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2007.10.31

小さなヒーロー

C班が業務を終了して一ヶ月経った。


効率化やその他もろもろの事情があり、
C班の業務は企業側本社の強い意向で、
ちょうどひと月前の9月末をもって系列他社に委譲され、
C班の契約スタッフ達は、仕事と共に他社に移るか、
他の業務に変わって現在の職場に残るか、
または、いずれも不服としてここを辞め、
新しい仕事を探すか。
この三者択一を迫られた。


「せっかくのベテラン契約スタッフ達を他に流出させたくない。
ぷらたなすさんには、できるだけ退職者が出ないよう、
どうかご尽力をお願いしたい。
こちらの都合で皆さんには本当に申し訳ありません。」


企業にそう依頼された私は、
スタッフ達それぞれと何度も面談し、
受け入れ移動先を提案し、新しい条件を提示し、
どうなる事か…と少々ハラハラしつつ彼らの決断を待ったが、
最終的に、別な理由で以前から退職希望だった1名を残して、
全員が残留を希望してくれた。
ある程度予測できたとはいえ、
「他の職場で働くなんて考えられない。ここがいい。」
と残ってくれた皆の顔、ひとりひとりに、
涙が出そうな気持ちになったりした私だった。


さて、この後待ち構えているのは、
キャリアのあるスタッフ達が一から新人に戻って、
それぞれの移動先のリーダー達から受ける、
研修の日々である。


約10名のこじんまりとした集団は、ほとんどが同期生で、
人数も少ないせいか昔からチームワークがよく、
私は個人的になかなかいい班だと思っていたが、
残念な事に、それもこれを機にバラバラになった。


いくつかの移動先に分散した彼ら彼女らは、数年前の3月、
C班の立ち上げ時に初めてこの職場に入ってきた頃のように、
朝礼が終わると職場規定のキャリアバッグに、
自分のノートPCや何冊ものマニュアルをギューギューに詰めて、
次々とそれぞれの研修場所に散っていく日々が続いた。


C班の班長だった芦田君(30代前半男性スタッフ/仮名)は、
私の提案を断り班長職を辞してヒラの一スタッフに戻った。


「本当にそれでいいの?条件が下がっちゃうよ?」
「いや、いいです。こんな新人と同じ状態なのに、
移動先のB班でも班長だなんて、そんな事はできないですよ。
人に教えたり指示を出したり、
クレームを引き受けられない班長なんて、
オレ的には全然いる意味ないし、
B班で長くやってきた他のスタッフに申し訳ないし、
オレもやりにくいです。
また初心に戻って出直します。そのほうが気も楽だし(笑)。」


班長は業務的に優秀であればそれでいいというものではない。
人をまとめたり意見を出したり、施策・対策を練ったり、
業務とは一本別の資質が必要で、
芦田君なら業務ができなくても、
キャラ的にそれが可能な人と思っての事だったが、
今はとにかく余計な事には何もわずらわされずに、
必死で勉強したい、との事。
その心情も理解できた私は、無理強いはせずに了解した。


    *    *    *    *    *    *


芦田君の移動先であるB班は人数も一番多い最大の班だが、
業務としての守備範囲もあってないぐらいに大変広い。
気心の知れた少人数で、
単一業務をじっくり専門的にやってきた今までのC班と異なり、
雰囲気も少々殺伐として気ぜわしい。


なので移動者である旧C班のスタッフ達は、
誰もが皆、戦々恐々として研修を受けており、
時折雑談に紛れて感想を聞くと、皆一様に、
「難しいです」「扱い商品が多すぎて息が上がります」
「本当にやっていけるのかとても不安です」などなど、
何もかもが違いすぎて自信をなくしているような発言が目立った。
どこか馴染めない感じの集団に入っていく、
心細さも大きいのだろうな。。。


そんな中で、はるみさん(30代後半女性スタッフ/仮名)が、
こう言った。


「でもね、ぷらさん、聞いてください。
私なんてここで何年もやっている割には、
教わった事が、もう全然わからなくて、
頭では理解できても、それがどう業務に関連していくのか…
そういう事がちっとも見えてこないので、
せっかく研修してもらっているのに、
身に付いている実感がほとんどなくて情けないんですけど、
でも、芦田君はすごいんですよ。」


芦田君は、実はほかの人達よりも年下で、
背も少し低いので、
立ち上げ時から手腕を発揮してくれた、
伝説の班長:難波君の退職で班長を引き継いで昇格しても、
たいていの人が彼を今までと同じ雰囲気で、
「芦田君、芦田君」と、「君」付けで呼んでいた。


「え?すごいってどうすごいの?」


「芦田君はねぇ、聞いたらその場でわかるみたいなんです!
私とか由真ちゃんは、もう頭が混乱してきて、
ちんぷかんぷんで質問すらできないでいるのに、
芦田君は、ちゃんとわかっている人の質問をするんです!」


「はるみさんは違うの?
入ってきた当時の皆さんを知っている私から見れば、
はるみさんも芦田君も、同じような超初心者で、
当時は右も左もよくわかっていない新人さんだったけど、
私ははるみさんも同じぐらい優秀なスタッフさんだと思っているし、
この数年間でのスキルアップは2人とも同等じゃないの?
私にはそう見えるけど?」


「私も今までは、ちょっとそう思っていたんです。
でも…芦田君、もう全然違うんです。本当に違うんです。
やっぱり彼、班長になってすごく勉強したんですね、きっと。
私達が気がつかない間に、今では追いつけないぐらいに、
差が開いているって感じました。ちょっと悔しいけど。」


「……」


「それに私達の事も、もう班長じゃないのに、
いつもとても気にしてくれて、
何かと今の班長さんに掛け合ってくれたり…
私、今までぷらさんにも随分彼の批判をしたり、
彼のせいで班の雰囲気が悪いなんて、
反発したり嫌悪した事もあったんですが、
違う班に移ってみて、今ようやくわかりました。
あ~、私達は芦田君が班長じゃないとダメなんだって。」


「……」


「それでね、この前、芦田君に言ったんですよ。
『芦田君。ここで勝ち上がって絶対もう一度班長になって。
私達、芦田君の下じゃないと嫌なの。
もう、私、芦田君になら付いていくから。
だからB班の他の人達になんか負けないで絶対頑張って。
それが私達の夢だから』って。」


ああ、芦田君、聞いている?聞いた?
はるみさんがあなたにこんな事言っているよ?
それって班長冥利に尽きるじゃない!


正直言って、はるみさんのその話を聞いていた私は、
いろいろな意味で、またまた目頭が熱くなってしまった。


細かくて口うるさくて、ときに高圧的な態度が、
女の子達の不興を買っていた芦田君が、
今はみんなに尊敬され支持され、
今度はもっと大きなB班の班長として、
再びそのポジションへの階段を上がってくれる事を、
皆が切に願っている。


企業の方針で仕方ないとは言え、
みんなそれまでの実績がゼロクリアされて、
自分達が今、職場で一番発言権の弱い、
低い位置にいるのが寂しいんだよね。
自分達の過去にあまり理解のないと思える班長の下で、
B班のやり方、B班のスピード、B班の価値観オンリーだけで、
自分達が評価されていく事が悔しいんだよ。


はるみさん達が切望しているのは、
自分達に理解のある強力な代弁者。
彼らは自分達のヒーローの出現を心待ちにしているんだね。


芦田君。そうだね。
前回のようにイレギュラーな特例措置の昇格ではなく、
今度は本当に資格を取って、
皆さんのためにも班長を目指してみたら?
あなたの事だもん、たぶん本当は堂々たる正規の昇格を、
ひそかに狙っているんだよね?私はたぶんそう思う。


    *    *    *    *    *    *


世間でも業界の再編や企業の吸収合併などで、
無念にもそれまでのキャリアを捨てて、
新天地で一から出直す羽目になる人が大勢いると思うけど、
内容も進め方もポリシーもチームカラーも違う集団に、
少数派として後から入っていくのは大変で、
新しいその職場をずっと愛していけるかどうかも微妙なところ。
今まではそれでよかった事も、
移動先ではダメ!と頭ごなしに注意されたり、
理解はできても気持ちで納得できない事も多いよね。


そんなとき、きっと人は、
自分達のヒーローの出現を待ち望むんだな。
裏を返せばそれは、
現在の状況が決していいとは言えない事を、
暗に物語っているのかもしれません。


また、先を歩く人に夢を託すのは、
自分達が目的地までまだまだ遠い存在である事に、
希望を見失ってしまったからかもしれません。


でもあきらめちゃダメだよ!
だって皆さんはベテランの経験者さん達です。
何がよくで何が悪くて、困ったときにどうすればいいのか、
みんなよくわかっているでしょう?
だからあなた達は、実務に入ったら必ず変わります。
「なんだ、この程度でいいんだ」と、やがて絶対思うはず。


とある会社のとある職場の片隅で、
未知の仕事に対して様々な思いを抱いているスタッフ達。
せっかく残ってくれた彼らに、負けるな!と声を掛けてあげたい。
大丈夫。そんなに心配する事、決してないから。
これが私から皆さんへの応援メッセージです。


レクチャーでの研修は先週で終了し、
今週はいよいよメンバーがそれぞれの移動先で、
OJTに入りました。
大丈夫。
B班なんて大雑把で意外にいい加減なんだからね(爆)!
(大人数で人の目が行き届かないので、やむなし、とする空気。)
その雰囲気さえ掴めたなら、もうくよくよする事はないはず。
自信を持ってやっていけるはず。


とりあえず、芦田君!
あなたは今、皆さんの夢と希望を一身に背負った、
旧C班メンバーのヒーロー候補です。
ここはひとつ、ぶっちぎりで先頭切って独り立ちして、
ぜひ皆さんの「熱い思い」に応えてあげてね。
私も切にそう願っています。
 

 
 

 
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コメント

 いや・・・ほんとに・・・。゚(゚*´Д⊂グスン

 ここは読むたびに、感動・・・(つД`)うぅ… 

 
 がんがってほしいもんだなって・・・

 って・・いうか・・・自分もがんがらんと・・いけんねっていう・・・

 おっしゃ~(`・ω・´)

 ますますここを応援する!

目指せ!アクセス・・世界ナンバーワン!

 なので・・

 リンクさせてもらってもいいですか?


       とは言っても・・

 ワタクシ的なHPにリンクしてもそれほど、アクセスが上 がるとも思えないんですが・・・m(-_-)m スミマセンン

 もしもよかったらで・・

 なんか・・初デートの誘いみたいで興奮してきました・・・(;´Д`)ハァハァ


       ・・・・・・・・(^_^)/~~

前と同じ様にいかないことにストレスを感じることもあるけれど、一つ一つできるようになっていくことがまた楽しくなって前以上にできることが増えそうですけどね!

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