という話になったんです。」

あー、そうだったんだ。うーーーーーん、
だったら本当は最初からそう言って欲しかったなぁ。
そしたら、彼女に対してはもっと違うアプローチができたのに。
敬語も言い回しも妙に綺麗で、
言われたことならその場できちんとできるので、
研修中は気が付かなかったよ。。。

でも仕方ないね、そういう事に精通していないと、
第三者(外部講師)に伝えるべき情報とは思わないでしょうし、
思いあぐねて「まずは研修」と思ったんでしょうね。
それしか手段が浮かばなかったのだと思います。

ですが短いその話を伺っただけでも、
彼女はやっぱり、少々アスペルガー的なところを、
持っている人なんだろうな、と思いました。

が、それなら「電話応対」だけ普通に指導しても、
あまり改善にはならないと私は思いました。
そこで「なんでわかったんですか?」と驚いている主任さんに、
少しお話をしてみました。

    *    *    *    *    *    *

「アンケートに訂正印」って普通は悪くない行動ですよね。
生真面目とは思うけど、でも別に?って感じですよね。
ですが、主任さんはアンケートの記述をちょっと直したい時に、
二重線引いてハンコ押しますか?

「いえ、自分は押さないですね(笑)」

「ですよね。二重線と訂正印は、
金銭の帳票や公的な文書ならわかりますけど、
ここではやらないですよね。
と言うことは、Aさんて物事の受取方や価値基準が、
他の人とちょっとずれている人だと思うんです。
タイプとしてこういう方ってたまにいらっしゃるんですよ。」

「あぁ、そうなんですか。他にもいるんですか?」

「いらっしゃいますよ。よくご相談を受けます。
たとえば、今それをやるべきではないようなときに、
他の人と違う事を延々とやっていたりしませんか?
やって欲しいと思う事をやらずに、
必要がない事をやったりしませんか?
あとは…音に敏感だったり、
電話応対ではお客様と噛み合わなかったり、
伝言や引継などでは、肝心な事が抜けていて、
ちょっとしたトラブルになったりとか…」

「えぇ、えぇ、えぇ、えぇ、全部あります。
どうしてわかるんですか?本当にそうなんです!
音に敏感…うん、そうそう、
部屋の隅で個人面談していても、
誰かが横を通り過ぎると、
そっちの方をずっと見ちゃうんですよ。
それで私がいつも、
『こっちを見て話しをちゃんと聞きなさい』って、
毎回注意するんです。仕事も、えぇ、ホントそうなんです。
なんっか、優先順位が違うんですよ。。。」

「そうですよね。イライラする時もありますよね。
でもAさんみたいな方は、
自分の今のその行動で他の人がどんな感情を抱くか、
察知するのが苦手なんです。
そういうタイプだと思ってください。」
(さすがにそれがアスペルガーとは言えず…)

「あぁ、他にもいるんですか、あぁ、なんか、
今、ものすごく納得した気持ちになりました。
納得して感動しました。感動と言うのも変なんですが、
うん、やっぱりこれは感動です。はい。」

「わかります、私も初めてわかったときはそうでした。
でもね、もしそうだとすると、この電話応対の研修では、
そんなに改善しないと思うんです。」
(講師としてこんな言い方もないよなぁと思いつつ^^)

「では、どうすれば…」

「考え方としてはね、
非言語を理解できないと思ってみてください。」

「非言語?ですか?」

「はい。
もしかして『もっと常識を持って』とか、
『周りをよく見て』とか『何が大事かよく考えて』とか、
そういった指導をしていませんか?
でも『常識』ってなんでしょう?
『周り』の何を見てどうすればいいんでしょう?
『何が大事』かよく考えても全くわからない場合は?
そこを言語化してあげないと理解しづらいんです。」

「あー、やってました、それ!
確かにそういう言い方をしていました。
なるほど、具体的に言葉で言えばいいんですね!」

この主任さんは、本当に察しのいい方で、
これだけの言葉ですべてを理解した感じでした。

「はい。言葉で”具体的な行動”として教えてあげないと、
このままだとご本人も辛いと思うんです。
例えば、『周りをよく見て』と言わずに、
『他の人がお掃除しているときは一緒に掃除をしてね』とか、
『退社前の1時間は◯◯と××を一番先に終えてね』とかです。」

「なるほどー!!!
言われてみれば、今までは、
Aさんには伝わり辛い指導をしていたと思います。
早速明日から試してみます。」

「ぜひそうしてください。
そうじゃないと、周りもみんな大変だし、
職場がギスギスし始めるし、
主任さんだって胸が痛むし…辛いでしょう?」

「はい。」

主任さんの顔を見たら、目に涙がにじんでいました。
大変だったんだね、きっと今まで。

「すみません。なんか泣けてきて。。。
これ悲しいんじゃないんです。
感動の涙なんです。私、変ですよね。」

「いえいえいえ、全然変じゃないですよ。
こういう事って、どうしたらいいかわからないし、
解決方法があるのかどうか…
はたして誰かに相談できるものかどうかも、
見当がつかないし、私もそうだったから、
すごくわかるんです。
でも一番つらいのは、Aさん自身だと思うので、
Aさんのためにもぜひそうしてあげてくださいね。」

「はい、ありがとうございました。」

    *    *    *    *    *    *

残業時間に行った研修だったので、
外に出たら星空に息が白くて、
足元は日中溶けた雪がまた凍ってツルツルでした。

主任さんが車まで荷物を運んで見送ってくれたので、
敷地を出る前に深々と頭を下げる主任さんに、
もう一度車の中から一礼して道路に出ました。

こんな日は、このまままっすぐ家に帰りたくないね。
ハンドルを握りながら、一瞬視線を夜空に移して、
ふーっとため息が出ます。
職場の「困ったさん」はどこにでもいるけど、
みんなどうしていいかわからないんだよなぁ。

でも今日の優しい主任さんのように、
Aさんのあれこれに悩みながらも、
決してAさん自身を憎んだり嫌ったりしていない人に会うと、
ちょっと話をしただけでも、
深いところで分かり合えるんだね。

それが嬉しかったんだな、私も。
決して明るい話ではありませんが、
仕事納めの日に不思議な暖かい気持ちで、
1年の仕事を終えることができました。




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