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2007年2月の22件の記事

2007.02.23

私が今日も陸運局に行く理由(ワケ)

会社の人から5万円で譲ってもらった廃車寸前の車。
名義の変更の手続きも、
一昨日の有給で必要書類を全部揃えたので、
あとは出して終わり~!と、思っていたら、
そうは行かなかった!


前回「廃車 Wanted! 」の続編という事になりますが、
廃車予定だった車を知人から譲り受けるのは
これで三度目のぷらたなす。
ですが、諸手続きを実際に自分が動いてあれこれやるのは、
実はこれが初めてなんですね~^^;


今までは、
元の持ち主のもらって欲しい気持ちのほうが強かったから、
「手続きは全部こちらでやりますよ~」というお言葉に、
甘えていましたけれど、
今回は、「譲っっていただけませんか?」とお願いしての譲渡なので、
こちらでやらないわけにはいきません。
あー、でももう忘れちゃったし、なんだかよくわかんないな。


ところが、担当スタッフの中に、
東さんという行政書士がいた事を思い出したんですよ!


現実はそれが鳴かず飛ばずの状態らしいので、
私達の仕事や他の仕事と兼業しているのですが、
その彼、東さん(40代前半/男性スタッフ/仮名)が、
休職することになったので、お世話になったお礼もを兼ねて、
車の名義の変更手続きをきちんとお願いしてみたのでした。


※申し訳ありませんが、ここからお話が回り道します。


【行政書士の東さんはなぜメシが食えないのか(笑)?】


東さんは私よりも年下ですが、
髭をたくわえたナイスミドル!と言った感じ。
物静かで落ちついた人柄がみんなに厚く信頼されています。
お客様対応も優しくて、とても丁寧。


だけど彼、車の名義の変更は未経験の模様。
「あぁ、それは…やった事…ないですね^^;」


「じゃ、どうします?もし面倒なら遠慮せずにそう言ってね。」
「いや、勉強なのでやらせてください。」
「それじゃ、通常の料金をお支払いしますのでお願いします。
でも、もし記入の不備や必要書類の不足があっても、
何度でも書き直すから気にしないでね!」


不慣れなことにミスはつき物ですものね。


そして翌日に手渡されたのが、見積書と申請用紙一式…
と思いきや「準備する書類」のリスト。しかも名前だけの羅列。
あれ?これってどういう事?(笑)!
これを渡されても手始めに私は何をどう進めたらいいものか、
全然さっぱりわかんないよ~^^


もしかしてこれは
申請用紙自体を自分で用意するところから始めてね?
ということなのだろうか…
「あのー、これってどういう意味なんでしょう?
悪いんだけど解説してくれない?」
「あ、必要な書類です。」
「えぇ、それはわかりますが、私は今から何をどうすればいいの?」


今までは用紙を渡されたその場で、
「まず印鑑証明を取って、ここに住所と名前を書いて、実印押して…」
と、向かい合って具体的な説明をされてきたから、
そのつもりでいた私は、チョトびっくり!


「え?用紙ですか?もし必要なら、
ネットからもダウンロードできますが?」
ナニ?通常の料金を支払う依頼なのに、
それは自分でやれってか~?
だったらまずひとこと。
「用紙は以下のものを自分で準備してください」だよねぇ。


東さんは人がよくて思いやりのある方なので意外なのですが、
もしかして、本当のお客様にも、
これに似た雰囲気でやっているんじゃないでしょうね(笑)?


だったら彼の事務所が"鳴かず飛ばず"なのがよくわかるよ(笑)。
せっかくお願いしても、気配りや親切な説明がなければ、
誰もリピーターにはならないよなぁ。
通常用紙の準備をどちらがするものなのかはわかりませんが、
どっちに転んでもイマイチ説明が足りないもん。
口コミや紹介でお客さんが増える事もないんじゃないのかな。
なーんちゃって。(しーっ)


用紙は後日もらいましたが、
(「勉強だからやってよ」と高慢に頼んだ(爆))
何かと言葉足らずで対応がそっけなく、自分としては大発見でした!
口調は柔和で、人柄も穏やか、
お客様対応コンクールでも上位者の常連さんなのに、
本業では案外人情の機敏を察しない、
融通の利かない人なのかもね。ふーん。


【お互い経験不足(笑)】


あれこれの書類を準備しながら、ずっと考えていたのは、
実際のところ、ナンバーの交換はどうなるんだろう?って事。


実はもらってびっくり!だったんですが、
車は他県のナンバーだったんですよ!
香川さんもきちんと、
そう強調して言ってくれればいいのにな(笑)。
いや、人のせいにしてはいかん!


「車検証は前の住所になってますから」とだけ言われて、
最初から住民票も添付(↑のとき必要)されていましたが
"それが具体的に自分とどう関係があるのか?"に
思いが至らなかった私。はい、ナンバーが違うという事です。
経験がないという事は、
想像力がまったく働かないという事でもあるんですよね。


なので東さんも同様に、「車検証の住所が違う」と伝えても、
「印鑑証明書に住民票を添えればOKなので問題ありません。」


ぶははは!要するにお互い様なのだ(笑)。
私にしてみれば、自分の中で、
もっともな疑問がちゃんと脳裏に浮かんでいるのに、
それを疑問視するアラームが鳴らないと、
尋ねようとも思わないんですよね。


そして昨日仕事の合間に、
退職した東さんのオフィス(職場の近く)に出向き、
書類一式を渡してお願いしたあと、
コーヒーをいただきしばし談笑。


「今見えているのが例の車なんですね。」

「はい。でも山形ナンバーなんですよ~!(笑)
もらってびっくりでしたよ!
これのナンバープレートの交換て、
このあと、どうなるものなんですか?」

「え!山形ナンバー?(絶句)」

「えぇ、山形ナンバーですが…」

「山形ナンバーなんですかっ?(再度)」

「はい。そうですが?」


そこで私達は、この場合、
ナンバープレートの交換と取り付けのために、
"車を陸運局に持参しなければならない"
と初めて気が付く!!!((爆))


そして、行政書士の東さんに依頼したこと自体が、
無意味だったことをそこで知る!(爆)


「いやぁ、どうしましょうね。。。(沈黙)」

微妙に気まずいムード…

「あ、東さん、いいです。自分でやります。
今日は仕事もひまで、
今も別件をあれこれ絡めて出てきているので、
帰社が遅くなっても大丈夫なんです。
業務的にいつ忙しくなるかわからないし、
今日やらないと次はいつになるか…
なのでこのまま陸運局に行って、
自己申請に挑戦してみます!」


「あぁ、そうですか。
本当なら自分が車を借りて乗って行きたいところですが、
実はワタクシ、免許を持ってないんです。」


ガーン…(それじゃ、話が見えないはずかも!)


「やっぱり、免許は取ったほうがいいと、今思いました。」
「え?今までは、お客さんの申請代行はどうしていたの?」
「割とバイクで足りたので。」
「そうなんですか。あ、じゃ、時間も無いので。」
と、私は早々に失礼した。


書類の不備や不足じゃなく、
根本的に進む方向が違っていた私達(笑)。
慣れた人同士なら、
当然真っ先に確認すべき事項なのでしょうが、
不慣れ・未経験というのはそういう事なんですよねぇ。


ちなみにこの事を後で職場で語ったら、
うちの職場は転勤があるためか、
正社員の男性達はみんなご存知で、
「あれ、自分で行かなきゃいけないんだよなぁ…」
なんて、あっさり。


お金は「要らない」と言われたけれど、
「相談料」の名目で、少しだけ払わせていただく事にした。
よくご存知の方が読んだら鼻で笑われそうな話ですが、
私はとってもタメになりました。


「あれ?」と思ったら、
気がつけ!口に出せ!人に聞け!ですね。
仕事で散々スタッフに注意しているのに、
「なんだそのザマは(笑)?」と、自己反省です。
いやー、私も勉強したっ!

【意外だった更なる盲点(笑)】


話はそれで終わらず、意外な盲点が待ち受けていた!
陸運局では末日の銀行か?と思うぐらいの混み様を
時計を気にしながらじっと耐えて、
段取りはようやくナンバープレートの交換手続きに。


「それでは、ドライバーで前後のナンバーをはずして、
向こうの建物の10番に返納してください。」


ところが!今度はなんと!
車が古いのでナンバープレートが外れないのだ!!!
ネジがすっかり錆びてしまい、
ドライバーに力を込めて、やっと回ったと思ったら、
今度はいくらクルクル回しても抜けずに空回りするだけで、
どうやっても外れないんですね。トホホ。。。
悪戦苦闘すること40分、ダメだな、こりゃ。


すると担当者の言葉は冷たく、


「それじゃ、その辺の工場に持ち込んで、
ナンバーが外れるようになったら、また来て下さい。
本日の受付はあと30分です。間に合えばいいですけど、
ダメなときは後日出直してください。
(用紙を確認しながら)
来月の21までに手続きを終えてください。」


そう言って顔色も変えずに淡々と書類一式を返してきたよ。
コンチクショウメ。


でも、あと30分なら何とかなるような気がする!
私は近場のガソリンスタンドに車を持ち込み、
気の良さそうなお兄さんに見てもらった。
するとお兄さん、いろいろやってみて「あー」とつぶやき、
「これはねぇ、バンパーはずさないとダメかもしれない。
ネジ穴のほうもダメになってます。
ちょっとやそっとじゃ取れないですよ?」


ガーン。。。そういうもんなの?


「す、すみません。そういうのって一体どこで?」


「そうだな~…板金工場ならやってくれるかも?」
「は?板金工場?
(心の中には[あと30分]の文字が)
(そんなの、今からどうやって探すんだよ~)
持っていって今すぐやってくれそうなところって他にないですか?」

「うーん、場合によってはオートバックスとかイエローハットでも、
やってくれるかなぁ、ダメかなぁ。。。
でも、どっちにしても簡単な作業じゃないので、
30分では終わらないと思いますよ。」

orz…
この時点で、今日の手続き完了は消えた!と思った。
しかも、なんだか話がヤケに大事になってきた。


板金、板金、そんなの思いつかない。
自動車修理工場ならわかるけど、
かかりつけ?の親しい修理工場なんてないし、
顔なじみでもないのに、今日突然持って行って、
その場ですぐにやってくれるものかな?


仕事の都合上、できればネジ部分の修理だけでも、
今日中に終わらせてしまいたい。でも、もう夕方だ。
ハッ!!!カーコンビニクラブってどうですか?


「あー、あそこならやってくれるかもしれませんね!
そうですね。たぶん大丈夫でしょう。」


結果、私は仕事の用事を澄ませて、
急いで会社に戻り、PCでカーコンビニクラブを検索、検索!


そして今から行ける範囲内で、
一番閉店の遅い店舗を選んで電話をかけ、
なんとかその日のうちにネジ周りを交換してもらいました。


それにしても一度緩めたネジが締まらないので、
走行中にナンバープレートがガタガタ鳴ってうるさかった事。
(というか、万が一の落下が危険!^^)
しかも日が落ちてすっかり暗いので、
地図を頼りに初めての場所(寂しく人家も無い工場地区)
に行くのも不安。


ですが、電話での無愛想な口調とは裏腹に、
「あー、これですね?」と待ち構えていた感じで、
思ったよりも全然普通に快くやっていただき、
とても安心しました。


いや~、しかし、
ああいうところのプロの仕事ってすごいですね。
感激した!一度方針が決まると早い、早い、
バンパー外さなくても前後のネジの交換ができました。


しかも担当者がとても話の通じるいい人だったので、
会話が弾んでしまった私は、「この人なら」と、
他に気になっていた部分の質問や疑問点を相談。


そして見積もりなんかをたくさん出してもらい、
「車検も修理も今度からここにお願いしちゃおうかな?」
なんて、思ったりするのでした。
ユーザーって結局、人に付いたりもするのだ。
個人的には技術に付くべき、と思ってはいますが、
技術とユーザーを仲介する担当者のヒューマンスキルって、
欠かせないと思います。


そして、こんなトホホな一日だったのに、
妙に幸せな気分で帰宅した私。
終わりよければすべて良し!という事でしょう。
(ちなみに後で調べたら、カーコンビニクラブこそが
まさしく"板金業"そのものだったのだ!)


さて、こんなに頻繁に有給で休めるのも、
仕事がヒマな今のうち。
だから私は、このタイミングで、
一気に終わらせてしまいたかったのよね。
それでは、本日、今から再度、陸運局に行ってきま~す!


    *    *    *    *    *    *


【その後…】


前夜にカーコンビにクラブのお兄さんが、
交換してくれたナンバープレートのネジ周りでしたが、
せっかく陸運局で私でもはずせるように…と、
いろいろ工夫してくれたみたいなのですが、
やっぱりはずせませんでした。
一箇所だけ、ネジ受けもゆるゆると一緒に回っちゃうんです。


なので、昨夜お兄さんに授かった作戦で、
「はずせませーん、と、可愛く?担当者に泣きつく」事に(笑)。
「陸運局には整備士がいるんですから、
どうしてもダメな時はやってくれるはずですよ。」
なるほど。


そして、それはまさにその通りで、
苦節2日(爆)、やっと新しいナンバーになりました。


私は陸運局のお兄さんに聞きました。
「こういうのって、他の皆さんは、
いったいどうしているものなんですか?」


「あー、普通は皆さん、自分ではやりませんからねぇ。
8割以上が工場かディーラーさんで。
面倒な場合は持ち帰って自社工場で付け替えるときも
あるみたいですよ。」


「え、でも、名義の変更みたいな、
手続きだけのものでも、やってくれるんですか?」


「頼めばやってくれますよ。ただし、結構な値段です。
新車買うときの車庫証明なんて、
1万円以上取られていると思いますよ。
込みで頼むから皆さん、あまり気にしませんけどね。
お客さんなんて、印紙代とプレート代と申請料で、
5000円もかかってないでしょう?」


「車庫証明もあるので、もうちょっとかかりましたが…」


「あぁ、でも1万いかないですよね。
だから、すごくお得だったはずですよ!」


はぁ~、それ聞いてびっくり!!!
そして、次の瞬間、自分でやって良かった!と痛感した。
同時に、次に廃車を譲り受けるときは(ガハハ)
絶対自分でやろうと決意した。


もちろんお金があって忙しい方にはお薦めしませんが、
そんな人は、「人様から車をもらう」という状況が
そもそも無いと思うので、今日の日記も一笑に付されて、
終わりって感じかな~(笑)

2007.02.21

廃車 Wanted!

Haisha1 Haisha2

4年間乗った車を廃車にした。
すごく好きな車だったけど、
今までのような感慨や寂しさはない、かな。
いただきものの古い車でしたが、
こんなに長く乗るとは思わなかった。

本当に気に入っていたので、
乗れるならまだまだ乗ろうと思っていましたが、
アクセルを踏んでも加速せずに、
40キロ以上速度が出ないときがあって、
(何度か頑張って踏むと直るのですが)
そのうちやがて、車線変更とかユーターンとか、
ここぞ!というタイミングでも、
スピードが出なくなったら危険だなぁ…
と、感じ初めて、ついに廃車を決意しました。

だって、ディーラーさんに持って行ったら、
「3日間預かって分解して、一箇所一箇所綿密に調べて、
それで原因がわかればいいんですが…」って…
要するにもう寿命と思えって事かな。
もしそこでわかっても、
何かの全交換なら相当かかるかも…とも言われましたしね。

私はすでに心の準備ができていたので、
どっかで止まっちゃっても「しゃあない」とあきらめて、
どのように対処しようかを念頭に置いて乗っていましたが、
息子達も乗るようになると、やはり親としては子供達に、
不調とわかっている車を運転させたくないものね。

うん。ダメだ、やっぱり!と、ある日突如決意しました。

    *    *    *    *    *    *

この車は、2003年の2月、7人まとめての研修で、
飛びぬけて進捗の悪いスタッフさんを補習するために、
(当時からそんな事ばっかりだよ^^)
土曜日に休日出勤してマンツーマンで教えていたら、
非難ばかりしている人」のマサユキさん(当時30代後半)が、
「えー車は要りませんか~くるま~車は要らんかね~?」
と、芝居がかった調子で研修室に入って来たんだよね。
※うちの職場は定休日なしの交代制なので、
  新人以外のスタッフ達は土日も仕事をしています。

亭主と自分の出勤の都合上、
二台目の車が喉から手が出るほど欲しかった私は、
「はい!はい!はい!車欲しい!なにそれ?どんな話?」
と、飛びついた。
「マサユキさん、車買い換えるの?」
「いや、俺じゃないよ。一課の勉君(当時30代後半)」
「車種何?いくら?」

そして私は一課・他社スタッフの勉君から、
亡くなって間もないお父さんが乗っていた車で、
まだまだ乗れるからスクラップにはしたくないという、
インプレッサをタダで譲り受けたのだった。
(名義変更等やお礼で少しはかかりましたけどね。)

私は運転が好きだけど車には詳しくない。
でも、いやー、インプレッサはいい車だったなぁ。
運転していてとても快適だった。
以前から形が好きで、
見かけるたびに気になってはいたんだよね。
だからその時、譲りたい車がインプレッサと聞いて、
もう飛び上がりましたよ!
もらったときは新車かと思うぐらいピカピカだったし、
勉君のお父さんはきっと、
すごく大事に乗っていたんだと思います。

でも、(当時は)査定に出しても値がつかず、
むしろ処理料金が有料。
「もらってくれる人がいるならぜひ!」と、
いろんな人に声をかけていたらしい。

半年車検が残っているのでそれまで乗ってくれれば…
と勉君には言われたけど、実際は家族も全員とても気に入って、
いろいろな部品を交換しながら二度車検を通して、
先週まで乗りました。

例え廃車予定の古い車だったとしても、
前の持ち主がわかっているというのは、
すごく安心感があっていいものですね。
勉君自身も落ち着いたいい人だし、
引き取りに伺ったご家庭もきちんとしたおうちだったし、
ここのお父様(自営業)がワンユーザーで乗っていたなら、
それほど痛んではいないはず、と思いました。
実際そうだったしね。

でもいざとなると、譲るほうは何かと心配みたいだね(笑)。
「大丈夫!走ればいいから。何かあっても怒ったりしないから。」
と安心してもらって、そうかあれからきっかり4年か…

    *    *    *    *    *    *

さて、これに味を占めたぷらたなす(笑)。
人様が廃車にするつもりだった車でも、
お金のない我家にとっては宝物です。

車をGETするにはこういう方法もあるんだとわかり、
次の車も母の知人の廃車予定だったキャロル(軽)。

いやいやこれも3万キロしか走っていないのに、
すっかり時代遅れの車種で、
色もショッキングピンクなのがNGで、
買い替えのときにタダ同然の値段を提示されたそうです。
「それなら思い出のある車だし、欲しい人がいるなら…」と、
こちらに譲っていただきました。
(ちなみに前述のインプレッサは当時12万キロ)

もったいないですよね(笑)。
「とりあえず近場を走れれば何でもいい」我家は、
どんな車でも、まともなものなら喜んでいただきますよ~!

そしてこのピンクのキャロルは、
短い間に二回も大きな傷をつけてしまい、
「インプレッサは今後二度と乗せない!」と、
私に激怒された亭主の愛車になりました。
もちろん今もです。

奥さんが1800で、亭主がピンクの軽なんて、
人目には変に写ると思いますが、
うちはそれでいいんです!!
そうじゃないとダメなんですっ(笑)!

    *    *    *    *    *    *

そしてい再び私の車の番。
勉君のインプレッサもガタが来始め、
私は、廃車探しに着手(笑)。

でも、本当にこれってタイミングよね。
尋ねてみると、「マジで?昨日廃車にしたばかりだよ!」
とか(Q君/これも亡くなったお父様のチェイサー)、
「あー、もう一週間早ければ…」とか(保さん/車種忘れた^^;)
惜しい話ばかりなんだよね。

が、運命の神はついに私に微笑んだ!

今年の新年会の時に、
「誰か、車、廃車にする人いませんかねぇ?」と、
内海主任に尋ねたら、え?知らないの?言わんばかりに
「香川さん~!!」(正社員/30代後半/男性)

話はとんとん拍子に進み、
(今度はデミオです。タダとはいかず5万円で商談成立!)
(平成10年式。走行12万キロ)
そして先週の受け渡し、本日のインプレッサ廃車引取りと
相成った次第です。

香川さん、たぶんね、本気で廃車寸前だったと思う。
だって、印鑑証明とか住民票とか車検証のコピーとか、
お願いしたら翌日すぐに渡されたもん。
必要な書類もよくわかっていて、
まさにギリギリセーフだったかも!

    *    *    *    *    *    *

でも、この作戦?も今後は難しいかもしれませんね。
なぜなら今は、中古部品のリサイクルが進んでいるため、
廃車も価値ある商品で、しかるべき業者に頼むと、
どんなに古くて傷だらけでも(例え事故車・破損車でも)
よほどのものじゃない限り、
無料で引き取ってくれるみたいだし、
値段がつく場合もあります。

だってうちのインプレッサ、
今や運転の下手な亭主がつけた傷やへこみが一杯。
それに加えて、少し前に長男が、
左前方のライト付近を家の前の支柱にぶつけて、
ガッチャリ潰しちゃいましたが、
それでも「廃車ドットコム」では、
2万円の値段をつけて買い取ってくれました。

(※ネットからの見積もりを5社に依頼)
(他の業者は「無料引き取り可能です!」でした。)

お願いしてみたら対応も親身で早いし、
メールでやりとりができるし、
こういうのをみんながもっと知ったら、
他人にタダで(または安く)譲ろうなんて、
思わなくなるんじゃないかと思って^^。

私達は、探しても譲ってくれる人が見つからなければ、
郊外のバイパス沿いの敷地なんかにぶん投げてある、
7万とか8万とかのボロ軽自動車を買おうかと思っていたので、
デミオなんて、最高に素晴らしいですよ!

それを聞いた保さん(正社員/40代前半/男性)が、
「いやー、女房とさ、
ああいうのって誰が買うんだろうね?って言ってたんだよ。
そうか~、やっぱり買おうと思う人もいるんだ~?」
と、馬鹿にされましたが気にしません(笑)!

ところで、廃車下取りした車は、
売れるものなら中古車市場へ、そして一部は海外へ。
そうでないものは何から何まで、
人手をかけて丁寧に完全に分解されて、
使えるものは全部再利用するんだって。
なので本当にスクラップ処理されるのは、
最後に残ったボディだけだそうです。
知らんかった~。だから傷があっても構わないのね。
(廃車引き取り事業者のホームページによる)

    *    *    *    *    *    *

さて、今度はデミオ。
職場近くで受け渡しされて、その日に乗って帰ってきたら、
息子達が「乗りたい、乗りたい。」と一時間ずつ乗り回し、
なんと長男のほうが早速またまた傷をつけちゃいました。。。orz

うちの車庫、すごく狭くて入れにくいのですが、
その割に次男は免許取立てのときに一度擦っただけで、
あとは上手にバックで入れてきます。
(私も車庫入れでこすった事はありません)

あーあ、どうせまた、
亭主と長男に傷だらけにされるんだろうな。
そういった意味でも、
我家は廃車にするぐらいの車が。
一番ふさわしい家庭かもしれません。トホホ。




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母と夫のゴミの分別2

さきほどの「ゴミの判別」の続き

---
亭主が帰ってきた。
うちの人にも聞いてみる。

「ねぇねぇ、さっきさ~」
私の母が市のゴミの分別ルールで、ゴミの区別がよくわからず、
特にプラスチックゴミは何がなんだか意味がわからなくて、
毎回市から配布された一覧表リストの写真を見て、
ひとつひとつ確認しながら捨てているという話をした。
それにない物は??→何も考えずに「燃えるゴミ」へ(笑)

「え?そんなの、オレも全然わかんないよ?」
「えー!!(ガーン)」

「じゃ、今までどうやって捨てていたのよ?」
「え?オレ、全然分けてない!(涼しい顔)。」

ガーン

(夫)「だって何がなんだかよくわかんないし、
前の人が捨ててあるのを見て、
あ、これはこっちか、これはこっちか…って、
オレはそれを見てやっていたから、
自分の捨てたいゴミと同じ物が中にない時は、
どっちかわかんないから、やってない。」

は~(君もだったのか…)

「オレは見てわかる物しかわかんないの!
あ、ビン缶ならわかるよ。だからそれは分けている。
でもだいたいさー…」
(ここから職場での手間とか面倒臭さとか延々)

「もしかして小難しい判別ルールがあると思ってない?
プラスチック製品は全部左(うちでは)の袋に入れればいいのよ?
ただそれだけの簡単な話だよ?」

「じゃ、納豆の容器は何?」

「あれはプラスチック。でもベトベトして匂いもするから、
洗って入れるか、面倒なときは分けないときもある(笑)」

「じゃ、3個パックの納豆を包んでいるあの包装フィルムは?」

「それもプラスチック」

「わかったっ!!!!!!!(驚くほどの大声!)
じゃ、レジ袋もプラスチックだな?」

「そう」

「肉のトレーもプラスチックだな?」

「そう。スーパーで集めているところもあるけど、
市の収集に出すならプラスチック。」

「冷凍食品の袋もトレーもプラスチックだな?」

「そう。」

「おーーー、わかった!!
じゃトイレットペーパーの袋も、
棒アイスが一個一個入っているあの小さな袋も
全部プラスチックだな?」

「そう。」

なんだかノーベル賞ものの大発見でもしたような、
盛り上がりと目の輝きである。

「なんだ、そうだったのか~!!
そういう事だったのか~!!
それじゃさぁ…」

このあとがうるさい^^;
とどまることなく「あれもだな?これもだな?」と聞いてくるので、
付き合いきれなくなった私が手元のPCの方に目を向けると、
「おっと、これ以上言うと、嫌われる。
オレ、しつこいからな~(笑)」
そう、彼はこちらが気合を入れて止めないと、
延々と同じ事をしゃべっているからねぇ。

「じゃぁさ、そこにあるコップ(プラスチック)も、
プラスチックってわかったよね?」

「うん、そうだよね。」

あー、この言い方は、かなり怪しい(爆)!!
あらあら?ちょっとウソ臭いぞ~?
どうやら亭主は「プラスチック=紙以外の包装資材」という
とらえ方をしているんじゃないの?(笑)。
今度、そこにあるハンガー(プラスチック)やビニールポーチが、
どっちに判別されるか、忘れた頃に絶対聞いてみようっと♪

私も長男も次男も、地球や資源やゴミ減量などはどうでもよく、
プラスチックゴミなのに燃えるゴミの袋に入れるのが、
イヤで抵抗があるという理由だけで分けているんだ。

なのに、燃えるゴミの中を見ると、
せんべいの袋やらトレーやら発泡スチロールの緩衝材やらが、
いつも無神経に入っているので気になり、
3人でせっせと入れ直しているのに、
その側で母と亭主がこれでは分別できるわけもない(笑)。

「みんな、ひと手間を惜しむんだからもうっ!」
と思っていたけど、真相は別だった。
二人とも何がプラスチックゴミなのか、
根本的にわかっていなかったのだ。。orz

この場合、種類分けするとこうなるかな?

===========================
(1)きちんと分けられていないと生理的に嫌な人
  (私・長男・次男)
(2)わかっちゃいるけど面倒な人
  (我家には不在)
(3)複雑なルールがあると思い込みわけがわからないでいる人
  (夫)
(4)そもそも何が「プラスチック」なのか瞬時に判断できない人
  (母)
===========================

この場合はまず、(3)の誤解を解き、
(3)を攻略するのが速攻性のある施策と思われる(爆)
うちの母は「プラスチック」という言葉の昔からのイメージと、
プラスチックゴミとして提示されている一群が、
あまりにもかけ離れているので、迷ってしまっているのだろう。

先日、アスペルガー症候群や自閉症の話をしたので、
亭主は少し気にしているようで、ふたこと目には、
「な?だからオレは違うだろ?」を繰り返す。

でもさー、さっきの廃車引取り作業の後で、
(私はこれのために今日は有給)
タイヤの片づけを頼んだら、
異様に高く積んで10段も積み上げるなんてアリか?
危なくてしょうがないし、だいたい亭主は
上背がある(182㎝)からいいけど、
これじゃ、誰も届かないじゃんっ!!!

だいたいこれって、最初は4本ずつ車ごとに、
カバーをかけて分けていたのに、
そんなに真っ赤に息を切らして、
あくまでも上に積み上げる理由がどこにあんのよ~
しかも文句を言ったら「持ちつ持たれつだからな。」って、
意味わかんない。なんだよそれ(爆)!!

「あのさ…」
と話し掛けようと思ったら、もう寝てました。
(彼は夜勤職。日中は仮眠モード。)

さっきの引き取り業者さんとのやりとりも、
爆笑もので、もう、ホント、面白いんですよ、この人。
でも、そうやって怒られるとうれしいみたいなので、
最近は一杯怒ってます(笑)。

 




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母と夫のゴミの分別1

今日は有給でお休み。


たった今、食事をしながらNHKの「芋たこなんきん」を、
長男と二人で見ていたら、長男が尋ねてきた。


「お母さん、チョコエッグって知ってるでしょ?」


は?なぜに今チョコエッグ??
それまでTVの画面を見つめていたのに。


「うん。でもそう言えば最近見ないね。」
「あー、それは俺達がもう買わなくなったからだよ。
海洋堂は調子こいて今もバリバリ吹っ飛ばしてっから。」


ここで、ひとしきりチョコエッグ談義。


でも、なぜ?今突然にチョコエッグ?海洋堂?
話を続けながら私は、長男の頭の中に、
急にチョコエッグが登場した理由(わけ)が知りたくて、
「なんでかな?~なんでかな?~」と、
疑問で一杯になりながら話を聞いていたら…


「今さー、チョコエッグでさー、
ツチノコがすんげー人気なんだよ。
あれ、シークレットで高値ついてんだよね~」


納得!!!!
今日の「芋たこなんきん」の話題はツチノコなのだ!
うちの長男はそれを見て、記憶の中から、
ドラマのツチノコ→ツチノコのフィギュア→チョコエッグ
と自然に連想されたのだろう。
なるほどねぇ。


ここのところ、ヒトのココロにまつわる話を書いていて、
今の私の頭の中はそっちへの連想が強くなっている。
前述のような思考はいつもだけど、
今日は新たな発見があった!


「そういえば…」と、今度は私。
頭の中には、たった今長男が立ち上がって捨てたばかりの
サンドイッチ(昨日の残り)のラップの事。


「あんた達ってエライよねぇ。
ちゃんとゴミを仕分けして入れるもんねぇ。」


「え?あぁ、これ?だってイヤじゃん、
プラスチックゴミなのに、
こっち(生ゴミ用のゴミ袋)に捨てるの?
俺、レジ袋もポテチの空袋も全部こっちに捨ててるよ。
自分が嫌だから。」


「だよねぇ(笑)。でもね、おばあちゃんは違うのよ。
面倒なんじゃなくて、わからないんだって。」


「うそ!マジで?」


「うん、だっていちいち、
ぷら子~、これはどっちなの~?って
毎回、毎回、聞くんだもん。」


「うっそー」


「ホント、ホント(笑)、
あ、じゃ、あんたに聞くけど、
今のこの食卓の上にあるもので、
プラスチックゴミのほうに捨てるのはどれ?」


長男は即座に、「これとこれとこれとこれ!」
と、醤油差しとか納豆の容器とか
ネスカフェの蓋をパッパッと指差した。


「でしょう?(笑)じゃ、向こうでやってみる?(笑)」


私達は和室の茶の間でコタツで食事をしている母に、
同じ質問をしてみた。
母がこれ!と指差したのは納豆の容器ひとつ。


(長男)「なるほどー(笑)」
(母)「なによ、ヒトの事笑って。
こういうのは本当によくわかんないから、
私なんていちいち市の「ゴミの出し方」の写真を見て、
分けてんのよ?」
(私・長男)「ぶはははは!」(申し訳ないがどうしてもおかしい)


(母)「じゃぁ聞くけど、あんた達はそういうのすぐわかるの?」


私と長男が即座に「コレとコレとコレとコレとコレとコレ!」と
あっという間に次々指差したものが全く一致していたので、
母は驚いて、「へぇ、私にはさっぱり」と言った。


私達が指差したものは、
プラスチックのスプーン、ステンレス製シール容器の"蓋"のほう、
納豆の容器、皿からはがしたラップ、
そしておしぼりトレー、メガネケースだ。


だってこれらは皆プラスチックじゃん。
木でも石でも紙でも金属でもなく、
瞬時にそれとわかる石油製品だ。


…とすると、うちの母の頭の中で、
ゴミの判別は、物の組成で行われているのではなく、
たぶん目的とか形状とかそういった事で区別するので、
「そうだ!」とか「違う!」とか言われると、
すっかりわからなくなって、いちいち市の一覧表を
見ることになるのだな。


…とするとだよ?
ウチの母は、いったい何がプラスチックなのか、
実は全然把握しておらず、
家庭で会話を交わす上でお互い分かり合っていた
と思っていた当然の事実は幻想だった事がわかる。


もうすぐ70だから、
私達とは受けてきた教育も生活環境も違うから当たり前だけど、
それに今まで全く気が付かなかったのは、
違いを知る機会になるようなイベントがなかったからだね。
納豆の容器もプラスチックのスプーンもメガネケースも、
同じカテゴリーに入れなくちゃ行けない状況が、
今までなかったからだ。


(長男)「ふーん、なるほど。」
(私)「でしょ((笑)?」


あんた、教員目指してんでしょ?(今年は落ちたけど(笑))
いろんな生徒がいるっつ事は、
ま、こういう事だから参考にしなさい(笑)


「へーい」


ま、そう言うことだから、職場でも揉めるっつ事だね。

2007.02.20

知識と手順とマインドと

仕事でクレームが発生した。
お客様の質問に答えたあるスタッフの回答に間違いがあり、
結果的にお客様が金銭的な損失を蒙ったというものだ。


彼女が「組み合わせて使用できる」と答えたために、
ユーザーは他社のある商品を購入してしまったのだが、
実際は「できない」のが正解だったため、
そちらのミスで支払った分の金額はそちらで補償して欲しい!
と、言ってきているのだった。
(まー、そりゃ当然の流れだわね(笑))


話の雰囲気では、感情的にこじれている様子もなく、
金銭的に解決できればそれで良さそうなムードですが、
こういったイレギュラーな処理は課の一存ではできないので、
この手のクレームが入ると、課長は慌しくどこかに電話をかけ、
担当の班長には社員が入れ替わり立ち代り状況確認に訪れ、
職場には普段顔を出さないような、
事業総括部のえらい人もやってくる。


なので、スタッフ達はそんな職場の雰囲気から、
「何かあったな?」とすばやく察し、
盛んにメッセンジャーを飛ばしあって、
情報交換をし始めるのだ。


職場では以前、料金苦情を発生させたスタッフが、
体調不良で出社拒否症になってしまい、
退職後も数年間、
仕事ができない状況になってしまった事があった。


彼女は本日、"家庭の事情"で欠勤。
「昨日はお昼も黙って一人で食べに出ていつもと様子が違った」
と、心配したほかのスタッフから聞いていたので、
少し気になる。大丈夫だろうか。


    *    *    *    *    *    *


クレームを発生させてしまったのは、
「じっくりマイペース型の受難」
百瀬さん(20代後半/女性スタッフ/仮名)。


彼女は博識でかしこい人ですが、
複数の作業をバランス良くこなせないタイプで、
何かに取り掛かると他の事は一切おろそかになっちゃう。


うっかり屋さんのため時間をかけた割にはミスも多い。
その上人に流されやすいものだから、
自信がないことでも是非を確認をせず、
雰囲気に逆らえないまま対応を進めてしまい、
次に同じユーザーからの電話を受けた人が、
内容を訂正して何かとお詫びする羽目になる。
だから一部のスタッフは彼女の仕事振りに非常に苛立ち、
二言目にはトゲトゲしい批判を露にしていた。


これも今思えば、彼女の仲良しさん達が、
ミスや効率の悪い手際に腹を立てていたわけではなく、
せっかく彼女のために間違いを教えてあげたのに、
言い訳したり隠したり誤魔化したりする態度に
カチンと来ていたのだろうと思う。
(小さい頃から怒られてばかりの人にありがちなんですが…)


けれど私達班長一同は、穏やかで他人に優しく、
お客様対応も誠実で丁寧な百瀬さんを買っていて、
研修担当や育成指導業務をお願いしたりしたので、
それがまた逆に、仲間の女の子達の不満の種にもなり、
一時期、班内は悪口のメッセンジャーが飛び交う、
険悪な空気に包まれたのだろう。


    *    *    *    *    *    *


みんなの話を総合すると、
百瀬さんの最大の欠点は、「とにかく人に聞かない事」だと言う。


理解できないことがあっても質問しない。
不明点があっても左右に確認しない。
困ったときも班長に指示を仰がない。


お客様対応も同様で、
お客様しかわからない用語や固有名詞が突然出てきても、
お客様のお話に矛盾や疑問を感じて首をひねることがあっても、
そして、お客様がいったい何を言っているのか全然わからなくても、
途中で話を止めてその意味や詳細を求める事が、
ほとんどがない(らしい)。


そう書くと、調子が良くて見栄っ張りでカッコつけの
鼻持ちならない女性を想像するかもしれませんが、
ご本人は顔立ちも体型も見るからにおっとりした癒し系。
イメージ的には、天然ボケキャラでそうなっている状況を、
思い描いてもらえば、より現実に近いんじゃないでしょうか(笑)
(なのに言い訳だけは理路整然と冷静に悪びれずにするので、
期待を裏切る違和感を持たれてしまうのでしょうね^^)

だから周囲は百瀬さんに「確認しろ」「確認しろ」と、
口が酸っぱくなるぐらい言い続けていて、
それでもなかなか進歩がない上に、今回もまた
「自分でも質問内容の意味がわからないまま、
雰囲気と憶測でつい『できる』と言ってしまった」
という、まさに彼女にありがちな理由での苦情発生なので、
班長の小野君(30代前半/男性スタッフ/仮名)と、
レイちゃん(20代後半/女性スタッフ/仮名)が、
「は~」、と力無くため息をついてしまったのは言うまでもない。


班長の二人は主任の要請に応じて、
百瀬さんから「事情聴取(?)」し、優しく間違いを指摘し、
不明点を確認する必要性と勇気の大切さを延々と説き、
「とにかく、アレ?と思ったら、
その流れのまま突っ走らないで必ず止まってね。」
と重点指導して面談を終えた。


でもさ~、これ、結構難しいときもあるんだよね。
お客様と相性が良くていい感じで話ができているときなどに、
突然自分がウィークポイントと思っている質問をされたり、
今まで調子よく説明していた内容が、
最初から見当違いだった事に途中で気が付いたりすると、
どのタイミングで真実をどう伝えようか、一瞬躊躇する。


言い方とどんな演技が最善か瞬間的に探りながら、
まずは出方を考えますよね、やっぱり。
そして、「今だ!」と思ったらGO!です(笑)
でも実際はほんの7~8秒の出来事かも。


録音を聞いてみると、お客様はソフトだが詳しそうな男性。
百瀬さんは迷いを感じさせずに、むしろ頼りがいのある口調で
「できます」と言い切っている。(ここは多分思い違いだね)
むしろお客様のほうが、「業者に聞いた回答と違うが?」と
疑問を述べているのに、それに対してもちょっと間を置いて
「いえ、大丈夫です。」としっかり答えているのだから、
弁解の余地はないなぁ。。
(二回目は自分に言い聞かせている雰囲気でもある)
内心間違っているかもしれない自覚は絶対あっただろうに。


(私)「反応はどうでした?」
(小野)「気をつけます、って言うてました。」
(レイ)「今までマメに聞かなかったのは、
みんなは、もっと難しくて専門的な事を聞いているんだと
勝手に思い込んでいたみたいなんですよ~」
(私)「全然そんなこと無いのにね。
やっぱ抵抗あるんだろうなぁ…」
(レイ)「だからって、それで良いわけ無いじゃないですか。」
(小野)「まぁ…注意もしたことですしぃ、反省もしてますしぃ、
良かったんじゃないですか?」


関西生まれの小野君は、
いつも多くを語らず、基本的に他人には無頓着だ。
彼は、「人」に関心が薄く見たままの受け取りしかしないから、
そのセリフはあまり当てにならないかな(笑)


    *    *    *    *    *    *


さてここのところ、仕事が"ちゃんと"できなくて退職した、
穣太君(20代前半/男性スタッフ/仮名)の事で、
その顛末と自閉症に関連した話題が続いたが、
お読みの皆さんが思っている以上に、
そういったあれこれは自分にとって有益だと思っている。
なぜならそれは、誰の育成にも当てはめることができる、
大変参考になる情報だから。


先日の記事で紹介させていただいた、
山岸徹さんの奥様の美代子さんは、
ご主人の徹さんが書き起こした文章の中で
「私達にはココロがない」とおっしゃっています。


これは喜怒哀楽の感情が無いのではなく、
外からの情報を処理するときに加味される、
自分なりの区分けや序列や関連付けをする機能が、
生まれつき備わっていない、という事だと自分では思う。
(例えば商品がレイアウトも陳列も値札付けもされずに
 むき出しのまま混ぜこぜに床に並んでいるような感じ?)


以下、引用させていただきます。


近年の研究の結果、この一群には、人があまねく持っている「心」がないという点で、
共通しているという事がわかった。
 
心がないなんて、まさか・・・・・
 
では、心を持たない一群は人ではないのかと言えば、歴としたヒトである。
ヒトが心なしで生きていけるのかと言えば、
現に生きているのだから、仕方ない(としても、どうも腑に落ちない)。
 
心という字が醸し出すイメージが紛らわしい。
 
いっそ心を「ココロ」と言い換え、それをある特定の脳内ネットワークの名称だと考える。
それが生まれつき「ない」一群を、ある障害名で括ると、見事奇妙さの謎がとける。
それが自閉症である。


ここで何が言いたいか?と言うと、
特定の資質が無い人に、
いくらそれの向上を強く求めたところで、
ご本人はたぶんその部分では成長困難、
だから、そればかり追求するのは効率的に間違っているし、
当事者だって、毎日が非常に辛いときもある、って事。


私達は仕事で少々知識に不足があり、
ユーザーサポートのスタッフとして至らない点があっても、
保留して誰かに聞いたり、調べて後で回答する時間をもらったり、
"適宜うまくやる"ノウハウさえ身に付いてていれば、
それで十分やっていけるので、知識不足の是非よりも、
対応の適切さや機転の有無を重視する。
自分達がそうやって欠点を補って仕事をしているから。


だが待てよ?そもそもの原因は「回答を間違えた」事で、
百瀬さんが、クレームとなった質問の意味と正解を知っていれば、
この問題は起こらないはずなのだ。


人間は同じ設計図の定型ロボットではないので、
生まれつき(山岸美代子さん言うところの)
「ココロ」がないと括られている人達がいるのならば、
例え「ココロ」があっても"薄い"とか""偏っている"とか、
"動きが悪い"とか"フリーズしやすい"とか…
人間を生き物として捉えると、
障害とまではいかなくても、
器質的にそれに似た個性を持った人が
どこかにいでも全然変じゃない。
(私自身、"こだわり"が強くてすぐに切り替えのできない時がある)


百瀬さんのように、何度言われても、いつまで経っても、
確認不足や不注意がなかなか直らない人は、
「あれ?おかしいぞ?」という自分のココロの声が
元々よく聞き取れないか、聞こえても忠実に従うことができないと
考えたほうがいいかもしれないのだ、きっと。


だったら、そこばっかり責めてもしょうがないじゃん。
人生では確かにそれも必要かもしれないけど、
ここは仕事場なので、問題なくお客様対応さえできれば、
要はそれで良かったりする。
算数ができない人の改善を強く願い過ぎて、
毎日毎日嫌いな算数ばかりさせていたら、
その子はやがて学校そのものが嫌いになっちゃうよ、絶対!
(私だったら!(笑))


百瀬さんのような人には、マインドの指導を強化するよりも、
具体的な手順をルーチンとして、
とことん教え込んだほうがいいと思う。
「確認を!」と言うなら、
そのための具体的な言い回しや実際の謝り方をロープレ、
「危険の回避を!」と言うなら、どういう危険があるか
リストアップ→毎回自己チェックだね。
足りないのは現実的なトレーニングなんだよ、たぶん。


そして何より、「機転」とか「やる気」とか、
そんな曖昧で実体の無い助言よりも、
業務知識をガッチリ詰めるだけ詰め込んで、
いつどんな質問が来ても一次回答が即座にできる、
万全の体制にしてあげればいいのだ。
そういう考えも、あっていいと思うよ?
だいたい、マインド重視は元来女の考えかもしれない。
うちの担当は女の子のほうが元気で発言力があるので、
どうしてもそっちに偏っちゃうのかな。
おーい、男はどうしたー!


    *    *    *    *    *    *


クレームが発生したときは、主任が本社に報告書を書き、
今後の回避策として何をどうしたかを盛り込まなければならない。
その発案を求められた私達は、研修室に集まり施策を考えた。


でも、小野君もレイちゃんも、どうしてもやっぱり、
「意識」や「姿勢」が気になってしょうがないんだよなぁ。。。
この際、ほっとけよ、そんなの(笑)


(レイ)「面談はしたし、指導もしたし、
あと何をしろって言うんでしょうね」

(私)「研修しようよ、フォローアップ研修。
だいたい、ここはみんなの苦手な部分でしょ?
私だって入ってしばらくは、
なぜできるのとできないのがあるのか、
だいたいユーザーはなぜ組み合わせて使いたいのか、
意味が全然わかんなかった。
みんなもそうなんじゃないの?」

(レイ)「ですが、いくら業務の知識があっても、
進め方に不備があったら…」

(私)「レイちゃん、百瀬さんの場合は逆だよ、逆。
マインド的なノウハウは知識を補うために大いに必要だけど、
豊富で正確な知識があって何が来ても即答可能!なら
そんなの最初から必要ない、という理屈も成り立つんだよ?
"意識"や"取り組み姿勢"の強化指導なんて言わないで、
音を上げるぐらいに徹底的に教えたら?
仕様書全部暗記するとか(笑)。
百瀬さんにはそっちが向いてる気がする。
それに彼女、勉強は好きだよ?」

(レイ)「そうでしょうか…(不満げ)」

(私)「うん、それでもきっと、どこかで間違うとは思うけどね(笑)。
それに、ここは結果オーライの職場カラーだから、
作業の手順もその人の好みで早く確実なのが一番で、
私達は誰がどういった順番で何から取り掛かっているのか、
あまりうるさく問わないし、最初から「こうしろ!」と、
強制的に教えることもしないけれど、
それだってパターンを決めて型にハメ込むように、
ガチガチに守らせたほうが、
やりやすい人もいるんだと思うよ。
百瀬さんてそういうタイプなんじゃない?
定型案内が主体の班にいたときは表情がキラキラしていたけど、
調査がメーンの自由案内に変わったらあまり元気がないよね。」


(レイ)「ぷらさんがそう思うなら、
     私は別に反論は無いですけど…(不満げ)」


要するに知識の詰め込み。
要するにマニュアル重視の手順。
これらは、臨機応変なオペレーションと、
柔軟なお客様対応を要求される事が多い私達の現場では、
あまり役に立たないことが多いので、
どこか否定的に捉えられていますが、
実はいいところもたくさんあります。


とりあえず何でも丸暗記して、
例え浅くても広い守備範囲が得られること。
人の能力に関わらず均一のサービスを提供できること。


その良さをもう一度見直そうよ。


もし、そっちのほうが性に合う人がいるのなら、
人と現状を見ながら手法を少しずつ変えていくのが、
育成担当者の工夫のしどころかな、と思う。
量を極めさせる、ルールを厳守させる、
そういった手法もあり、と思う。


マインドは確かに大事。
でも、そこにばかりこだわっていると、
今後も育たない人が出てくるかもしれない。
(それってもしかしたら女の発想でこの際力技もアリかもよ?)


だから、これからは相手の資質に任せていないで、
作戦を練ろうよ。
汎用性のある定型パターンが必要ならどんどん作ろうよ。
頭を使い、実際に自分の手足を動かさないと、
うまくいかないときもあると思う。


いい人がどんどん入ってくればいいんだけどねぇ。。。
どうもそういう状況ではない昨今、
そんな思いを強くしている。
だけど、それをやったらセンターの質は、
段々落ちていくだろうな。
そして本当に興味関心のある人にとっては、
面白みも魅力も感じられない仕事になっていくかもしれない。
人材不足。ま、一番の悩みはそこだったりするのさ。
つたない私のひとりごとですが。

2007.02.19

うちの亭主もメールが変(笑)

【過去記事一覧】~after Asperger~
・アスペルガー症候群 ・私達の困った性格 ・アスペルガーな人々 ・アスペルガーな日々 ・アスペルガーなつき合い方 ・アスペルガーな考察 ・出番です、待たせたね。1(周辺記事) ・ASをめぐる夫との会話 ・対話のチャネル ・アスペルガーな研修 ・アスペルガーな現場 ・アスペルガーな新人 ・やっぱり阿吽の呼吸ナノダ ・ASを伝えるほどに広がる誤解 ・羹に懲りて膾を吹くか…? ・彼は本当に立ち上がれるか? ・NGでも走ってみることにしたが ・読めない人 ・面接するほうのキモチ ・厄介な人(1~12) ・Mindblindness?自閉症について ★うちの亭主のメールも変(笑) ・連敗中!句読点をつけない人 ・アスペルガー症候群と犯罪 ・自閉症的なスタッフの指導 ・誉める事・評価する感受性 ・なぜ危機感にこだわるのか ・アスペルガーなユーザーサポート ・やっぱダメかな… ・その人の退職 ・お互い不幸にならないために ・この新人さんは断ろうと思う ・事前研修の私の今後の課題

うちのご亭主は夜勤職で日中は家にいるので、
調子がいいときは洗濯をしてくれます。
先日は天気がよく気分もノリノリだったのか、
台所の洗い物と風呂まで洗ってくれたらしく、
「兼業主夫」というタイトルで、
今日いかにたくさんの家事をしたのか、
勤務中の私に、上機嫌でメールが来ました。

それが相変わらずおかしいんだわ(笑)。
「ありがとう」と返信したら、

 

>いや駄目だ灯油を入れようと思ったので昼ねしすぎて鍋がある
(原文のまま)

なんじゃこりゃぁ?って感じですよね。

これは要するに、
いろいろやったが自分としては不満足で、
灯油を入れ終えるところまでやって完璧にしたかったのだけれど、
昼寝し過ぎたら出社の時間(夕方)になってしまい、
台所の鍋も洗い残してしまった。痛恨である。

ま、こんな意味ですかね。
だけど、「ありがとう」と打ったら、
「いや駄目だ」と来たので、
私は一瞬、御礼を言っちゃ駄目なのかと思ったよ。
(またはこんな事をオレにさせて腹が立っているとか…)
ホント、この人のメールはいつもこうなんだ(笑)。
えー、次。これも可笑しいよ?(笑)

 

>画面が残ってたねですべてを終わりにしたら画面が何もなくなったのでF9の上ねボタンを押したら電源を切る事が出来ますと出たけどこね後、どうしたらいいの?(原文のまま)

「の」を「ね」と押し間違えているのでわかりにくいですが^^;、
これはPC超ビギナーのご亭主が、
外出先の私に自室のパソコンの終了方法を尋ねたもので、
立ち上げっぱなしで私の作業途中になっているノートパソコンに、
自分のログインIDで入り直したいわけです。
(私達はユーザーを分けて使っている。
いや、私がそうさせている(笑))

「F9の上のボタン」というのは電源ボタンですね^^;
「画面が残ってた」というのは、IEか何かが、
立ち上がっていたのでしょう。
それを全部落として、電源ボタンを押したら、
「電源を切る事ができます」と出たので、
はてさてどうしたものか?…というメールです。

というわけで、ご覧の通り、
うちのご亭主のメールは、
噴出すことも多いけど、疲れるんですよ~
でも妻のアタクシの"読み"と"回答"が的確なので(オホホ!)、
支障なくコミュニケーションは取れているわけですわ。

※もっと楽しい?のあったんですが、
 今はこれしかなくてすみません。。。

職場で周囲と感覚が合わず、
業務上の悩みの種になっているスタッフに頭を抱えるたびに、
アスペルガー症候群とか自閉症とか発達障害とか、
そういった生れ付きどこかが違う人達の
事をいろいろ調べているうちに、
私には昨年あたりからひとつの強い疑惑が…

実はうちのご亭主もその範疇に入る人なんじゃないかい?
よく考えたら、行動的な特徴は結構当てはまります。
これはもしかして…??

まず、不器用!
・蛍光管の交換がなかなかうまくできない!
・磨り減って回すのにコツがいる鍵を、
 力任せにひねってグニャリと曲げてしまう。
・物置の扉をよく外す。しかも絶対直さない(直せないらしい)
 次の人超迷惑。
・おかずをよくこぼす。
 ダイニングテーブルの下は亭主の足元だけ汚い。

場違いな事を家でよくやる!
・夜勤明けで帰宅すると
 「ハロー、オーイエーィ!乗ってるかーい?ヤホー!」と、
 日曜で寝静まった家に大声で入って来る。近所迷惑でもある。
・推理ドラマで「わかった、犯人はコイツだ!」と超うるさい。
・子供達のいる前で、下品でストレートな下ネタ連発。良識を疑う!

他人が怒るような事を平気でやる!
・家族が使っている歯磨きを勝手に黙って会社に持っていく。
 それを知らない私達は、朝から「ない!ない!」と大騒ぎ。
 真相がわかると一同唖然。。。
 (時間もお金もあるんだから買えば?)
・いたずらのつもりで時計を遅らせたりする、これは激怒です。
・乗った自転車を玄関のまん前に置く。出られねーぞっ!

まー、ある意味天真爛漫ですねぇ(笑)
小さい頃は義母に怒られてばかりで、
ハサミで頭を叩かれて頭から血が出たのを見て、
義母が大慌てした思い出があるという。
ふざけて授業をかき回すので、
先生にも相当嫌われていたらしい。

彼の真骨頂が最も如実に出るのが運転時。

以前は駐車違反でよくつかまったのですが、
それは運が悪いんじゃないのね、全然。
他人のウチの車庫の前とか狭い私道のど真ん中とか、
考えられないところに止めるから通報されるわけ。

私をどこかに送ってくれるときもすごいですよ~、
大きな水溜りの上で車、普通に止めますからね(爆)!
あと、縁石でドアが開けられないところとか(笑)。

極端に道を覚えられないからよく助手席で道案内をしますが、
これもおかしい!
「あ!そこで左に曲がって!」と言うと彼、
トラクターしか通らないような農道でも、
農家に続く行き止まりの一本道でも(おーい、どこ行くんだ~!)
最近車が通った形跡が全くない草ぼうぼうの山道でも、
なーんにも考えないで即座に左に曲がっちゃいますからね。
左折の道がにちゃんと左手に見えているでしょうがっ!
公道を走ってくれっつの、公道を!!(まさに字義どおり!)

目的の建物が見えたので、
「あー、あったあった!あそこだ!」と指差すと、
病院を目指しているとわかっているはずなのに、
「はい、着いたよ!」と手前のスーパーの中に入っていくし。
「え…病院に行きたいんだけど??」
「あ、そうか。」

そして極めつけは、
車体が小さくて楽なはずの軽自動車が見るからに傷だらけで、
しかもなんと右側のドアを一番何度も擦っている。
運転席側だぜ??どこ見て走ってんのっ!

    *    *    *    *    *    *

ま、すべてがこんな感じだから、
私はずーーーーーっと前から、
うちのご亭主って一般会社でビジネスマンになるのは、
とてもじゃないが無理っぽい人だな~と痛感していて、
案の定、リーダー職で転職した会社で、
年下の女の子達に総スカンを食らって、
同僚からも何かと批判の的になって辞めちゃったし、
その後リストラにも遭っている。
私だって、うちのご亭主みたいなヤツは、
頼まれたって採用しないよ!

冗談で、「あんたのところで雇ってよ~」と言うので、
「駄目!無理!冗談でもやめてちょうだい」と言った後、
引き返して「ホントに、絶対来ないでよねっ?」
だってそうでも釘をさしておかないと、
ホントに来そうなんだもん(笑)。

    *    *    *    *    *    *

さて先日の夕食時、
そんなご亭主に自閉症と思われる(たぶん高機能自閉症)
穣太君が辞めた話をした。
軽い言い方を勘弁してもらえば、私は亭主を、
「かなりそれっぽいぞ~??」と疑っていて(笑)、
けれど、アスペルガー症候群
(高機能自閉症とほぼ同義らしいが同じという専門家も。)
の話をしたときには、
「オレは違う。断じて違う!」と否定したので、
もうその話はずっとしていなかった。

じゃ、「自閉症」だとどうかな?
うちのご亭主って、
前後関係をよく把握せずに人の話を聞くから、
ちょっと表現や言い方を変えると、
コロっと騙されちゃうんだよね(笑)

「で、その穣太君ていう人、どこがどう駄目だったの?」

「んー、やっぱり一番はメールかな。うまいメールが書けないの。」

「メールか。あー、それはオレも最高に苦手だな。」

「あ、そう?なんかね、穣太君のメールって変なのよ。
日本語がおかしかったり、テニヲハが間違っているのもあるけど、
事実だけを書いて、じゃ、お客様は何をどうすればいいか?
それを一切書かないのよ。だからお客様が怒っちゃうの。」

「?」

「例えば○○ができないって言っているお客様に、
それに関して××の調査をして△△というエラーが出て、
□□という事がわかったので、それはシステムの不具合でした。」
…で、終わり。はい、これで終わり。」

「え?どこがおかしいの?それでどこが変?」

(内心、ガーン…)

「え、だって、じゃユーザーが
今できないでいるものをできるようにするためには、
一体どうすればいいか、それを全然書いてないでしょ?」

「あ、そうか。」

「それじゃちっとも"ユーザーサポート"じゃないじゃん。」

「あ、そうか。じゃ、どう書けばよかったの?」

「え?だから~(例えばだよ?)
なので初期化してもう一度試してみてください、とか、
設定が間違っているから直してください、とか、
不良品なので交換手続きをして下さい、とか。」

「なーるほどー!結論がないんだなっ!」

「うーん、結論ていうか助言?指示?」

「わかった!じゃオレも今の施設警備の仕事で、
引継簿を書くときには事実だけを書かないで、
自分の感想とかまでを詳しくきちんと書かないと、
駄目だって事だな?」

「あはは!引継簿に感想書くの?(受ける)
うれしかったとか?悲しかったとか?(爆笑!)
※実はこの時点で話が食い違っているのだが…
やだ、そっちの引継簿は
その日にあった出来事だけを書いて記録する、
業務日誌なんだから逆にその必要はないでしょ?」

「あ、そうか。
どうも、オレってそういうところがわかんないんだよな。」

「あと、そうそう、メールの書き方もね、
こうでこうでああでそしてどうでそうで…って、
延々と事実の羅列なんだよね。」

「!!!!!!そう!そうなの!オレ、まさにそう!」

(まったくだ!内心、激しく同意(笑))

「オレ、頭の中に浮かんだ事を浮かんだ順番にしか書けないの!
オレ、もしかして穣太君と同じ自閉症かもしれないっ!!」

「え?どうしてそう思うの?」

「いや、だから、そういうのはオレ最高に苦手なの。」

「え、メールを書くときに出だしとか説明部分とか結論とか、
そういうのを組み立てて書いたりしないの?」

「がーーーーーっ!それだ!組み立てだっ!
それ、オレできないんだよっ!ダメなの。
そういう事を考えていると、段々頭が痛くなってくるの。
この辺(額の両脇付近)が本当にズキズキしてくるの。」

「え?マジで?」

うちのご亭主はいつも私の話が込み入ってくると、
「うわ、頭が痛くなってきた」と言うのですが、
それは今まで、あくまでも表現上の言い方で、
まさか本当にそうだと思ったことはなかった。

「本当に痛くなるの?」

「うん、本当に痛くなるの
だからテレビでも今時の恋愛物とか大嫌いで、
ごちゃごちゃした人間関係とかが始まると、
本当にわけがわからなくなって、
考えるのが疲れて面倒になってくるので、
オレは見ないんだ。」

へー。
今まで何度も同じセリフを聞いてきたけど、
今はそう言われると、非常に納得できるような
真実の言葉に聞こえる。
苦手なんだよね、きっとそういうの。
こっちはそれが面白かったりするんだけど。

    *    *    *    *    *    *

変なヤツだけどウチのご亭主はいいヤツである。
例え勘違いでも家族のためには一生懸命、
(その方向性がおかしいのでたまに皆に嫌われる(笑))
子供のように素直で純真でわかりやすい人である。

家族はもう、全員がすっかりあきらめてしまって、
実はその「あきらめた時」からが楽しくハッピーな
家族生活の始まりだったように思う。

人は様々なので、
今までうちの人を「変な人だ」と思ったことはないんだけど、
前述のように「一般会社では絶対普通に働けない人」というのは、
ずっと強く思っていた。
だから今の警備員の仕事がパートで、条件や給料が悪くても、
亭主の性に合っていて長続きしているなら、それでいいと思う。

「あの人はおかしい」「普通じゃない」「病気だ」
と言って事あるごとに嫌悪していたうちの同居の母も、
長い時間が経つうちに、やがてあきらめ、
笑ってジョークにするようになり、
亭主自信もすごく穏やかで丸くなった。

自閉症とかアスペルガーとか、あるいはそうでなくても、
人間50を過ぎてしまえば、もうそういう事はどうでもよく、
(もう孫もいるじーちゃん、ばーちゃんだし^^;)
(おっと、私はまだ40代半ばじゃー!)
同じ事で笑ったり楽しんだりしていければ、
それでいいかな、と思うけど、
それは私の今の給料のほうが、
アルバイト時給の亭主よりも高くて、
とりあえず生活が安定しているからかもしれないね。
(悲願だった…それだけを目標に職を変えステップアップしてきた)
それにこの人がもし、普通のオフィスの会社員だったら、
周囲は相当困惑する事だろうな。

※余談ですが彼が若かった頃は、
短気でキレやすくて思い込みが激しいし、
交渉事や調整案件に同席して、
いい結果になる事は一度もなかったので、
それから私は、亭主をあまり、
公の場には出さない事にしている(笑)
何かの手続きでさえも、
変なところで間違うんじゃないかとどこか不安で、
彼が日中家にいたとしても大事な事は頼まずに、
例え有給を取って休んででも自分でやるんです^^;
自衛策ですわ。あはは、ごめんね。

※ちなみに、妹の結婚式での彼の親族紹介は、
まともに紹介できた人が一人もおらず、今も語り草だ(笑)!
「では、祖母、立ってください」って、
その呼びかけはなんだよー(爆)!!
("祖母"って…普通は「おばあさん」だべ??)

でも、私はこの人と一緒にならなければ、
ここまで自分が他人に対して寛容になる事はなかったし、
人への柔軟なとらえ方とか、発想の切り替えとか、
「それでもダメなものはダメなのだ」と、
一線を引く判断をしたり、あきらめたりする気持ちとか…
そういうのはもしかしたら、
すべてこのうちのご亭主のお陰かもしれない。
いやー、鍛えられましたからね~(爆)

だから、結局何事も考え方なのかもしれないよ。

私ひとつ、いい事思いついた!
今度もし、再び職場に困ったさんが入ってきてしまう事があったら、
「こういうときはどんな風に思うものなの?」って、
亭主にひとつひとつ聞いてみようかなと思って。

だってこういうのは、利用しない手はないよね?(笑)
今まであまりちゃんと聞いたことのなかった、
何かがうまくできない時の精神状況や本音を、
これからは逐一ヒヤリングして、
自分の仕事におおいに役立てよう(爆笑)!
ほら、立ってるものは親でも使え!って言うでしょ?
なんでもそこにあるものは、最大限に利用しなくちゃ(爆)!

    *    *    *    *    *    *

と、いう事で、たぶん私は一風変わった人にも、
あまり違和感を持たないタイプの人間なのかもしれない。
きっと自分の中に何かの共通項があるんだと思う。
だから面接でいくら注意しても、
困った人の変なところが気にならないときがあるのかなぁ。
うーん、それだけはちょっと困りますね^^;
前よりも随分わかるようになったんだけどな。
どうしましょう。。。

 
 

 




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2007.02.18

Mindblindness?自閉症について

【過去記事一覧】~after Asperger~
・アスペルガー症候群 ・私達の困った性格 ・アスペルガーな人々 ・アスペルガーな日々 ・アスペルガーなつき合い方 ・アスペルガーな考察 ・出番です、待たせたね。1(周辺記事) ・ASをめぐる夫との会話 ・対話のチャネル ・アスペルガーな研修 ・アスペルガーな現場 ・アスペルガーな新人 ・やっぱり阿吽の呼吸ナノダ ・ASを伝えるほどに広がる誤解 ・羹に懲りて膾を吹くか…? ・彼は本当に立ち上がれるか? ・NGでも走ってみることにしたが ・読めない人 ・面接するほうのキモチ ・厄介な人(1~12) ★Mindblindness?自閉症について ・うちの亭主のメールも変(笑) ・連敗中!句読点をつけない人 ・アスペルガー症候群と犯罪 ・自閉症的なスタッフの指導 ・誉める事・評価する感受性 ・なぜ危機感にこだわるのか ・アスペルガーなユーザーサポート ・やっぱダメかな… ・その人の退職 ・お互い不幸にならないために ・この新人さんは断ろうと思う ・事前研修の私の今後の課題

お互いに独身でなくなって、
交流が途絶えた高校時代の同級生に、
同窓会の連絡で10数年ぶりに電話したところ、
受話器の向こうから子供のキャーキャーと叫ぶ声が聞こえた。

年賀状だけは続けていたので、
私は彼女の家族構成を思い出し、
小学校高学年の息子さんがお父さんとじゃれあって、
騒々しい声で盛り上がっているのだと思い、
「いいね~、楽しそうで!」と言った。

すると彼女は、
「いや違うのよ。ぷら子、実はうちの子自閉症でねぇ…」

私は自分の身近なところに障害者はいなかったので、
すごくびっくりして、二の句が告げられなかった。
一人息子が自閉症だなんて、
そうとわかったときはどれほど失望し、
これからどんなに重荷を背負った人生だろうか…

そう思うとどう反応していいか困ってしまい、
「そうなの…それはすごく大変だね…」とだけ告げて、
あまりはしゃいだ声も出せないまま、
手短に電話を切った。

これが、「自閉症」という言葉を初めて身近に意識した、
一番最初の経験である。

家の中に障害者がいる。
語弊を恐れずに言えば、
この事実だけで思い描いていた人生が大きく狂ってしまう。
彼女は子供を産んだことを後悔したり、
自分の運命を恨みがましく思う事はないんだろうか?
仲の良かった友人だっただけに、
自分の事のようにショックが大きくて、
そんな事をしばらく考えていた。

    *    *    *    *    *    *

以上が、それまでの私の自閉症観である。
障害。
言葉の遅れ、知能の遅れ、大変な子育て。
自立できない子供を抱えた希望のない未来。

ところがこの固定観念を完全に裏切る事実を知った。
自閉症者の中には、
アスペルガー症候群、あるいは、高機能自閉症などと呼ばれ、
普通の人と何ら変わりなく暮らし、仕事をし、
結婚して家族がいる人達もたくさんいる!

ある人は非常に頭がよく、ある人は何かの才能があり、
医者や弁護士や学校の先生、
そしてプログラマやエンジニアの中にも、
そういった人達が少なからずいるらしい。

これは、「自閉症=知的障害=変わった外観と知恵遅れ」
と自分の中で勝手に関連付けていたイメージを大きく覆し、
私の人生観までも変えてしまった。
決して大げさな言い方をしているわけではなく、
そういった障害がこの世の中に存在する!という事実は、
以後、職場で問題児とされ周囲の不満を爆発させている人への、
見方を大いに変えるきっかけとなった。

発端は、私と契約会社の面々が、
自信を持って企業さんに推薦し、
企業内立上げ業務の現場班長に据えたある契約スタッフさんが
「あまりにも仕事ができないので困っている」と、
企業内担当者や同じ契約スタッフの同僚達に、
強く批判され始めた事だ。

私には俄かにそれが信じられなかった。
どこがどう「できない」のか、全く明確にイメージできなかった。
彼は一流大学を出ており、頭が悪いという事はないはず。
聡明な顔立ちで真面目で礼儀正しい人柄もよく伝わってくる。
この人が「仕事ができない」なんて、何かの間違いだろう?
しかも「イマイチ」ではなく、「あまりにもできない」なんて、
それって人並み以下の評価じゃない?

が、周囲の話を聞くと、
「明日まで仕上げておいてね」と、
正社員の上司に頼まれた資料を、
何度言っても、言っても言っても、やらないんだって。
それがまず、NGエピソードの筆頭に掲げられた。

「前ぽん、昨日頼んだあの資料できてる?」
「あ…すみません。やってません。」
(忙しくてできなかったのかな?)
「あ、そう。じゃ今日中にやっておいてね。」
「はい。わかりました。」

翌日。
「前ぽん、昨日の資料できてたら出して。」
「あ…すみません。やってません。」
「(ムッとして)やってません…て。なんでやらないの?」
「…忘れました。」
「(舌打ち)じゃ、今日こそやってね。
…あのさ、忘れるから今やって。」
「はい。」

ところが周囲が見ていると、一向に着手する気配がない。

(私)「何やっているの?そういう時って?」
(A)「それが…構成図とか仕様とかを
必死に勉強しているみたいなんです。」
(私)「みんなで注意してあげたら?」
(A)「言いました、何度も。私も、Bさんも、社員のCさんまで。
『前ぽん、今はそれをやっている場合じゃないでしょう?』って。
でも、やらないんです。『そうですね』と言いながら、
絶対にやめようとしないんです。」
(私)「はぁ…」

(A)「そこまで頑なだと、私達もそれ以上は…
前ぽんは班長だし、私達はヒラのスタッフで、
彼に対して何の強制力もないし、
もういいや、知らないからね?って感じで。」

そしてついに前ぽんは、その資料を、
辞めるまでの二年間に一度も作成・提出しなかった。
一事が万事そうなので、周囲はあきれ果て見捨て、
やがて、あれで班長の給料をもらうのはおかしい!という、
怒りの声が上がり始めた。

他にも、
・どうでもいい事にこだわって絶対におかしいと思う指示を出す。
 とても納得して従えるようなものではない。
・システムの不具合によるユーザーからの苦情殺到など、
 緊急事態が発生した時の対処の優先順位が変。非常に危険。
・場にそぐわない事をあからさまに言ったり、
 他人を大きく傷つけてしまうような事を平気で言う。
・とにかく場が読めない。その一言に尽きる。

そして、瞬く間に「班長失格」の烙印を押され、
私は関係社員やスタッフと顔を合わせるたびに、
「アイツ、どうにかならないか?」の苛立ちをぶつけられ、
上部に呼ばれて何度も苦言を頂戴したり、
彼を人選した"見る目のなさ"をたくさんの人に問われて、
大変ストレスの大きい日々だった。

以下は最初の頃当時のスタッフにもらったメール。
(二年も前の話なので、時効と思い掲載します。一部編集済み)

 

実はぷらさんに折り入って耳に入れておきたい事が山ほどあって。。。内輪の事なんでどうしようかずいぶん悩んだんですけど。

で、今回一番話ししたいのは「前ぽん」の事です。私も含め皆彼への不満がどんどん溜まってきて・・・という状態なんです。さすがの私も呆れるというか・・・怒るというか悲しくなります。

先週本人にも言いましたが(皆それぞれ本人に指摘してるんですけど)どうも班長の仕事を思い違いしてるのではないかと?彼の中での優先順位が皆(課長、正社員達含め)と違うんです。今私達は○○の仕事を××に移管してちょっと暇な時期なんですけど、その間にスキルアップする事が前ぽんの中では一番大切みたい。確かにそれも大切だとは思うんですけど、シフト勤務者はどちらかというと土日、夜間の一人の時にスムーズに対応できる資料を先に作りたいわけで。。。で、色々提案すると「それは難しいですね」「前例がありません」「今忙しいんで」という感じ。なので勝手に作っちゃってるんですが(笑)彼は”そんな事より保守運用資料を読め”って思ってるんですね~。

で、それをちょこっと高飛車に口に出すから不満が出る。。。前ぽんの性格わかってる私でさえもカチンときますからBさんやCさんはど~なんだろ?って思います。

相手が私なので、随分控えめな書き方になっていますが、
心中はそれほど穏やかなものではないはず。
こういったメールを毎日のようにもらい、
私はすっかり参ってしまった。

そしてあるとき、かつて新聞記事で読んだ事がある
「場が読めない障害」の事を思い出しネットで検索、
まるで目前の暗幕が瞬時にサッと振り落とされたように、
すべてが飲み込め、「まさにこれだ!」と、
手を打ち膝を叩きたいぐらいの非常に強い確信を得た。
それがアスペルガー症候群だった。

同時に、一度そうだと知ると、
まるで目が慣れていくように物事が良く見え始め、
70余名のスタッフ達のうちで、
職場の問題児といわれている人達は、
大なり小なりその傾向が見られると気が付いた。
そう、みんな似ている。
何かが周りと食い違っているという点で共通している。
それは、決して性格だけの問題じゃないんだよ。

    *    *    *    *    *    *

以後の私は、アスペルガー症候群に関して、
本や関連サイトを読み漁り、
できるだけ多くの現実的な知識を得ようとした。

その目的の中には、育成や指導のほかに、
いかにして短時間でそれを見抜き、
採用時のNG判定に活用できるか?という、
よろしくない理由も含まれているので、
本来私は、当事者の方々に顔向けができないし、
支援するだけの立場では決してない。

しかも、専門家ではないのですべてが憶測ベースであり、
自分の確信が間違っていた場合、
何もかもが根底から揺らいでしまう。

けれど、昨日読んだ当事者の方のサイトで、
以下のような文章を読み、強い共感を得て、
自分の感じた事や経験が誰かの参考になるのなら、
あまり臆さずにありのままを書こうと再び思った。
それに私にとって大事な事は、
相手がそういった診断を医療的にされるかどうかではなく、
現実にその特徴のある振る舞いをしているという事実のほうで、
そういったスタッフ達とうまくやっていくための、
自分なりのセオリーを固めたかった。

引用元は山岸徹さんとおっしゃる方のサイトで、
「自閉症なんかぶっ飛ばせ!」
上記サイト内の「誤解」という記事からの抜粋引用です。
(山岸さん、ご厚意感謝いたします。)

ですがこういった事は、これをお読みの皆さんの中でも、
ご家庭や職場において「"何かが普通と違う"感覚」の人に、
大いに悩み困り果てた経験のある方でないと、
なかなかわかっていただけないかもしれません。
大変読み手を選んでしまう話題だとは思います。

 

目の前にちょっと風変わりな子供がいる。
今迄でこんな子供は初めてだ。
頭が悪いわけではないのに、突拍子も無いことをやらかす。

ずっと不思議だったが、友人から借りた本の中にそっくりな子供を見つけた。
それは、ハンス・アスペルガーが書き残した「カエル博士」だった。

 

現実に、アスペルガー症候群の子供が身近に居て、
その正体がはっきり分かった時は、上記のような感じだったのではないでしょうか。

その後障害について書かれた専門書を見ると、その特徴はピタリと一致します。

 
 

ところが、知識(専門書)から先に入った場合には違います。

さて、前回まで職場で一番最近の問題児だった、
穣太君(20代前半/男性スタッフ/仮名)の事を、
長々と書いてきましたが、
私には未解決の疑問がひとつ残った。

それは彼が、私がアスペルガー症候群の事を知って、
面接でも注意深いアンテナを、
張るようになってから入ったスタッフなのに、
それまでのように、面接中に「あれ?」と思ったり、
事前研修中に「もしや?」と感じる事が一切なく、
なぜそこで何も見抜けずに、何の疑問もなく、
職場に入れてしまったのか?という事。

職場での彼のエピソードや、
問題が表面化してその気でじっくり接し直してみると、
確かに社会性や、コミュニケーション、
そしてこだわり、イメージ力などに特徴が出ているのですが、
よくあるように、私の質問に対する回答がチグハグだったり、
視線を合わせなかったり合わせ過ぎたり、
場違いでとんちんかんな行動はなかったので、
(あっても私は"若さゆえのもの"と感じた。)
採用を担当する契約会社の同僚にも、
「彼は、違うよ」なんて言った記憶がある。

もちろん、専門家でさえ判断が難しいという事なので、
出向先企業で自社から派遣した契約スタッフ管理を業務とする
一介の素人オバさんの私が、
そんな短時間で何も決め付けられる事はできないし、
そう思うのは不遜であると承知している。

が、何となく核心を掴みきれていない感覚を持ったのだ。
彼らの目に見える特徴だけで、何かを判断する事を。
そこから共通項を導き出す事はとても不可能で、
何か他に、誰にでも一致して言える事はないんだろうか。

そして私は、自分自身への検証も兼ねて、
答えの見つからない旅のように、
再び本やサイトを巡る毎日を続けた。
けれどたぶん、このあとは、
情報への飢餓感で放浪する事はないように今は思う。

上記の山岸徹さんのサイトで、
自分なりの答えを見つけたから。

    *    *    *    *    *    *

「ニキリンコ」という検索ワードで、
たまたま訪問した山岸さんのサイトは、
ご本人も奥様も「アスペルガー症候群」の
診断を受けているという事で、
私が一番知りたかった、
「大人で」「頭がよくて(山岸さんはシステム設計者)」
「普通の仕事をしている」方が、
偽りなくご自分達の思考を語った文章が載っていて、
私はまさにその通りだと思ったし、
奥様の書いた文章は、穣太君が書くメールと
どこか似ている雰囲気があった。

奥様は「私達にはココロがない」と書いており、
自分自身に「ココロ」がないから、
相手にも「ココロ」がある事がわからないという
主旨の文章だった。

ご主人の山岸さんは、
(アスペルガー症候群を含む)自閉症を
「SAMの障害」と書いておられた。
私はPCの仕組みにあまり詳しくないので、
「ああ、あれか!」と瞬時に頷く事ははできなかったが、
お二方のおっしゃる事には、
今まで自分が何となくそう思って来た事が、
文章という目に見える形で提示されており、
私は深く納得して、「あぁ、これで十分だ」と思った。

人によっては異論のある方もいるかもしれないし、
もっと別な感覚を持っている当事者の方もいると思いますが、
私は自分自身でこれが望んでいた情報だったように思う。

個人的には読みにくい文章でしたが^^;
奥様の講演原稿
PCになぞらえて解説されている部分もある
山岸徹さんの口演内容

山岸さんは別途blogも書いていらっしゃいますが、
私には上の二つの記事が、
大変リアルに現実を表しているように思え、
今回の最大の収穫?と感じて、
リンク先もそちらにさせていただきました。
職場で同じ悩みを持つ方は、
ぜひ一読されたほうがいいと思います。

    *    *    *    *    *    *

以前、前ぽんという困った班長さんのときは、
私はアスペルガー症候群の書やサイトをよく読みましたが、
私は今回、それよりももっと根本的な事が知りたくて、
自閉症のほうの情報をいろいろ探していました。

当事者でもなく家族でもなく、
医療や福祉の専門家でもない私が、
こういった記事をあれこれ書くのは、
いろいろと憚られる気持ちもありますが、
職場の第三者の視点から見たままを述べますと、
自閉症(と自分が思う)の方の特徴は、
与えられた情報を加工せずに保存しておく人、
という感じがします。

私達は知らず知らずのうちに、
外界から受けた刺激(情報)に優先順位をつけ、
自分にとっての価値に照らし合わせて、
取得選択をしているのだと思う。

だから大切な事はよく覚えているけど、
そうでないものはすぐ忘れちゃう。
というか、本当はどこかにちゃんと、
記憶されているのかもしれないけど、
「思い出せ」と明示的に命令される事でもなければ、
その記憶が蘇る事はない。

でも自閉症の人は、
その加工作業とフィルターがないんじゃないのかなぁ。

情報はすべて生のままで羅列していて、
溶けたりくっ付いたり絡んだりしている事がなく、
取り出して相手に提示する時も、
毎回単独でその形のままなのだと思う。

だから、これが一つわかれば全部わかる、とか、
何かと何かが自分の中で関連付けされて、
知識がどんどんつながっていくとか、
職場の指導者側の思惑に添った成長はないような気がする。
でもその人にとっては、それが当たり前のすべてで、
それ以外の何物でもないんだよね。

なので、交代勤務の引継簿に、
事実だけをやたら詳細にびっしり書いて、
次の当番者が具体的に何をどうすればいいのかについては、
全く伝えずに帰ってしまうので、
当番者が毎回苛立って携帯に電話する羽目になったり、
依頼されたコピーを枚数分取っても、
それを依頼者にすぐ持って来ないで、
いつまでも自分の机の上に放置したりするのかもしれない。
(それを世間は"気が利かない"と苦々しく舌打ちして
大きく首をひねるのだ)

そのフィルターを山岸さんご夫婦がおっしゃるように
「ココロ」と言うのなら、
確かに、自分にないものは相手にも存在しているとは思えず、
ご自身の「ココロ」も相手の「ココロ」も意識する事ができず、
意識できないものは、推し量る事も予想する事もできないだろう、
というのが、最終的な私の把握です。

もちろん元々の資質や年齢やそれまでの長い経験によって、
大人の人は世間に合わせていけますが、
それはそれで大変なストレスと書いてある一文を読み、
何か考えさせられる事が多かったです。

いずれ、社会性がないとか、
コミュニケーションが取れないとか、
想像力が欠落しているとか、
そういった外から感じられる特徴は、
すべてそこに端を発していると強く思いました。

ならばどうするか?
一見障害があるとはとても思えないのに、
実はあるはずのものを持っていない人達。

これはお互いに、あきらめるしかないんじゃないのかなー。

延々書いてきて、こんな投げやりで軽薄な結論は
お怒りになる方も大勢いらっしゃると思いますが、
個人の正直な実感としては、そうなります。

うちの職場にいるスタッフさんのうち、
同僚の大きな不評を買っていた人達は、
結局今は皆辞めてしまって残っていません。

ですが、この先も面接などで見極める事が全くできず、
もし再び同じタイプの人が入って来たとき、
私達が今度目指さなければいけないのは、
育成や指導など成長を促す観点に沿ったものではなく、
今現状のままのその人を、
どのようにして職場にカスタマイズしてあげられるか?
そういう事になるのではないでしょうか。

身体的な障害であれば、外側からもわかりやすく、
また具体的な支援もイメージしやすいと思いますが、
マインドの問題になると、
周囲の人達の感受性も発想もバラバラで、
しかも本人はとても障害に見えないのですから、
こちらがそうだと感じているだけでは、
協力を強制する事もできません。
これは、とても難しい問題だと痛感します。

自閉症の事を英語ではAutismと言うそうですが、
山岸さんがホームページで引用しておられる、
Mindblindnessのほうが、自分的にもしっくり来ます。

すでに定義済みの言葉なのか、
とある本の著者が提唱して広まった言葉なのか、
私にはわかりませんが、
「自閉症」という呼び方も今となっては誤解が多いし、
もっともっと万人が「なるほど!」と思う、
日本語の名称が合ってもいいように思います。




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2007.02.16

厄介な人(完)~怒鳴らない職場

1011

内海主任に朝のうちに約束したとおり、
私は同じ日の夕方、A班のみんなを再び集めた。
「俺は今回は入らないから、皆さんの本音で話し合ってください。」
そう言われていたので、今回社員の同席はなし。

顔ぶれが揃うと、私は皆さんを前にして、
今やっている研修の進捗と現状を報告します、と言って、
思っている事を率直に述べた。
そして現状、結論はまだ全く出ていないと告げ、
今までとこれからの彼の指導について、
以下のように話した。

「穣太君のお客様とかみ合わないメールや、
他人の気持ちがわからないところは、
持って生まれた強力な個性のようなもので、
はっきり言って皆さんが望むようには、
改善しないと思っています。」

「だけど、性格的に嫌なやつだけど仕事ができる場合と、
性格が良くても仕事が全然できない場合となら、
仕事ができる人のほうがいいわけでしょう?皆さんに取って。」

(由香ちゃん)
「それは当然ですよ。もしそうなら私達は納得します。
そこを割り切る事ができないほど、私達は子供じゃありません。
お金をもらって働いているのなら、
それに見合う働きができるのは当然の事で、
そうじゃない人をいつまでも放置して置いていたりするのを、
『それって職場としてどうよ?』と言いたいんです。」

スタッフ指導をあまりしたがらない、
班長の神田君を暗に批判しているようにも感じた。
由香ちゃんは今回の件で、何度も私に、
「すみません。本当はうちの班長がやるべきところを…」
と、言って来る時があった。
でもさ、今思うと、神田君が例え一生懸命な人だったとしても、
結果はさほど変わらなかったかもしれないな。。。

「わかりました。じゃ、性格の改善よりも、
仕事ができるようになったほうが、皆さん、
いいわけですよね?」

一同促されるように小さく頷く。

「じゃ、私が今感じている事を話すので、
反論はあるかもしれませんが、
まずは騙されたと思って黙って聞いてください。」

そして続けた。

 

私達は通常、他者から刺激や反応を受けて暮らしています。
ここでホワイトボードに大きなマルを書き、
矢印でinputと書く。

そしてそれを無意識のうちに、分析(考察)し、
ルール化(優先順位の序列化)した上で、
そこで導かれた自分なりの結論も情報として併せて蓄えて、
何か行う時には、整理された結論
(自分が到達した行動や判断の指針)のほうを、
常に取り出して参照していると思うんです。

でも、たぶん、穣太君って、
その"分析"と"序列化"と"ルール化"と、
"結論付け"がないような気がする。
もしあったとしても、
他の人とは違うセオリーで行われているんですよね、きっと。
どうも、関連付けの方向が違うような気がするの。
見ていると。

えーと、例えばね、
うーん、そうですね。例えば"下ネタ"!(笑)

"下ネタ"って好きな人とそうでない人がいますよね?
で…
・Aさんに下ネタを話したら嫌な顔をした
・Bさんに下ネタを話したら反応がなかった
・Cさんに下ネタを話したら爆笑で大いに受けた

こういう結果を私達は、
分析して(無意識で行う検討)、
序列化して(下ネタへの親和度…C>B>A)、
ルール化して(下ネタを話す時には人を選ぶ事!)、
自分の個人的な行動規範として結論をまとめ上げて
(下ネタを話すならCさんに限る!)
無意識にそれを行動に反映さているわけですよね?

ホワイトボードに、分析、序列化、ルール化→結論付け、
と書く。

そして隣にもうひとつ丸を書いて、
矢印でoutputと付け加える。

穣太君を冷静に見ているとね、
この分析や序列化・ルール化、結論付けがなくて、
情報として覚えている事はたくさんあるんだけど、
すべてが生のまま断片として置いてあるような気がする。

縫子さんが叫んだ。
「そうそうそうそう!
あの子は一個一個が全然つながってないのよ!
わかります、それ!」

あ、やっぱそう?
だから、仕事でも職場での振る舞いにしても、
「これをこうしなさい」と指示された事は、
言われればその場ではできるんだけど、
次に同じ状況になったときに、
「この前教えてあげたから一人でできるはず」
と勝手に思っていると、予想に反して全然できなかったり、
「教わっていません」なんて言って、
皆さんをカチンとさせちゃうんじゃないのかなぁ…
"まとめ上げ"の作業がないんですよ、彼。憶測だけどね。

でも、そこのところがね、
器質として元々欠損していて仕方のない部分だったら、
「もっとよく考えて」とか、「状況に応じて」とか、
今まで私達が穣太君に行ってきた指導や助言は、
彼に対してはほとんど効果がないもので、
それってもしかして、
種が撒かれていない土地に、
延々と水を遣り続けているような…
無駄で意味のない徒労だったんじゃないのかなぁって。

もしそうだと仮定すると、
私達は「研修はやった」「ちゃんと教えた」って言うけど、
彼にとってみれば実際は「何も教わっていない」のと同じ事で、
考え様によって現在の穣太君は、
適性に合った伸びるような指導を、
まったくされていない人と考える事もできます。

だとすると、9ヶ月間やっても何も変わらない
というのは事実ではあるけど実際は間違いで、
現実は、「彼にとっては何もやっていない」のと同じ。
だったら今から指導のスタイルや方法を変えて、
ここがスタートだと思って育て直してみる事を、
私達はしなくてはいけないんじゃないの?

職場での態度や行動にしてもそうで、
「こういったらわかるだろう」「これで察してくれるだろう」
というタイプのアクションは彼にとってはNGで、
とにかくここの(私はホワイトボードの「分析」を指差し)
分析作業を想定した助言は彼にとって無意味なのよ、きっと。

だから「嫌なものは嫌」「迷惑な事は迷惑」
「おかしいものはおかしい」と、こっちのほう、
(私はoutputというホワイトボードの文字を指した)
にその場で直接ダイレクトに働きかける言い方をしないと、
たぶん彼にはあまり伝わらないと思うんだよね

    *    *    *    *    *    *

そこまで聞いて、山崎君が口を開いた。
「あの…実はオレ、
今日穣太君からメッセンジャーをもらったんです。
内容は、オレがユーザー回答したメールに対して、
あそこが違うとか、ここがおかしいとか、
細かい事をいろいろ指摘したものだったんですが、
もうあとがない崖っぷちの研修中でそんなヒマはないはずだし、
一人前になれないからぷらたなすさんに教わっている身なのに、
人の事をあれこれしつこく言ってくる事に対して、
正直腹が立ったんですけど…」

なんて返したの?

「すみません。でもやっぱりストレートには言えなくて、
オレも迷ったんですけど…いい文面が思い浮かばなくて…
それで、結局、『ありがとう』ってだけ返信しちゃいました。
今の話を聞いて思ったんですが、これってマズかったですよね…」

「ありがとう」か…

「ダメだよ、それだと彼、絶対、
これでいいと思っちゃう。
あの子にそんな事言ったらもう…
調子に乗って、いい気になって、どんどんやるから。」
と、縫子さんと由香ちゃん。

このキツさはたぶん、私に依頼されて、
本気で彼を育てようという接し方をした彼女達だけが感じた、
偽りのない本音なのだと思う。

「ですよね…(苦笑)」と山崎君。

「ありがとう」か…
意味もなく、私はそれを心の中で反復していた。

発言はそのあとも様々に続いて、由香ちゃんには
「職場は基本的に人を育てるのが目的の学校じゃないし、
そもそも私達はお金をもらって働いている。
自分は、契約スタッフというのは、
社会的に完成した人を即戦力として企業が雇うものと思っている。
この厳しい時代に、収支とか損益とかを考えると、
そういった手法でそこまでしないと育たないと思われる人を、
雇い続けているって、企業としてどうなんですか?
育成のための人的稼動とか、人件費とか、
企業としてそういうところは考えないものなんでしょうか?」
と、詰問された。

由香ちゃんの至極まともな発言の裏には、
ここの会社でこの仕事に従事している事への誇りや愛や、
自身のプライドが感じられて、
それをどこかで否定してしまうような
「それは企業さんが決めればいい事でしょ?
企業が気にしないならしないでいいんじゃない?」
という言い方は、さすがに明言できなかった。

    *    *    *    *    *    *

穣太君は頭の悪い人ではない。
みんなは誤解しているけど、
人柄は普通、意欲もある。

が、受け取った事実から結論を導き出す事ができないので、
調査もお客様対応もすべてがあと一歩の踏み込みに欠けた、
表面的なやりとりに終始する。

Xの調査をして欲しいとストレートに言われれば、
すぐにそれを手際よくこなせるけれど、
よほどのトレーニングを積まないと、
お客様のお話を聞いて、
「Xの調査が必要だ」と思い至る事はまずない人なので、
知っている事実だけを断片的に伝え、しかも
「だからお客様はどうすればいいのか?」を決して言わない。

なので、お客様が苛立ったり、
物事が未消化で中途半端なまま、
根本的に解決されない事がとても多く、
結果としてそれは「仕事ができない」という事になる。
調査系のユーザーサポートの現場では、
何より問われるのは想像力だったりもするからね。

    *    *    *    *    *    *

集会を終えて自分の席に戻ってみると、
ひろ子姉さんが駆け寄ってきて、
「さっき、契約会社の細川さんから電話ありましたよ?」
と告げてきた。

「折り返し連絡して欲しいそうです。」

細川さん?なんだろ、あ!!!

すぐに事情を飲み込んだ私は急いで受話器を取った。

(細川さん)
「あ?ぷらさんですか?実はさきほど、
こちらに穣太君が来ましてですね、
『辞めさせて欲しい』と言って、
IDカードとか入館証とか、
貸与品を一切合切返していきました。」

あー

「何かあったんですか?」

いやー、いろいろ…

「穣太君の話は前から聞いていたし、
ぷらさんから、
『万が一退職を申し出てきたら遺留しないでくれ』
って言われていたので、
特に判断に迷う事はなかったですけど、
その場で『そうですか、わかりました』
というわけにも行かないので、
明日、課長に受理してもらったら
その時点で確定と言ってあります。」

あぁ、そうですか…
(あの足で行ったんだ、彼…)

「もう、本当に辞める気で来たみたいで、
私物は全部持ってきた、って言ってましたよ。」

なんか、言ってましたか?

「『怖いからもう行けない』って。」

怖い???

「はい。口ではみんないいことばかり言って、
その裏であんな風に人の事を思っているなんて、
『人間て怖いな、と思いました』って言ってました。
『もう会社には怖くて行けません』て。」


「人間て、怖いな」、か。。。
「怖くて行けません」か。。。

「腹が立った」でもなく、「悔しい」でもなく、
「怖い」なんだ。。。
通常なら他者に憤り、怒りをぶつけるべき状況を、
「怖い」と表現した穣太君に、
やはり私は、受け取り方や反応が、
普通と違う人なんだろうな、と思った。

細川さんが続ける。
「私、全然心の準備がないところにやって来たので、
話の流れで、ぷらさんの事、
穣太君と一緒になって悪者に仕立て上げちゃいました。
申し訳ありません、いつも汚れ役ばかりお願いして…」

いや、それは全然構わないんだけどさ。
穣太君が自分の意思で退職を決意したというのなら、
ある意味、現場的には一番の円満解決という部分もあるし…
ま、結果としてはそれがベストだったんだろうか。。。

「でも、ぷらさーん、穣太君が来たって他の人に聞いて、
『あ、ぷらさん、何か仕掛けたな?』って、私すぐに思いましたけど、
今日やるなら今日やるって事前に言ってくれないと、
こっちも心の準備ってものが…」

あぁ、ごめん、ごめん。

細川さん、「仕掛けた」わけじゃないよ。
そのつもりなんて全然なかった。
が、長い経緯があり過ぎて、
ひとつひとつを話す気になれなかった。

営業のメグちゃんてそこにいる?

「います。」

じゃね、一日不在だった今野主任が、
ちょうど今戻ってきて、今なら話が出来るから、
すぐ電話して、営業担当のメグちゃんのほうから、
正式に穣太君の事を報告するように頼んでくれない?

「わかりました。」

電話を切ってすぐに、また呼び出し音が鳴った。
亜美さんがそれを取って、今野主任のほうに走って行った。
今野主任を横目で見ると、頭に手をやりながら、
しきりに何か話しているようでしたが、
思ったより短い時間で電話は終わり、
今野主任がすぐ私の席にやって来て、
「穣太さん、辞めたのね」と言った。

「はい。私もたった今、連絡を受けたばかりです」と答えた。
その瞬間に、これで全部終わったんだ、と思った。

    *    *    *    *    *    *

「人間って怖いですね」、か。

「怖くてもうあそこには行けない」、か。

思えば、穣太君の職歴は、
ファーストフードの店員や飲食店の厨房・フロア、
そして倉庫内作業など、事務系はひとつもなく
しかも、物事を手際よくさばかなければ行けない業種ばかりだ。

察しの悪い彼が間違った指示の解釈をしたり、
ミスしたり何かができなかったりしたとき、
上司やリーダーや経営者は彼を怒鳴っただろうか?
たぶん怒鳴ったり、激怒したり、
感情的な言葉を投げつけたりはしただろう。

もしそういった慌しい職場で、
怒鳴られたり、激怒されたり、
感情的な言葉を投げつけられる事だけを、
自分への評価を知る手がかりにしていたとしたら、
全体的に人への対処が穏やかで、
怒鳴ったりキツく叱ったりしないこの職場の同僚達は、
彼にとって初めて出会った暖かい人達で、
例えどんなに冷たくされても、
その心根を疑う事はなかったのかもしれない。

事務系の一般的なオフィスでは、
人は皆感情をあまり表に出すことなく、
良識に従って行動しているけれど、
実際には、目に見えないルールや、
暗黙の了解がたくさん存在していて、
働く人は誰もがそこに、
無意識のアンテナを張って仕事をしている。

オフィス経験のなかった穣太君が、
自分の職歴ゆえに、
そういった内輪の空気を勘違いして、
「怒鳴られないから受け入れられている」
と認識していたとしたら、
それはなんか…気の毒で悲しい事だな。

ダメなやつにその場ですぐに、
面と向かってダメだ!と言う人は普通あまりいない。
思ってもすぐに口には出さずに
たいてい少し様子を見ている。
そしてストレスが高じてきたときに初めて声を上げるけれど、
それだって、どうすれば相手が傷つかないか気遣い、
ニュアンスのある表現やソフトな言い方で、
余計な争いを回避しているんだよね。

そんなごく普通の社会人としての思いやりが、
彼に大きな誤解を招き、やがて彼を傷つけてしまったとしたら、
そこに気がつく前の私達はどうすればよかったのだろう。

私は、山崎君の返した「ありがとう」という言葉が、
象徴的に思えて仕方がなく、
この一部始終を、思考回路が少し違う人達との
コミュニケーションや指導に関して、
深く再考するきっかけにしたいと痛感した。

    *    *    *    *    *    *

人間不信になって、出社拒否症などで、
当分仕事ができなくなってしまうのでは…???

私やメグちゃんの心配をよそに、昨日穣太君は細川さんに、
「次はやっぱり、
前からやりたかった音楽関係の仕事をしたいと思います」
と、淡々と語ったらしい。

私や神田君への批判も相応にボロボロ出てきたけど、
それは他の人と比較しての扱いの不公平に関するもので、
「○さんはやっていいのに、自分はダメ」みたいな感じ。
が、激高して「絶対におかしい!」という感じでもないので、
特に心配ないんじゃないですか?と細川さんは言った。
私が推測するに、
「わからない」という意味合いの話をしたんじゃないかと思う。

そうね。たぶん彼は"おかしい""変だ"と思っても、
「だから誰かを恨む」とか「憎む」という気持ちは、
薄い人なのだと思う。
それよりも自分の中に生まれてしまった"謎"に、
なかなか決着を付けられないでいるのだろう。

音楽関係の仕事、か。。。

「今時の若い人って、やりたい事と自分ができる事の、
区別がついていないんですよね。」と、細川さん。

いいんじゃないの?若いんだもの、そのぐらいは(笑)。
問題なのは、いつその現実に気が付くか?って事で。

でも穣太君は、そこに気がつく事はないかもしれないな。
そしてこの先、今回と同じような理由で
転職を繰り返していくのかもしれない。

やがていつか、自分が他の人とちょっと違うところに、
気が付いて欲しいと思う。
それからでないと、
彼の本当の幸せは訪れない気がするんだけど、
違うのだろうか。

穣太君のような人がいつか安住の職場を得て、
周囲の人達に理解されながら、
心身ともに満ち足りた毎日が送れるよう、
私は心から願っている。
本当にそんな日がくればいいね。

ほら、憲法13条でだって、
「すべて国民は、個人として尊重される。 」
と言っているじゃない?

変な人も、少しだけ普通じゃない人も、
誰かの理解を得て幸せに暮らせる事を、
願ってやみません。

    *    *    *    *    *    *

以上で、延々と書いてきた「厄介な人」はおしまいです。
一部始終をどこかに吐き出してしまいたくて、
書かなくてもいい事を書いてしまった気が今は強くしています。
文章にしなかった事もたくさんありました。
ですが、どこかの職場で実際にあった話として、
この拙文が皆さんの周りの、「厄介な人」や、
それを取り巻く騒動への理解と対応に、
役立てていただければ幸いです。

結果はどうあれ、私自身も、
職場の若い人達が何か経験し、
必ずや何かを学んでくれたと確信したいし、
それが彼らの今後の人生に、
有益なものであったと信じたいです。
お付き合いいただき大変ありがとうございました。

「厄介な人」(完) 

【過去記事一覧】~after Asperger~
・アスペルガー症候群 ・私達の困った性格 ・アスペルガーな人々 ・アスペルガーな日々 ・アスペルガーなつき合い方 ・アスペルガーな考察 ・出番です、待たせたね。1(周辺記事) ・ASをめぐる夫との会話 ・対話のチャネル ・アスペルガーな研修 ・アスペルガーな現場 ・アスペルガーな新人 ・やっぱり阿吽の呼吸ナノダ ・ASを伝えるほどに広がる誤解 ・羹に懲りて膾を吹くか…? ・彼は本当に立ち上がれるか? ・NGでも走ってみることにしたが ・読めない人 ・面接するほうのキモチ ★厄介な人(1~12) ・Mindblindness?自閉症について ・うちの亭主のメールも変(笑) ・連敗中!句読点をつけない人 ・アスペルガー症候群と犯罪 ・自閉症的なスタッフの指導 ・誉める事・評価する感受性 ・なぜ危機感にこだわるのか ・アスペルガーなユーザーサポート ・やっぱダメかな… ・その人の退職 ・お互い不幸にならないために ・この新人さんは断ろうと思う ・事前研修の私の今後の課題




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厄介な人11~指針

1011

きっと私は他人のあれこれに関しては
寛容で大雑把なほうなのだと思う。

今のように、自分の業務として、
人を指導しなければならなかったり、
現実的な判断を下さなければいけないときは、
それなりに厳しい目で相手を見たりするけど、
最近よくいる若いスタッフ達のように、
至らない誰かに対して、
それが気になって仕方ないという事はあまりないし、
そのせいでで精神的におかしくなりそうだという事もあまりない。

たぶんこの状況下でもし私が1スタッフだったら、
「いいんじゃない?出来ない人の一人や二人…?」
と、周囲の喧騒をよそに、
案外マイペースを貫いていたかもしれない。

それは、
職場に何かの資質に欠ける人がいて、
例えばその人の一番近くにいる自分が、
もし多少の負担や迷惑を蒙る事になったとしても、
嫌だなぁと思って毎日ウンザリとした日々を過ごすうちに、
段々あきらめの境地に到達して、
「だったら…」と手を変え品を変え(笑)、
相手との付き合い方のほうを模索し始めたり、
人よりそういうところにあまりこだわりのない自分が、
この際代表して?相手を一手に引き受けているほうが、
職場にとってメリットのある事なのかな?と思ってみたり、
他人の変貌を強く望むよりも、
自分のやり方や考え方をさっさと変える事で、
状況との折り合いを付ける性格だからなのだと思う。
(もちろん今なら、相手に直接きちんと働きかける事もするけど)

自分がそんな感じの人間であるものだから、
仕事をしていて何が一番のストレスかと言えば、
様々な個性や特徴のスタッフ達が起こしてしまう、
偶然/必然のミスやトラブルやアクシデントではなく、
それに対して固執的に過激な批判を繰り返したり、
人の顔を見れば「辞めさせてくれ」と、
延々主張してくる一部のスタッフ達の存在で、
そういった状況に陥った時の自分が、
常に正しい判断をしていたかどうか、
過ぎてみればいつも反省が残るし、
どんなに公明正大な大義名分を掲げてみても、
最終的に人は、自分自身が救われたいために、
何かを判断し実行に移しているように思ったりする。

班長の神田君(30代前半/男性スタッフ/仮名)は、
知識や経験が抜群に豊富で弁も立つため、
影で批判はされていても誰も彼には逆らわないし、
彼の言い分に首をかしげるところがあったとしても、
正社員(以下社員)である課長や主任でさえ、
それを毅然と指摘できないでいる現状、
私一人が異を唱えてみても、
どうしても班内のオピニオン的な主導権は彼のほうにあり、
神田君の趣味嗜好が様々な側面で
スタンダードになってしまっている部分が大きかった。

が、そこに渾身のエネルギーを注いでしまうと、
大事な事を見失ってしまうのではないか?
と自問するところもあり、
神田君に言いたい事はたくさんあったけど、
とりあえず私はほとんどの言葉を飲み込んだ。

ここで彼と、精神論的なやりとりをしている場合じゃないのだ。
今一番大切なことは、穣太君が仕事で立ち上がる事であり、
こんなところでイチイチ彼と不毛が予想される議論なんて、
している場合じゃないのよ(笑)。

    *    *    *    *    *    *

穣太君(20代前半/男性スタッフ/仮名)と面談をする少し前に、
私はメッセンジャーで班長の神田君や、
A班のスタッフ達とそれぞれやり取りをしていた。

穣太君はもしかしたら、
アスペルガー症候群などの発達障害かもしれず、
本当に見た目も能力もごく普通に思われている人が、
実はそうだったりするので、それは障害の中でも、
一番わかりにくい障害と言われている(らしい)。

万が一そうなら、
彼の何かひとつ合格点に達しない仕事ぶりや、
人をカチンとさせる言動の数々には、
それなりの理解が必要だと思う。

今野主任という思わぬ伏兵の登場で、
穣太君に続けてもらうのかお断りするのか、
俄かには方針を定め難くなってきてしまった今、
私は、どっちに転んでもこれ揉める事の無いよう、
周囲をある程度納得させる必要があると思った。

穣太君は先ほど、同じこの部屋で私と話し、
「だったら辞めます」と言って帰って行ったけど、
一時的な感情でタンカを切っても、
明日になればまた普通に出社してくるのか、
それとも本当に退職を考え始めたのか、
私には全くわからなかった。

穣太君は面談などをしても、
自分の心情をつぶさに語らない。
今の気持ちをその都度問うても、
「ダメだと思います」「悪いと思います」と、
言葉少なにあっさり総括しちゃうので、
腹を割ってじっくり本音で話そうと思っているこちらは、
いつも話が淡々と終わってしまい、
ちっともイメージする面談にはならない。

言葉の端々や表情、しぐさなどから、
真意を探ろうと思って対面しても、
自分にとっては情報が少なすぎて、
一向に何をどう感じているか読めないのだった。
掴みたくても掴みようのない印象が、
いつもそこにあった。

昨年の春、面接で初めて会って業務説明をしたときに、
「うわ!来た、コレ!こういう仕事がしたかったんですよね~」
と、喜々として語った無邪気な様子から、
私達は場をわきまえないと人と思いつつも、
将来性のある意欲的な若者と判断したんだけれど、
その"場をわきまえない"のが、
若さゆえなのか、発達障害とか自閉症とか、
器質的なところに由来するものなのか、
そういったところまで短い時間で判別するのは、
不可能に等しいと思う。

今となってはその傾向がある人だと確信するので、
穣太君以外のスタッフやユーザーに対しても、
批判ばかりを繰り返している神田君が、
よりいっそうムキになってまくし立ててくる気持ちは、
よくわかるんだけど、それにしちゃこの現状は、
誰も彼も感情論が先行していないかい?

    *    *    *    *    *    *

仕事がうまくこなせないという事実と、
その人の人格否定は、本来別のものだ。私はそう思う。
もしそれが障害によるものなら尚更だと思う。

私は一人一人に、
「皆さんが嫌っている穣太君のキャラクターは、
生れ付きのものかもしれないよ。
持って生まれてしまった仕方のない欠点にばかり、
批判の矛先を集中させても始まらないんじゃないの?
それよりも、そこがまず変わらないものとした上で、
どうすれば彼が仕事で成長していけるか、
そっちを真剣に考えた方がいいと思うんだけど。」
とメッセンジャーを投げた。

そして察しがよく、信頼するに足り、
偏見を持たずに理解してくれそうな一部のスタッフには、
「高機能自閉症・アスペルガー症候群の理解と援助」
というタイトルのこちらのサイトのURLを送り、
「冒頭の難しい説明は飛ばして、
[行動特徴・診断]以下の見出しだけ拾って読んでみて。
と、お願いした。

その中には神田君も含まれていた。
神田君はある意味困ったヤツで、
女性スタッフ達には「穣太君に似ている」と言われ始めていて、
私も内心、彼の延長線上にいるのでは?と思うフシもあるが、
神田君は現象としての物事の把握や納得には才がある。
それを私は評価していたりもする。

さて、彼らは仕事が終わったあとに、
直接口頭で感想を伝えてきて、その内容は、
「もう、俺、まさにこれだ!と思いました」
「穣太君に当てはまり過ぎていてびっくりした。」
「彼ってもししかして、これの典型例ですね?」
など、一様に心底納得が行った感じのものだった。

私は以前にも今回と同じような話が起こったときに、
信頼の置ける何人かの人達に、
何度か同じ話をしているのですが、
懐疑的に首をかしげられるばかりで反応が鈍く、
これほど肯定的なリアクションが得られたのは、
今回が初めてだった。
だから(この表現が妥当か疑問ですが)
本当に報われたような気がした。

ただ一人由香ちゃんだけが、
「病気だから我慢しろって言うんですか?」
と、トゲトゲシイ即レスを返してきた。

由香ちゃん、違うよ。そういう事じゃないよ。
慎重に言葉を選んで長めのレスを返したら、
メッセンジャーが「送れません」とエラーになった。
後ろを振り向き席を確かめると、
ノートパソコンの蓋が閉じられ本人も居ない。
再び自分のPCに向き直った私の前を、
当の由香ちゃんが険しい顔つきで足早に退社していった。

「"病気"じゃなくて"障害"です。」
それさえ訂正する事ができず私は悔やんだ。

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2007.02.12

厄介な人10~再確認

1011

参ったな…どうしようかな…

職場の契約スタッフで入ってから9ヶ月経っても、
なかなか戦力にならない人がいて、
班長や同僚達の意見を聞いた課長と内海主任は、
彼、穣太君(20代前半/男性スタッフ/仮名)は、
仕事のスキルばかりでなく、
社会性や常識や、仕事に対する姿勢の面でも、
大いに問題があって皆さんを困らせていると判断し、
今後一ヶ月以内に周囲が納得するような改善が見られなければ、
就業をお断りするという判断を下した。
(だが本来穣太君は純真で気立てのいい青年である)

某企業の特定商品の調査系ユーザーサポートの現場で、
契約会社側のスタッフ管理業務と、
現場総括リーダーを兼務している私は、
様々な場面で調整や関与の手を下しながら、
穣太君の再立上げ研修も引き受け、
10日間彼につききりで彼を指導してきたけれど、
すでに同僚達は彼と仕事をするのを拒否していて、
例え穣太君が万が一飛躍的に成長したとしても、
快く受け入れてくれる仲間も居場所もすでにない事を知った。

こうなった限り穣太君には辞めていただくのが、
誰にとっても一番いい結論に思える。
穣太君という人は頭がよく、
見た目も、話した感じも今時の普通の若者だが、
じっくり接してみると発達障害の特徴を持っており、
周りの空気が読めない人で、
自分のどこが周囲に嫌悪されているのか、
よくわかっていないし、
班長や同僚達がたびたび
険悪なムードのサインを送っているのに、
一向にそれに気がつかず、
自分は今も周囲に受け入れられていると、
思っているようにも見えるし、
自分の業務スキルに関しても、
さほど強い危機感を抱いているようには感じられない。

こういったスタッフの進退の絡む話は、
毎度揉めに揉めるのを経験上知っている私は、
依頼された再立上げ研修の期間を、
彼を育成するためではなく、
彼が納得して辞めて行くため道筋を引く研修に切り替え、
今の彼の状況を本人によくわかってもらうために、
どういった指導をすべきか考えて、
それなりの研修に着手していた。

ところが、この話に途中から参加してきた
別な主任が、「そんな冷たい話はないんじゃないか?」
と今の流れに強く異を唱え、(こういっては大変失礼なのですが)
平和的な解決に向かって動き始めていた私や周囲の人達は、
今後どうしたものか、先が全く見えなくなってしまった。

そればかりではなく、件の主任が状況をあまりわからずに、
穣太君を大いに励まし、精神的にフォローし始めたので、
スタッフの間には不信感や妙な不安と絶望が広がり始めた。

ここまでが今までのあらすじです。

    *    *    *    *    *    *

さて、どうしたものか。

私は穣太君の再立上げ研修が来週で二週目に入るのを機に、
もう一度よく考えてみた。
やめて欲しいと班員全員が思っているスタッフを、
今野主任の言う通りに長い目で見る事にして、
続行を目標にした研修が例えうまくいったとしても、
ベテランのスタッフの中には、
(それが発端かどうか不明だが)
転職を考えている人まで二人出始めている事もあり
みんなの多大なストレスを思えば、
再び同じ班に戻すわけにはいかない。

穣太君がこの仕事を好きなのは、
彼が調査している横顔からよくわかった。
ツールを使ったりコマンドを打っている時の彼は、
どこか喜々としていい表情をしていた。
だから続けたい気持ちはよくわかる。

けれど一方で、私はスタッフ達から、
「穣太君は仕事を遊び場と勘違いしているところがあって、
年恰好の近いほかのスタッフ達と話をするために、
出社してきているようなところがある」と、聞いていた。

元来人嫌いでは決してなく、むしろ人好き。
それが他人の都合をあまり考えずに、
一方的に自分の好きな話だけを延々と続けるので、
急ぎの調査を抱えたときや苦情対応で消沈しているときなど、
各スタッフ達はそれを大いに迷惑と感じていて、
そういった他人の気持ちを刺激し逆立てるような
言動の一つ一つが今や班の大きなストレスとなって、
一部のスタッフなどは自分の気持ちを表現するために、
わざと挨拶をしないなど強硬手段に出始めているのだった。

本来A班のメンバーは、分別のある優秀なメンツ揃いである。
だからちょっとやそっと癖があるぐらいでは、
こんな風に険悪なムードになる事は無かったのかもしれない。
あの彼ら、彼女らが、ここまで頑なに拒否するからには、
私の知らないところで穣太君は相当同僚に迷惑を
掛けていたのだろうと思う。

現実的な言い方になるが、
契約スタッフは契約会社が企業に出向させている非正社員で、
直接雇用ではない。
よって人選する権限のない企業側は、
契約会社が上げてくるスタッフを信頼するしかなく、
万が一、企業の要求するスキルに満たないスタッフの場合は、
スタッフ交代の要請が出てくるのも、
ある意味妥当と思われる。

契約会社としても人に対して請求と支払いが発生する限り、
いつまでも戦力にならない人を置いたまま、
他のスタッフ達と同じレベルでの請求を続けるのは、
信頼関係に支障をきたすし、企業としての評価も落としてしまう。

けれど、実際の現場レベルでは、
管理側の正社員も歩兵に相当する契約スタッフ達も、
同じ組織の一員として清濁併せ呑みながら、
そこそこにうまくやっており、
特に私の職場のように、契約スタッフの自主運用に近い形で
日々の業務が進められていると、
個々のスタッフの良し悪しが、
ダイレクトに企業の上部に伝わる事などほとんどなく、
最終的に人の進退は、受け入れる班長や同僚達など、
受け入れスタッフ側の感覚に委ねられてしまう。
そのサジ加減と采配が非常に微妙なところである。

    *    *    *    *    *    *

さて、今の研修をそのまま続けていいものかどうか、
少し迷いが生じてしまった私が休憩室に一服しに行くと、
(最近すっかり復活してしまった…)
ちょうど居合わせた別な班で班長をやっている
レイちゃん(20代後半/女性スタッフ/仮名)が、
話し掛けてきた。

「ぷらたなすさん、穣太君って今後どうなっちゃうんですか?」

穣太君の話は、班長ミーティングでも、
共有すべき話題としてマメに進捗を上げていたし、
現在やっている穣太君のメール研修は、
なるべく本番と同じように、質問も回答も、
関係者全員に配信される形でやり取りしていたので、
レイちゃんも成り行きをじっと見ていてくれたのだと思う。

「メール見てる?どう思う?」

「はっきり言って厳しいんじゃないですか?
冷たいようですが、ダメなものはやっぱりダメですよ?
そういうのって、やっぱりしょうがないと思います。」

「だよね…でも、ああ見えて、研修してから、
確実に伸びてはいるんだよね。」

「ああ、それは、すごくわかります。
文章とか、最初の頃とは全然違いますよね。
でも例えそうだとしても、
もう誰も穣太君とは仲良くしたくないっていうか…」

「そうなのよね。。。」

レイちゃんはグループ一番の情報通なので、
たぶん私には聞こえてこないスタッフさんの本音を、
誰よりもリアルタイムで身近に聞いているはずだった。

「ぷらたなすさん、私、どうしてもわからない事があるんですよ。
穣太君って仕事続けたいって言っているんですよね?
でも、仲間達は皆嫌だって言っているんですよね?
ぷらたなすさんもこの前の班長ミーティングで、
もし続行する事になっても、
今の班の中に戻すつもりはないって言いましたよね?
そこまでみんなに毛嫌いされていて、
それでも"続けたい"っていうのは、
どういう心理なんでしょうかね。。。」

「さあ…でも穣太君は仕事自体は好きなんだよね。」

「ですけど、だからって…」

レイちゃんは肩をすくめて去っていった。

    *    *    *    *    *    *

この言葉がヒントになって、私は考えてみた。
人の言葉の裏にある真意や、
ニュアンスや含みをあまり解さないタイプの人である。

私、思い直してみたら、
もし穣太君がこのまま仕事を続けられることになっても、
もう前と同じように今いる皆さんの中には、
戻すつもりがない事を、彼にきちんと伝えていなかった。
それは誠意に欠けると思った私は、
もう一度穣太君ときちんと話して、
そこへの了解は取り付けるべきだと思った。

そしてもう一点。
私が穣太君や今後のためにしなくてはいけないと
自分自身で心に決めている事があった。

それは社会的な行動が取れなかったり、
常識やマナーや礼儀に欠けていると思われている、
穣太君の嫌悪されている資質は、
実は生れ付きのもので、
本人の意図するところではないと皆にわかって欲しかった。

アスペルガーなどの発達障害の可能性を感じるからといって、
戦力にならない人を温情で庇護できるほど、
現実の職場は甘くない。
できないものはできないのだし、そこは厳正にジャッジすべきだ。

ただし、それと穣太君の人格が否定される事は別物で、
私は仕事的な見極めと、先行してしまっている感情論を、
切り離す努力を自分がすべきだと思った。

それにしても、見通しが不透明なままなのに、
今野主任が熱心に穣太君を励ましているのには
正直困った。
これで万が一よろしくない結果となった場合、
一番傷つくのは穣太君自身じゃないか。

私は内海主任のほうに相談し、
このままでは結果次第で穣太君をひどく傷つけてしまうし、
穣太君がもしすっかりその気(続行)になってしまっているのなら、
今の状況では、穣太君に
スムーズに辞退を勧めることは出来ない上に、
現状、正統なジャッジをしにくい流れとなっている。
そう訴えた。
それは内海主任も全くの同感だった。

私達はよく話し合って、もう一度穣太君と皆さんに、
今の状況を包み隠さず話し、
理解を求める事で一致した。

    *    *    *    *    *    *

夕方、まず最初に穣太君を人気のない研修室に呼ぶ。

「今日ここに来てもらったのはね、
穣太君にもう一度意思確認をしようと思ったからなの。
穣太君は今、自分が仕事で今でも一人前にならなくて、
企業さんに、この一ヶ月が最後のチャンスと
言われている事は知っているよね。」

返事がなかった。
今に至ってもそう受け取ってはいなかったのだろうか?
私は思いながらも続けた。

「この前、課長からも言われたと思うけど、
穣太君が同じ班の皆さんに、
困った人と思われているのは、
仕事の面だけじゃないのね。」

「…」

「人のいう事をなかなか聞けなかったり、
相手の気持ちを考えないような行動をしたり、
そういう所に、先輩達は何度も腹を立てていて、
今は穣太君と一緒に仕事したくないって
みんなが言っているんだよ?」

「…(絶句)」

「だから私は穣太君がこの先仕事を続けられる事になっても、
もう先輩達の中に戻す気はないし、
今までと同じ仕事はお願いしないかもしれないし、
それでも穣太君は、この先研修を続けたいですか?」

「あぁ…だったら辞めます。」

意外なほどあっけなく穣太君は答えた。
ならば今までの執着はなんだったんだろうか。

「あの…俺と一緒に仕事したくないって、
男の人達もそう言っていたんですか?」

私は一呼吸置いたあと、「そうだよ」と、言った。
そして事前にそれぞれから聞き取っていた、
穣太君への具体的な不満を、
(ここは少し迷ったけど)名前付きで伝えた。

「穣太君、穣太君て小さい頃お父さんやお母さんに
すごく怒られたりした?」

「はい。」

「学校で苛められた事はある?」

「それはないです。」

「じゃ、今までに経験してきた仕事で、
わけもわからずいきなり怒られたり、
『もう来なくていい』と突然言われた事はある?」

「あぁ、いえ、ないです。」

彼、さすがにそこではウソをつきました(笑)。
履歴書にはないけど、穣太君は山崎君に、
「入って二日目でクビになった話」をしている。

「そう。もし私の話を聞いて思い当たる経験があるのなら、
もしかして穣太君は自分では気がつかないけど、
みんなが当たり前と思うような事を当たり前と思わなかったり、
普通にやっているだけなのに周りに誤解されてしまったり、
生れ付きの性格で、少しだけそういう所があるのかもしれないよ?

私は穣太君がそれほど仕事ができない人とは思わないけど、
ここの仕事には向かないかもしれない。
ここみたいに密接に人と関わる仕事ではなく、
自分ひとりで作業をするような仕事のほうが、
向いているのかもしれないね。

でも、今、穣太君は、客観的に見てそういった状況だから、
今後の事をもう一度じっくり考えてみて」

私はそう締めくくって話を終えた。

「はい。」と消えそうな返事をして、
彼は研修室を出て行った。
歩き方がふわふわとして、表情もうつろな感じがした。

【過去記事一覧】~after Asperger~
・アスペルガー症候群 ・私達の困った性格 ・アスペルガーな人々 ・アスペルガーな日々 ・アスペルガーなつき合い方 ・アスペルガーな考察 ・出番です、待たせたね。1(周辺記事) ・ASをめぐる夫との会話 ・対話のチャネル ・アスペルガーな研修 ・アスペルガーな現場 ・アスペルガーな新人 ・やっぱり阿吽の呼吸ナノダ ・ASを伝えるほどに広がる誤解 ・羹に懲りて膾を吹くか…? ・彼は本当に立ち上がれるか? ・NGでも走ってみることにしたが ・読めない人 ・面接するほうのキモチ ★厄介な人(1~12) ・Mindblindness?自閉症について ・うちの亭主のメールも変(笑) ・連敗中!句読点をつけない人 ・アスペルガー症候群と犯罪 ・自閉症的なスタッフの指導 ・誉める事・評価する感受性 ・なぜ危機感にこだわるのか ・アスペルガーなユーザーサポート ・やっぱダメかな… ・その人の退職 ・お互い不幸にならないために ・この新人さんは断ろうと思う ・事前研修の私の今後の課題




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厄介な人9~激励しないで

1011

課長(40代前半/男性社員)と
主任(40代前半/男性社員)が同席している
班長ミーティングの場で、
私は皆を前に自分の間違いを訂正し、
A班長の神田君(30代前半/男性スタッフ/仮名)に謝った。

A班に昨年の5月に入った
穣太君(20代前半/男性スタッフ/仮名)が、
なかなか一人前にならないのは、
現場での研修や育成に問題があるように思っていたが、
実際はそうではないと感じた旨をはっきり述べた。

今の班長ミーティングは、
課長と主任の立会いの元に、
各班の班長達が自分の班の悩みや問題点を、
率直に意見交換し合う場となっている。

ここではかなりの極秘事項や特定の人の話が、
結構本音で語られる。
穣太君の話題はA班の最大懸案事項だったので、
私も神田君も班長や社員の前で話題を共有したかったし、
特に私は今後のスタッフの育成や研修に一石を投じ、
同時にスタッフ一人一人の個性を理解する上での
参考にして欲しかった。

「で、どうなんですか?研修してみて。
ぷらたなすさんの印象としては?」
課長が尋ねた。

「はい。率直に思ったままを申し上げますと、
穣太君が仕事で全く戦力にならないというわけでは
ないと思います。
ですが、皆さんが一番気にされている、
彼の社会性やマナー、礼儀、常識などは、
この先も大きく変わることはないと思います。

研修担当として何年もスタッフさんと接していますと、
頭もよく業務内容もきちんと理解しているのに、
お客様と話がかみ合わなくて苦情になったり、
場の空気が読めずに、
本人が意図していなくても周りを激怒させてしまうような
スタッフさんがたまにおります。
そういう人達って、タイプとして実際にいるんです。

ですが、私が思うに、そういう方達って、
やる気がないとか、努力が足りないとか、
そういう精神論的な話ではなくて、
髪の色や肌の色と同じように、
もって生まれた体質のように思うんですよね。

もしそうなら、それは指導によって簡単に直るものではないし、
むしろ私達と同じような感覚を求めてイライラするよりも、
あきらめてあげたほうがいいように思います。

えー、結論を最後に申し上げますと、
穣太君が皆さんと同じ仕事を
皆さんと同じレベルでこなせるかどうか?と言えば、
それは私はできないと思います。

なので、万が一就業の続行という事になっても
すでにスタッフさん達が彼との関わりを拒否している事もあり、
穣太君は皆さんとは離れた席で、
皆さんとは違う業務をやってもらうのが
一番いいと思います。

穣太君は柔軟な判断力や臨機応変なお客様対応よりも、
マニュアルに沿った作業を、
数をこなして処理するのに向いています。
実際非常に手際がいいし、飲み込みが早いし、
そういった形でなら十分戦力になってもらえるのではないか
と、思います。」

穣太君と私の研修課題の模擬メールは、
各班長たちにも飛んでいる。
そのやり取りを見た人達はたぶん同じ結論に達すると思われ、
前回と違って、私の発言に一同が頷くような雰囲気があった。

が、そこで今回初参加の
今野チーフ(50代前半/男性社員/仮名)が異を唱えた。

「あのさー、俺さー、思うんだけどさぁ、
ぷらたなすさん、自分のところのスタッフでしょ?
言っていいの?この場で。…そんな事?
俺さー、今の聞いてて寂しいし悲しくなったなぁ

今の話なんてね、俺なんてしょっちゅうよ!

(個人的なツボにハマり爆笑を押さえるのに苦労する(爆))
(そうそう、主任も前からそういう所があるの感じてたのよ)
(ゆえに今野主任、場の空気を全く無視して以下に続く(笑)…)

俺なんて今でも、『今野さんっ、何ですかこれは!』って
もう怒られてばっかりよ。でも、誰だってあるんじゃないの?
誰だってそういうところはあるんじゃないですか?

だからさぁ、一ヶ月間のラストとかチャンスとか
何日でジャッジとか、そういう切ない話はしないでさぁ
もっとこう、みんなで頑張って育てていこう!って
そんな風に長い目で見てやらないと、穣太君可愛そうよ?」

「だってそうでしょう?俺この頃見て思うんだけど、
誰か彼に声を掛けてやってる?挨拶してやってる?
彼、ご飯とかどうしてんの?
誰か一緒に誘ってやっている人…居るの?
え?どうなの?神田君、どうなの?」

「一人で食べてると思います。」

「でしょう?それでさぁ、彼今、とても寂しいと思うよ?
それを、例え続けても一緒の仕事はさせないとか、
離れたところで違う業務をさせるとか、
人を指導する立場にあるぷらたなすさんが、
そんな事言うなんて、俺、正直言って寂しいなぁ…

仕事なんて誰でも長い間かかって覚えていくものなんだから、
一ヶ月で結果を出せなんて、無理に決まっているじゃない?
そんなの俺には、虐めているとしか思えないんだけどな。
そんな事言わずにもっと温かい目で彼を見てあげてよ。
長期計画でさ?」

私はこの今野主任の発言には、
心から賞賛の拍手を送りたかった。
主旨に賛同したからではない。

他人を顔色を見たり変に遠慮したりして、
相手に対してなかなか堂々と自分の意見を言えない
社員とスタッフばかりが大勢居る中で、
例え場の空気を読んでいなくとも、
堂々と自分の考えを大きな声で主張し、
あっという間に座の主導権を奪取してしまった主任に、
いつになく熱くて強いリーダーシップを感じたからだった。

たぶんその根拠になっているのは、
自分も苦労して来たという
実体験に基づく(たぶん^^;)穣太君への共感と、
人に対して常に誠実でありたい
今野主任の揺ぎ無い心情に他ならず、
それがあまりにも正論で力強い説得力があったので、
課長も主任もスタッフの班長達も、
誰も何も言えなくなってしまった。

が、はからずもこの一瞬で、
同じ結論に向かってまとまりかけていた一同の気持ちと、
ここから先の物事の進め方が全く見えなくなってしまった(笑)。
ある意味、爆弾とも思える鶴の一声だった。。。

が、である。
内海主任に請われて初めて
このミーティングに同席した今野主任には、
それまでの経緯など全く見えていない。

「長い目で育てるとおっしゃいますが、
A班のスタッフ達は、穣太君の指導はしたくないと言っていますし、
もう一緒に仕事したくないと思っている雰囲気もありまして…」

「だからさ、礼儀とかマナーとか言うんだったら、
俺、そういうのはやりますから。
俺、直接彼と話してもいいよ?
前も少し話したんだけど、『頑張ります!』なんて、
彼、ものすごく一生懸命よ?
みんなわかってんの?そういうところ?

まずはさ、育てるところに目標を置いて、
ここは一つ、皆さんでフォローしてやってくださいよ。ね。
ぷらたなすさん、ひとつ頼みますよ、お母さん、頼むよ。ね。」

「はい」

    *    *    *    *    *    *

いえね、アタシはいいんですよ。
むしろ楽です。
今野主任が企業としての判断として、
"なんとしても育てろ"と言ってくださるのならば。

スタッフだって皆さん大人なので、
業務として企業からお願いされた事ならば、
不満はあっても割り切ってお付き合いしてくれるかもしれません。

が、そうやっているうちに、
神田班長が突然「転職を考えている」なんて言い出してくるし、
前原君も更新確認のときには来期OKだったのに、
契約書取り交わしのときになって、
「就職活動を始める」なんて言い始めるし、
もうなんだか穣太君の事ではみんなウンザリと、
班がすっかりゴチャゴチャしちゃって、
どう見ても彼には就業をご辞退いただくしか、
収拾がつかなくなってきた。

と・こ・ろ・が。

そんな周囲の複雑な思惑をよそに、
今野主任ったら、毎日穣太君に話し掛けたり、
一生懸命彼を激励し始めたんだよね。

あらららららら…

おまけになぜか突然上山さん(30代前半/男性スタッフ/仮名)が、
休憩時に穣太君を昼ご飯に誘いに来るなど、
なにやらあちこちに今野主任の息がかかり始めている模様。

え…それじゃ、一ヶ月のラストチャンスの話はどうなるの?
2/22のジャッジの話は消えちゃったの?
これじゃ穣太君じゃなくたって、
仕事を続けさせてもらえそうだって、
思い込んじゃうよ?

今私はかなりの時間と手間ヒマを掛けて、
2/22までの研修カリキュラムと手順を練りこんでいるのに、
私はこの先どういった方向性で進めていけばいいのか、
全く前が見えなくなってしまった。。。orz

そればかりではない。
A班のスタッフ達の間には、「マジかよ?」といった驚きと、
不安や不信感と、"結局何も変わらない"という絶望が、
広がってきたように思う。

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厄介な人8~私の結論

1011

その日のうちに何度か数人と話し合いをして、
今からの穣太君の再立上げのための研修は、
メールを主体にすることにした。

きちんとメール回答ができるのは
それがシフト入りできるかどうかの、
ひとつの見極めポイントでもあるからですが、
質問と回答がともに文章になって残るので、
欠点や正誤をその場で指摘しやすく、
間違いが見つかったときはすぐに言えるし、
穣太君も納得せざるを得ないのではないかと思った。

今大切なのは、まず本人が自分のレベルに
客観的に気が付く事である。それがなくては始まらない。
指導は由香ちゃんではなく、私が担当する事になった。
本当は兼ねてからそうしたかったのですが、
あいにく1月は下旬まで研修が入っており、
手を上げたくてもそれができずにやきもきしていたのが本音です。

ところで、本当はメール回答だけが大事なのではない。
お客様は通常、「値段について知りたい」などと、
ストレートな聞き方はあまりして来ない。

「社員が増えるのでスペックを上げたい」とか、
「今使っている商品は機能に不足があって困っている」とか、
まずは現状の不満を訴えてくるところから始まったりするので、
担当者はそれを改善する提案として上位商品を紹介し、
次に値段とご注文の方法を提示できればいいのですが、
人の言葉の裏側を読み取れない人は、
お客様の真意がわからずに、
「一度購入した商品のスペックを変える事は不可能です。」
と言ったり、ひたすらお詫びするだけで対応を終えたりする。
そんな融通の利かない電話回答やお客様対応をされて、
頭に来た経験はないだろうか?

しかも担当者の誤解や勘違いで、
有料のものを無料と言われたり、
できないものをできると言われて、
お客様が金銭的な損害を蒙った場合は、
必ずと言っていいほどトラブルになるし、
お客様だけではなく契約企業にも大きな迷惑を
掛けてしまう事になる。

だから私達は、回答に自信のない事柄に関しては、
用心深く何度も何度も確認する。
ホームページをつぶさに覗き、マニュアルもよく読む。
なので、そういった周囲からの助言を、
受け入れることができずに、
いつまで経っても自己判断の固執から抜け出せない人は、
結果に対しての想像力に欠ける人であり、
どんな原因がそこにあったとしても、
結果としては「使えない人」という事になる。

また調査対応はそれ以上に聞き取り能力を必要とします。
通常、お客様は一定の思い込みがあって、
原因に関係すると自分が感じている事としか話してくれないので、
ときにはこちらから見れば全く関係のない事を気にして、
その事ばかりを延々と説明してくる時がある。

なので、それをそのまま真に受けて推測で回答をしたり、
詳しそうなお客様に依頼されるまま、
何の疑いもなく特定の調査を進めてしまってはダメ。
必ずそれが真実かどうかを、
問診で切り分けていかないといけないし、
オペレーションや実機検証で確認が可能なものなら、
必ずそれを行って自分の目で、
本当の事実を特定していかなければならない。

皆さんの話を総合すると、穣太君はたぶん、
教わったたくさんの業務知識を
お客様対応に生かすためのアイデアやスキルがなく、
受け取った情報と自分の思考が、
全く連動していないのだろうと思われた。
だったら、そこがうまく結びつくような
手助けをしてあげればいいのかな。
そのためには、様々なお問い合わせを内容ごとに区分し、
ボールペンの先で質問のYes/Noを辿っていけば、
だいたい間違いのない結論にたどり着くような図を作り、
最後の作業だけを正確にこなせばいいようなものを、
提示してあげればいいのかな?と思った。

    *    *    *    *    *    *

再立上げ研修中に、私は自分で確かめたい事があった。
それは、彼がアスペルガー症候群など、
何かの発達障害なのではないか?という事。

私は医師や専門家ではないので、
自己判断で他人をそのように断じる事などできない。
けれど、ここ数年間、様々なスタッフ達と関わって感じる事は、
彼ら・彼女らがそういった診断をされるかどうかではなく、
似たような器質を持つ同じタイプの人達として、
自分達のような普通の一般会社の中にも、
普通にたくさんいるという事実だ。
学歴や職歴や社会経験の有無はあまり関係ない。
難関大学を卒業し素晴らしい経歴の持ち主も、
穣太君のようにブルーカラーの経験しかない若者も、
その特徴のある人は、一様に似たようなミスや
びっくりするような思い違いをよくする。

そしてほぼ100%、彼ら・彼女らは、
仲間達の大きなストレスと不満となっており、うちの職場で、
「やる気」や「常識」をことさら強く異常に非難されている人は、
たいていそうなのじゃないか?などと、
短絡的に思ってみたりする事がある。

皆さんの話をまとめて自分なりに考えると、
穣太君はたぶんアスペルガー症候群か、
そういった発達障害の特徴を持った人に違いないように思う。

けれど今までそうだと思ってきた人達のように、
言葉を交わしてみて話が大きく食い違ったり、
噛み合わないような事は自分としてはまだなく、
「その辺でちょっと待っててね」と言っても、
「"その辺"ってどちらでしょうか?」
「"ちょっと"って何時までですか?」
と尋ねるような事もなかった。

コミュニケーションは普通に取れている気がするし、
意思の疎通にあまりずれもない。
場違いな言動も表面的には感じられない。
他人をムッとさせてしまうところは多々あるけれど、
前ぽんのように、「一体、今、なぜ、それを?」
と、誰もが首をかしげるような、
あまりにも場にそぐわない行動は見たことがない。
だけど、皆さんの話を聞いた限りでは、
特徴はものすごく出ている気がする。

一昨年、アスペルガー症候群など、発達障害の事を知った。
頭もよく外見も話し方もごく普通の人なのに、
「こんな簡単な事がなぜできないのだろう?」といった事が、
言っても言ってもなかなかできず、
あまりにも人と成りが普通であるがゆえに、
自分達と同じ思考回路を持っていると思われてしまい、
職場ではすさまじいぐらい辛辣に批判されている彼ら・彼女らは、
実は一番障害に見えない障害者と言われている、
発達障害である可能性がとても高いと思った。

そう感じてからは、発達障害の特徴を持つ人が、
どれだけ職場のストレスを増大させるか痛感していたので、
なるべく面接で見極め、(冷たいようですが)
できるだけ職場に入れないように、
アンテナを張っていたつもりだったのですが、
まさか穣太君にその傾向があったとは、
全く思いませんでした。全然気がつかなかった。
今思えば、自分としては痛恨の採用だったと思う。

だから、私は彼を教え伸ばす事よりも、
本当にそうなのかを実際に自分の目で確かめたかったのだ。
こんな事を言ったら専門家の方に激怒されるのはわかっているが、
そのタイプの人は、最初はそうと気付かなくても、
接しているうちにあるとき突然、「もしや…」と思う瞬間がある。
どこでそう思うのか、自分でもよくわからない。
潜在的に分析をし続けている私の計算機が、
長い継続計算の末に、あるときポンと計算結果を出すのかなぁ…
そんなに時間をかけずに、すぐに結論をはじき出してくれよ、
と言いたい。

だから、本音を言うと、彼と直に長く接してみて、
自分にその瞬間が訪れるかどうかを、
私は確かめてみたかったのだ。
事前研修でも昨年のフォローアップ研修でも、
私がそう感じる事はなかったのですが、
今度は疑いを持ってその気で接してみる事にする。

    *    *    *    *    *    *

そしてジャッジのための再立上げ研修を始めて、
二日目に私にその「もしや…」がやって来た。

私は穣太君に、
「今まで教わった事の中から、お客さんと同じような感じで、
課題の模擬メールを出すから、頑張って誰にも聞かずに
ギブアップするまでは自力でやってみてね」
と、お願いしていましたが、
ちょっとした打ち合わせのため席を立って戻ると、
穣太君は契約社員の千葉さんの席に近寄って、
PCの画面を二人で指差しながら、
なにやら教えを受けているではないの!

ん???

「あれれれ?穣太君、自力でやるって約束じゃなかったの?
もしかして千葉さんに何か教えてもらっている?」

「いや、教えてもらってはいません。
そうじゃなくて課題とは全然関係のない、
仕様に関する質問をしていました。」

あとで、千葉さんに確認すると、
それは本当だったらしいのですが、
それにしても、だよ?
この一ヶ月で判断すると言われている崖っぷちのラスト研修で、
私から「自力でやってください」と指示を受けているのに、
いくら内容が課題とは関係ないからといって、
そんな人に疑われるような事、普通はするかね(笑)??

課題メールは本番と同じように質問も回答も
社員・スタッフ全員に配信される方法でやり取りをしているので、
今私達が何をやっているのか、班の人は皆知っているんだよ?

というか、一ヶ月で答えを出さなければクビなんていう研修、
たいていの人は承諾しないかもしれない。
もし私なら、プライドがあるのでその時点で辞める。
そんな馬鹿げた事をするようなクソ会社、
こっちから辞めてやる!と、私なら思うかもしれない。
彼、本当に今の状況がわかっているんだろうか…
これが皆さんの言う「危機感がない」「仕事をなめている」
という事なんだな。確かに真剣な感じは受けない。

さて話を戻すと、そこで私は穣太君に
「今は実力を試しているので、
例え課題回答に関係のない事であっても、
研修時間中は指示のない行動はしないで下さい。」と
命令を出した。お願いではなくて命令です。
「自習以外で何かやりたいときは、
必ず私にひとこと断ってからやってください」と。

彼、不満げに何か言いたそう。
が、今まで何度も周りに「言い訳するな」と言われているので、
何か反論があっても言えないし、そこは気をつけているのだろう。
それを察して私はこう言いました。

「穣太君が私のいない間に他の人から何か教わっていると、
それがもし本当は回答と関係のない事であっても、
『もしかして回答を聞いているんじゃないか?』と皆思うよ?
私は疑いたくもなるし、周りの皆さんも、
『不正な事をしている』と悪口を言うはずです。
他人から怪しまれるような行動はしないでね。」と。

だって、すでに全員からそう思われているのに、
彼、人の気持ちをなかなか類推できない人だから、
スタッフ達の悪意や軽蔑のこもったサインに
一向に気が付かないんだよね。
私としてはできればそれに気が付いて欲しいですよ。
こうしたら、周りからはこう思われるって。

ところが、これが直らないのよ(笑)

翌日、研修をしている最中に、
とあるスタッフが有給申請書の書き方を聞きに来た。
私がそれに答えている間に、
彼、突然席を立ってツカツカと社員の五島さんのところに行き、
五島さんを自分の席に連れて来たのだ。
そしてPCの画面を指差して、また何か聞いている。

え?え?え?何?どうしたの?

「穣太君、指示のない行動は無断でしないように言ったでしょ?」

「あ、でもパソコンの調子が悪くて変なメッセージが出たので。」

「穣太君、あのね、さっきは他の人が来て中断しちゃったけど、
今は研修時間なのね。そしてこの時間の先生は私なの。
わかる?たった二人で端っこの空席に座っていても、
二人の間の責任者は"私"なのね。
だから、パソコンの調子が悪くても、
何か変なエラーが出たとしても、
まず、この場の責任者である私に報告して
どうしたらいいかを一番最初に"私"に聞いて下さい。
どうして突然勝手に五島さんのところに行ったの?」

「あ、いや、五島さんは備品担当でいつもPCのメンテをしているから、
エラーが出たのも五島さんに聞いたらわかるかな?って思って。」

「エラーって、この前新しく入れたセキュリティソフトで、
正式稼動前だから、今は起動時に何か出ても、
"キャンセル"で閉じてください、ってメールで伝達が
出ていたやつでしょ?」

「あぁ、はい。」

「それはメールに書いてあるとおりなので、
ちゃんと読んでいれば、
わざわざ五島さんを呼びにいく必要は、
ないんじゃないの?」

「そうですね。」

「私、正直言って、今、ものすごく面白くなかったのね。
研修の先生としてこうやって横に付いているのに、
いくら他のスタッフが来たからと言って、
その間にいきなり黙ってほかの社員のところに、
何か話し掛けに行くのは、
とても自分が無視されているような気がしました。」

言っても言っても直らないっていうのは、
一事が万事こんな感じなんだな…と思う。
彼はたぶん、自分の行動が人を不快にさせたり、
疑いの目で見られていたりすることに、
自分自身が全く気がついていないんだと思う。

というか、穣太君は他人の行動や動きを見て、
「あの人は何か悪い事や不正をしようとしている」
と、思う事はあるのかな?
もしかしたらないんじゃないのかな。
だから、他の人が自分をどう見ているのかも、
あまりピンと来ないのかもしれない。

あー、この人はやっぱりそっち系の人だな…と、
そのとき初めて自分の推測が確信に変わるように、
すべてがつながったような気がした。

神田君が彼のメールを評して、
「回答自体は正しい。でも間違っている。
なぜなら、北海道に行きたいユーザーに、
東京の行き方を正確に伝えてしまうようなメールだから。」
こう表現したのも、大変合点の行く説明で、
神田君という人は、仕事っぷりは評判悪いけど、
人を見る目はやはり班で一番的確なのではないかと思った。

メール回答のように、
お客様の文面が提示されているものに返信するのはまだいいけど、
何かの調査依頼を設備部門に依頼するようなメールは、
受け取った人が何をどう調べればいいのかが不明で、
文脈も少しメチャクチャ。
一から自分で作成するメールは、完全に無理のようだ。

うーん…

「ビジネスメールも書けないようは人を、
いったいどうして職場に入れてよこすんですか?
契約会社ではそういったテストを全くしないんですか?」
縫子さんに先日言われたセリフが胸に痛い。
ビジネスメールを実際に書かせるなんて事、
確かに今まではやていないよ。
それは募集広告上の業務内容を見て応募して来る人ならば、
"できて当然"の盲点だったから。
あー、次からは研修項目にがっちり付け加えないとなぁ…
そこでNGだった方をお断りする仕組みや事前説明も、
新たに練り直さないと。

    *    *    *    *    *    *

穣太君は、次の日今度は
千葉さんに直接話し掛けるのではなく、
隙を見てメッセンジャーを送るという行動に出た。
彼はたぶん、嘘はつかず約束は守る人である。
なので、課題メールのヒントを求めているとは思えないが、
メンバーから席を離されて寂しいのか、
人目を盗み?ありとあらゆる手段を使って
私以外の親切そうなスタッフや社員に(相手は選んでいる(笑))
コンタクトを取りたがる。
たぶん、今すごく不安でストレスが高まっているのだろうと思う。

けれど班のメンバーは皆、
今私達がどういう研修をやっているか知っているので、
機転の利く人は「レスをしてもいいのでしょうか?」と、
こっそり私に確認のメッセンジャーを投げてくる。

「『研修中だからやめてね』と言って、
キッパリ断っていいですよ。
言い難ければ、私に止められていると
名前を出して言ってもらっても全然構いません。」
私はそう返した。

穣太君て本当にピュアなんだよね~。
人から疑われるという事も、
そういった報告が私に上がってきている事も、
全然気が付かず、たぶん思ってもいないんだろうね。

でも、私はやっぱり穣太君には言いました。
「指示がない事はしないようにって言ったのに、
千葉さんにメッセンジャー打ったでしょ?」

「え(なぜわかるんだ?)…
でも課題メールの回答は聞いていません。」

「内容をどうこう言っているんじゃないの。
穣太君がメッセンジャーを投げた相手が困っちゃって、
『メッセンジャーが来たけどどうすればいいですか?』って、
みんな私に確認を求めてきているのを、知っている?」

「あ…」

「穣太君は今研修中で、誰にも何も聞かないで、
自力でメール回答をする練習をしているんだよね?
だから私は先輩達に、
もし何か聞かれても答えを教えないでね?って
前からみんなにお願いしてあるの。
だからメッセンジャーを受け取った人は困っちゃって、
『どうすればいいですか?』と、みんな私に聞いてくるの。
わかる?みんな、こうやって迷ったときは上の人に、
確認するのが仕事では当たり前の事なんだよ?
穣太君が誰かにメッセンジャーを飛ばしても、
研修の時間中は、誰も返して来ないかもしれないよ?
わかる?」

穣太君は的確な指示を出せば、
難しく複雑な調査も手際よくスピーディにこなすし、
決して頭の悪い人ではない。
なのに、物事を説明するときに、
彼に伝わるような表現を心がけると、
こうやって文章に書き出していても、
どこか子供に言って聞かせるような口調になってしまうのは、
どうしてだろうね^^;

    *    *    *    *    *    *

私は他のスタッフ達のように、
穣太君をそれほど「使えない人」とは思わない。
もし例えアスペルガー症候群等だったとしても、
今までそうと思ってきた人達よりは、
はるかに仕事ができるしいい素質も持っている。
それは手際のよさと抜群の処理能力で、
自己判断を介在させずに逐一指示書きを出して、
「これこれのこんな調査をこの条件で調べてくれ」と言えば
普通は時間がかかる調査も、
あっという間にやってくれそうな気がする。

それに、このぐらいの人だったら、
メール回答がなく、ひたすら電話を取るタイプの、
B班だったらたまにいるレベルで、
当然周囲は不満を持つけど、
なにせB班は一日の電話量がすごいので、
概ね間違っていない回答をしてくれるのなら、
"数を取ってくれるからまあいいか"とあきらめられながら、
なんとなく生き延びていくかもしれない。

けれど今が彼がいるA班は上位グレードの商品担当で、
名の知れた大きな企業の法人ユーザーも多いので、
さすがに言葉遣いがおかしかったり、
てにをはが間違っていたり、
話し言葉がそのまま文章になっちゃっているようなメールは、
センターとして恥ずかしくてとても出せない。

しかもこれまた何度も言われている事なのですが、
何回指摘されても、調査に必要な材料(情報)集めを
手順として最初に持ってこないので、
内容的に二往復で済むメールが
最終回答まで迷走を続け、結果5~6往復以上かかる。
しかも実際には質問者の私が回答に返信するたびに
少しずつ小出しにヒントを入れているから、
回り道でも最終的に正解に辿り付くのであって、
これが実際にユーザーからのものであったらどうなのだろうか。

「調査のためにまず材料を集めなさい」
「日時は?商品番号は?エラー№は?ランプの表示は?」

なぜ彼が、言われても言われても
言われた手順を最初にやらないかと言うと、
質問を読んで、まずパッと頭に浮かんだ、
自分なりの予測をに何よりも真っ先に返してしまわないと、
どうにも気が済まずに落ち着かないみたいなんだよね。

どうしてそういう発想になったのかわからないけど、
最初の段階で馬鹿の一つ覚えでもいいから、
「一にも二にもまず調査。そのための情報収集が最優先!」
と、神田君が早い段階で繰り返し教え込んでいれば、
そこはクリアできたんじゃないかねぇ。。。

「言っても言ってもやらない」というのは、
何かに強いこだわりがあり、
どうしてもそちらを選択してしまうからだと思う。

    *    *    *    *    *    *

フローチャート書かせたり、
なるべく自己判断をせずに仕事ができるよう図式化して、
指導を重ねるたびに、メールの中身は、
短期間でも随分と良くなってきましたが、
皆はすでに固定観念と、感情論が先立ってしまっているので、
「相変わらずひどいメール出してますね」などと言い合っている。

由香ちゃんは、
「一度失った信用は簡単には取り戻せませんから」などと、
厳然とした態度を取るんだけど、
自分達と同じ思考回路と思うからこそ腹も立つのであって、
この場合は、仕事で使えない話と、本人への感情とは、
別に考えるべきなんじゃないかと思う。

だけど社会性や常識の部分は、
たぶんこのままずっと直らないだろうな。
課長の言う通り、穣太君が職場から去るのを
すでに皆が願ってしまっているこの状態で、
彼を伸ばし育てて一体何の意味があるんだろう。

神田君が少し前に、
「この先どうするつもりなんですか?ぷらたなすさん?」
と、聞いてきたとき、私にはその意図が良くわかった。
研修には育てる研修と育てない研修とふたつの選択肢がある。
私がどちらを選ぶかでスタイルが変わる。

たぶんどんなに頑張ったとしても、
先輩達と同じ仕事を先輩達と同じレベルでこなす事は、
いまの穣太君には無理だろう。
それは結局、シフトに入れないという事であり、
神田君が早々に出した結論と同じ物なのだ。

私はそこで神田君に詫びた。
「ごめんね。私間違っていた。
穣太君てやっぱり使えないと思う。
彼、もしかしたらアスペルガーのような気がする。
だとしたら、根性を叩き直すとか、
心根を入れ替えるとか、そういう問題じゃないわね。」

「だから俺は最初っからそう言ってるでしょう?」(上機嫌)

「うん、ごめんね。この前はみんなの前でちょっとひどい事、
言い過ぎた。」

それは先日の緊急集会の事ではない。
そのあとに開かれた班長ミーティングでの話だ。
結果的に今回の件とは別物となったが、
由香ちゃんも縫子さんも、積年の班長への不満を、
四半期ごとの個人面談の場で辛辣に批判したらしく、
それを知って驚いた内海主任から
「指導せよ」とのオーダーがやっと下ってきたのだ。
(最近の私は、社員が絡まないと動かない事にしている)
だから私は急に強気になって、
班長達のいる前で、結構彼とやりあったのだった。

神田君の仕事振りは他の班長達も快く思っていなかったので、
その場で表立った批判は出なかったけど、
今回の話題が出たときに神田君には
「サジを投げるべきではない」
「工夫の余地があるのではないか?」
「最後まで最善の努力はすべき」
などの発言が相次いだ。

私には途中からそれぞれに別な話と気が付きながら、
この話を材料にして神田君を批判したい気持ちもあった。

私は、神田君の名誉のためにも、
次回の班長ミーティングでは、
皆の前で彼に詫びようと思った。

そして同時に、そろそろ今の研修を、
育てるための研修ではなく、
自分と他人の違いに気付かせるための研修に
切り替えなければと思った。

課長や主任と話し合いの末、
一ヶ月間様子を見て2/22に結論を出しましょう
「それまでに何とかもう一度育ててみてください」
という事になったけれど、
研修というのは目標が違えば、
内容もがらりと違ったものになる。

穣太君のように、
自分の不足している部分や
周囲の自分に対する険悪な空気が読めない人は、
いくら事前に了解を取ったとしても、
いざその日になって自分に都合の悪い結論が出されたら、
到底納得しないだろう。

私は穣太君は、
周囲の理解と誰かのサポートを受けながらなら、
この仕事を続けていけると思う。

が、班のメンバー全員が今やすっかり拒否モードで、
誰も彼に関わりたくないと思っている現状を思うと、
私一人がゴリ押ししても、周囲の同意は得られないだろう。
いやその前に、
私には先輩達がずっと感じてきたストレスに毅然と対処して、
かつての働きやすい職場に戻してあげる采配の必要もある。

ならばこの先の一ヶ月間は、22日の結論を待つ間でもなく、
穣太君の円満退社に向けて知恵と工夫を凝らすべきで、
そのためにはどうすべきか?
穣太君と他のスタッフ達の違いをどう理論的に説明し、
どのようにビジュアル化して納得の行く形で彼に提示するか?

自分の考えが少しずつ、
そちらの方に傾いていくのがわかった。

今までの自分のあれこれを他人がどう思ったか、
周囲のサインを読み取る事が不得手である。
もしNGの結論が出ても、彼がそれを受け入れるためには、
彼がそこに納得している必要が大いにある。
今からの時間はそこへの気づきのために使わないと、
あとから大モメする可能性もあるのだった。

結論はもう出ていた。

【過去記事一覧】~after Asperger~
・アスペルガー症候群 ・私達の困った性格 ・アスペルガーな人々 ・アスペルガーな日々 ・アスペルガーなつき合い方 ・アスペルガーな考察 ・出番です、待たせたね。1(周辺記事) ・ASをめぐる夫との会話 ・対話のチャネル ・アスペルガーな研修 ・アスペルガーな現場 ・アスペルガーな新人 ・やっぱり阿吽の呼吸ナノダ ・ASを伝えるほどに広がる誤解 ・羹に懲りて膾を吹くか…? ・彼は本当に立ち上がれるか? ・NGでも走ってみることにしたが ・読めない人 ・面接するほうのキモチ ★厄介な人(1~12) ・Mindblindness?自閉症について ・うちの亭主のメールも変(笑) ・連敗中!句読点をつけない人 ・アスペルガー症候群と犯罪 ・自閉症的なスタッフの指導 ・誉める事・評価する感受性 ・なぜ危機感にこだわるのか ・アスペルガーなユーザーサポート ・やっぱダメかな… ・その人の退職 ・お互い不幸にならないために ・この新人さんは断ろうと思う ・事前研修の私の今後の課題




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厄介な人7~直訴

1011

翌日、穣太君が普通に出社してきた。
「おはようございます」
ブスっとして不機嫌そうな声だ。

穣太君は好きな話をしているときは、
若者言葉満載で饒舌によく語り、よく笑う。
本当は調子のいい話好きな男の子なのに、
由香さんと縫子さんの間に挟まった席に移ってからは、
ずっと表情に笑みがない。

理由を説明して席替えの指示を出したときに、
彼はものすごく不安そうな顔をした。
それまでの席は年格好の近い、
前原君と山崎君に挟まれて、
たぶん彼なりに楽しく幸せな日々だったのだ。

「どうしてこっちに来なくちゃいけないんですか?」
「だって研修だから仕方ないでしょ?でも、どうして?」
「え、だって男の人のほうがいろいろ話も出来るし、
女の人だと何を話していいかわかんないし…」

縫子さんが少し前に言っていた。
「あの子はね、職場に仕事しに来ている感覚がないんですよ。
好きな話をして受けて盛り上がって毎日楽しいだけなのが、
仕事だと思っているんです。
職場は、友達探しや出会いの場じゃないんだからね?って、
もう、すごく言いたいですよ。」

そんな事を思い出しながらふと気が付くと、
穣太君が課長の席に行って何か話しているのが見えた。
課長が急いでこちらに来て、私に耳打ちした。
「納得いかないって、私のところに直訴しに来ました。
彼、なんかやばいかも。まずは職場に入れないで、
下で待っているように指示しましたから、
すぐに私と内海さん(主任)で話を聞くことにします。
ぷらたなすさんも立ち会ってもらえませんか?」

「あ、そうなんですか。わかりました。了解です。
それじゃ穣太君を案内して下の接客コーナーで、
待っています。」

「頼みます。」

課長と内海主任と私。
私達三人は、朝礼も全員無断で欠席して、
1階の接客コーナーに急ぎ、
穣太君とともに、4人掛けの応接セットに座った。

ここ最近、こういった感じの出来事が増えてきた。
「さーて、今回はどうすっかなぁ…」と思うのみで、
心は驚くほど冷静だ。
私は時間の話の切り出し方、流れ、時間の配分や
進め方の組み立てなんかをぼんやり考えていた。

    *    *    *    *    *    *

全員が揃うと真っ先に課長が言葉を発した。
「穣太君が昨日の話に関して、
納得いかないって言ってきているんだけど、
な?そうだよな?穣太君。」
(お?今回は、課長が場を回してくれるんだ!)

「はい。」涙声にも聞こえる声で穣太君が頷いた。

「それじゃ、俺達三人で穣太君の話を聞くからさ、
ここはひとつ、今、どんな風に思っているか、
話して聞かせてくれないか?」

「はい、えーと、昨日3日も休んだので、
今日は会社に行こうと思って病院に寄っていたら、
突然ぷらたなすさんから電話がかかってきて、
今日は会社に来なくていいって言われまして、
それで桜カンパニー(仮名)の事務所のほうに、
来てくださいと言われまして、
突然、あと一ヶ月で成長しなければ、
クビだって言われまして…」
段々鼻声になってくる。

「でもー、今までみんなにそんな風に言われた事はないし、
班長の神田さんも、自分が何か質問すると、
『それでいいんじゃない?』とか、
『そんな事はユーザーに決めさせたら?』とか…

それに電話の中でぷらたなすさんには、
3日も休んでいるので、みんなが出社拒否症だと思っているとか、
そんな風に言われまして…
(なんだとっ!!言ってないベー、そういう言い方ではっ!)」

「穣太君、『もう来ないんじゃないかと心配している』って
私はそういういい方をしたはずだよ(笑)。思い出して?
出社拒否症という言葉は、私、使っていないよ(笑)。」
(われながら、詭弁だな…と思いつつ^^;)

「あー、なるほど!穣太君としては、
なんだか最近、悪く言われている話ばかりで、
今まで自分がイケてると思っていたので、
何で突然急に、こんな風な話になったのか、
どうしても納得いかないんだな?だよね?」
(課長)

「あ、はい。
それに…風邪を引く前に今野主任(今目前いるのは内海主任)の
定期面談があったんですけど、成績も悪くなかったし…

(あらら、実際は近い時期の入社スタッフ達のうちで
彼だけが合格点に満たず上位グレードに上がれなかった。
なので、他のスタッフ達はもっと得点が高い。
が、比較対象がないので、そう思われても仕方がない…)

今野主任からは、期待しているから頑張れよってすごく言われて…」

(なるほど、グレードアップしなかったので励まされたんだ…)

「なるほど!だからまさか昨日こんな話が出るとは、
思わなかったんだね?(はい)
それはね、俺が思うところどっちも正しい。
今野主任は今野主任で、
君の努力を認めてくれているんだよ。
だけど、実際にメールができなかったり…
君、入って何ヶ月だっけ?(8ヶ月です)
あ、8ヶ月ね。そのぐらい経っても、
まだシフトに入れないことは自分でどう思うの?」

「あぁ、それはやっぱり、
自分が仕事できないからだと思います。」

「そうだよね。だったらこの一ヶ月で
皆を見返すぐらいに頑張ってみたらいいんじゃないの?
穣太君はこういう仕事は初めてだっけ?(はい)
それじゃ尚更、最初からできないのは当たり前だ。
最初からできる人なんか居ないんだから、
それぐらい周りからいろいろ言われたって、
なにくそって見返してみろよ。」

「あ、はい。」

「それにさ、どんな理由があるにせよ、
仕事を3日休んだら、先輩達に迷惑をかけているわけで、
君はそれに対して、
一人一人謝っていかなくちゃいけないわけよ。
今朝、皆さんにお詫びした?」

「あ、いえ…」

「だめだなー、そういうのを礼儀って言うんだよ?
穣太君、職場ではさ、仕事と同じぐらい大事な事があって、
それは挨拶とかマナーとか上下関係とか、とにかく、
後輩なら先輩達のいう事は素直に聞くっていう事なんだけど、
わかるか?」

「はい。」

「俺もみんなから話を聞いたけど、
君のよくないところは、仕事の面だけじゃないみたいだぞ?
ちゃんと人の話を良く聞いて、指示を守っているかぁ?
どうやら先輩達は、そんな風に思ってないぞぉ?
穣太君、ひとつ俺の経験談を聞かせようか?」

以下、課長が若い頃、世間知らずの妙な自負心と反発心で、
自分が井の中の蛙だったと気が付くまでの失敗談や、
社会の上下関係やマナーや礼儀や暗黙のルールなどを、
わかりやすく穣太君に解説してくれた。

私は昨日の集会に同席してもらって、
本当に良かったとこのとき思った。
あれがなければ、課長は一様に穣太君の肩を持ち、
先輩達の言い分をこんな形できちんと伝えてくれる事は、
決してなかっただろう。

実はその日の朝、出社が早い私と課長は、
まだ誰も来ていないような時間に少し話をしていた。
「俺、そんなにみんながやりたくないのなら、
穣太君の指導のために、誰か一人社員をつけようかと、
本気で思ったぐらいだったんだ。

だけど、ほら、後半になって皆さんが本音を出し始めたら、
どうやらもう誰も穣太君と仕事をしたくないようで、
だったら俺がヘタに出て行って穣太君を延命させても、
もう皆さんの気持ちがそんな風になっちゃっていて、
彼を残す事で逆に班全体がガタガタしてしまうのなら、
俺は、「ん?ちょっと待てよ?」と考え直したんだよね。
だったら、やっぱりこのまま、「最後のチャンスを上げましょう」
という事でいいのかなって。
私、やっぱり、今居る長くやってくれているデキル皆さんを、
大事にしたいから、そのせいで退職者が続出したりしたら、
皆さんに申し訳ないです。

「しかもA班はこれから延ばしていく商品を扱ってますしね」

「そうなんですよ。来期には増員も掛けようかというこの時期に、
次々辞められる事だけは絶対に避けたいですから。」

    *    *    *    *    *    *

穣太君は昨日の私と今日の課長の話に、
不整合がまったくないので、
スタッフの一存や私個人や契約会社の独断ではなく、
それが企業として下された判断だと感じ取ったのか、
不満げな表情は消えて素直に課長の話を聞いていた。

が、今まで一度も「ダメだ」と誰からも言われていないのに、
なぜ急にそのような話になっているのか、
どうしても承服できかねるようで、
何を話されても、そこへの疑問に立ち返ってしまうのだった。

そこで課長が言った。
「いいか、穣太君。A班の先輩達は君よりも年上で、
全員社会人としても優秀な人達ばかりなのね。
で、大人は普通、相手を傷つけたくないから、
ダメだと思っても、本人を前にして直接『ダメだ』とは
言わないものなのね。ここ、わかるか?
そういうのが、世間とか、常識とかいうものなんだぞ?」

「だから君が、誰からも『ダメだ』といわれなかったからと言って、
それで自分がイケていると思うのは、実は大間違いだ。
仕事というのは、人から直接そういわれなくても、
できなかったり間違った事をしていれば、
周りの人はそう思うのだと、思ってください。
いいね?わかりますか?」

「はい。」
納得した返事には聞こえなかった。

「よーしわかった!それじゃ早速今日から、
ひとつ死に物狂いで頑張ってみるか?
A班の仕事はうちの課の中で一番専門性が高いので、
ここで仕事覚えたら、ものすごいエンジニアになれるぞ?
(え…それはちょっと言い過ぎじゃ…課長^^;??)
君、今までオフィスで働いた経験がないんだよね?
じゃー、社会勉強もこれからだな。な?頑張れよ?」

「はい。」

「オーケー!!!
じゃぁ、どうする?ぷらたなすさん?
神田君を呼んでくる?あと、由香さんかな?」

「はい。神田君にも入ってもらって、
もう一度全員で意識合わせしたほうがいいですね。」

そして二人が加わり、6人になった。
神田君はここではっきり言うべきだった。
なので、神田君

「穣太さん、いいですか?
世間ではダメな人に向かって
オマエはダメだなんて、絶対に言いません。
そういった社会の暗黙のルールや場の空気を読める事も、
仕事人として必要なスキルです。
言われないからと言って、
これでいいと皆が思っているなんて、
絶対に思わないで下さい。(キッパリ)
君は気が付かないかもしれないけれど、
先輩達はそれぞれに、
長い間君に対していろいろなサインを送っています。
そういったところに気が付かないなんて、
それは君の努力不足です。
言葉に出てくる事だけじゃすべてじゃありません。
むしろ言葉にならない事のほうが、
世の中では大事なんです。」

「そうだっ!いやー、俺が一時間掛けて言いたかった事を、
神田君に5分で言われちゃったな~(笑)、
いやぁ、参ったなぁ(笑)」
課長が大きく笑って一同を「さ、行こう!」と促し、
その場はそれで収まった。

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2007.02.11

厄介な人6~緊急集会

1011

ご縁があって訪問いただき、
このblogをお読みの皆さんは、
自分がいない間、職場で自分以外の
近しいメンバー全員が集まり、
自分へのマイナス評価や
今後の事を相談していると知ったら、
どんな思いがするだろう。

私は嫌です、そんなの。
自分の尊厳が踏みにじられたような気がする。

批判の対象が自分でなくても、
やっぱり嫌です。
そんな事を臆面もなくするような職場は、
こちらから願い下げだと思うでしょう。

夕方の研修室に、「お疲れ様でーす」と
ひとり、またひとり入って来るスタッフを見ながら、
私はそんな事を考えていた。

こんなのって、ちっとも人道的じゃないよな…
厳密に言えば異端者の排斥を確認しあうための
話し合いじゃないか。

けれど、表情はにこやかに、
「ああ、忙しいのに集まってもらってごめんね。」
なんて、笑顔で挨拶する私。
決していい事じゃないと心のどこかで思いながらも、
今このタイミングでは必要な場だと思っていた。
それは、私がA班のみんなを心から信頼している
証でもあった。

全員の顔ぶれが揃い、課長と内海主任が最後に入って、
誰かが部屋のドアを閉めたので、
私は立ち上がって口を開いた。

「えー、皆さん、お疲れ様です。
今日皆さんに突然お集まりいただきましたのは、
ご存知のように、昨年5月に入った後藤穣太さんの件で、
今後の指導と育成に関しまして、
皆さんの率直なご意見を伺いたいと思いまして、
課長と主任にもご同席していただき、
なるべく本音の部分で意見交換をしたいと、
わたくしが思ったからです。」

「個人的にこういった風に集うような事は、
わたくし、あまりやりたくありません。
ですが、穣太さんの指導・育成に関しまして、
非常に負担である、という声が、
先輩である皆さんから上がっているのも事実でして、
本日は、情報共有の意味も含めまして、
率直な話をしていきたいと思います。
司会・進行はわたくし、ぷらたなすが務めさせていただきます。」

いやー、一体何言ってんだ?私(笑)。
時に友達、時に飲み仲間の
気心が知れている彼ら・彼女らを前にして、
なんちゅー堅苦しい挨拶だろうねぇ^^;がはは。

「…て事で、堅苦しい挨拶はこの辺にして(笑)、
現状、どうなんでしょう?一体?
どうなの?どんな感じなの?」

誰も口を開かない。

「何か、言いたい事のある人、いる?」

しーん…

「それじゃ、まず私のほうから、
これまでの簡単な経緯をご説明いたします。
えーとまず、昨年の暮にですね…」

私は、当初の発端が神田班長へんの批判だった事は伏せて、
表面的な事実のみを淡々と語った。

「そして本日、穣太君と契約会社のほうで面談をして、
意思確認をしたんですが、彼は仕事を続けたいと、
はっきり言ったので、それでは一ヶ月間の期間を設けて、
その間にどのぐらい頑張って成長できるのかどうか、
企業さんも見させてもらいたいと言っているので、
その旨をはっきり伝えて、それでダメなら
終了もあり得る事をご本人には言いました。」

「それで、彼の言い分は何かあったの?」と、課長。

「はい…そうですね…、
自分を使えない、仕事ができないと言っているのは誰か?
と、質問があったので、皆さんがそう言っています、
と答えました。」

「うん、うん。」

「そのあと、神田さん(班長)もそう言っているのか?
と聞かれたので、そうです、と答えました。
ですが、穣太さんは、これが正直ショックだったようで…
何か、言いたい事ある?って聞いたら、
『なんで今になって急にこういう話になるかわからない』と…」

「ちょっと待ってください!心外です!
それ、今まで、みんな、彼に言っているんですよ?
俺だけじゃなく、前原君も山崎君も、
折に触れてみんな『このままじゃやばいよ?』って、
言っているはずです。
先日なんか、由香さんがわざわざ時間を取って、
穣太君が今どういう立場にあるのか、
1対1で説明してくれているはずなのに…」
と、我慢がならないという感じで神田君。

「いや、彼が言うにはね、
神田さんに何を聞いても『そんな感じでいいんじゃない?』とか、
『そう言うのはユーザーに決めさせたら?』とか言われるだけで、
特段、注意をされたり叱られた実感がないみたいなので、
今まで自分がイケてないとか、そんな風には…」

「え、それ!ちょっと!ちょっと待ってくださいよ!!!
穣太さんの言い分は、非常識にも程があります。
あれだけみんなで注意したり叱ったりしてきたのに、
この期に及んで『覚えがない』などと言っている事事態が、
俺にとっては良識を根本的に疑うし、はっきり言って腹が立ちます。
そんな事にも気がつかないようでは、
やっぱり彼は、ここで仕事をしていくにふさわしい人間とは、
とても思えません!」

皆さん、実際に間違いを指摘したり注意したりとかは、
したんですか?

一同、弱々しく頷く。

じゃ、順番に聞いていこうかな。
由香さん、昨年末から今まで研修してみてどうでした?
担当として。

「うーん、そうですね。
ぷらたなすさんから頼まれて、
割と軽い気持ちで引き受けたんですけど、
…そうですね…正直に言って…
自分が思ったよりもかなり時間がかかると思いました。」

由香さんは慎重な人なので、言葉を選びながらゆっくり話す。

「なんていうんですかね。
ぶっちゃけ、言った事を全然守らないんですよ(急に早口)。」

「そうそうそうそう、ホント、そうなんですよね!」
と、横から縫子さん。

「仕事だけならまだいいんですけど、
穣太君って今は教わる立場じゃないですか?
そして私は教える立場じゃないですか?
だったらもう少し人の意見に素直に耳を傾けてくれれば
可愛げがあるって言うか(笑)、いや、そうなればいいんですけど、
なんか、聞く気がないって言うか、
まじめに聞いていないっていうか、
「はぁい、はぁい…」って、
返事も身を入れていないような、いい加減な話し方だし、
あー、もう、いちいち腹が立つっていう感じで…
(ため息)…疲れました。

あの…ホントに本音で言っていいのなら
(こちらを振り向く。私、頷く)
こういうのってどこまでが私達の仕事なんですか?
私達の仕事って本来、
お客様対応と調査・回答なんじゃないですか?
みんなのためと思って引き受けましたけど、
途中から穣太君を交代させる話とかが出始めて、
それじゃ、私が去年から苦しくても頑張ってやって来たことは、
一体なんだったんだろうか?と思ったり、
私のいう事を全然聞いてくれないと相談したら、
ぷらたなすさんが、『彼は人を見て行動するのかも』
と言ったのを聞いて、それじゃ私が研修している意味がないと思い、
はっきり言ってものすごくモチベーションが下がりました。
契約スタッフの仕事って一体どこまでがそうなんですか?」

途中から声が涙声に変わっていた。
人は悲しくなくてもずっと内に秘めていた本音を語るときに、
わけもなく目頭が熱くなって涙が出る事がある。

いつになく大きな声で強く訴える由香ちゃんに、
居合わせた全員が固唾を飲んでしまった。
由香ちゃんの批判は私に向けられているのだろうか?
すると神田君が言葉を発した。

「この場を借りて俺は皆さんに言いたいですけど、
なんでもかんでも班長、班長って、
みんな班長に押し付ければいいと思ってませんか?
正直俺だって大変なんです。
昨年来からの不良品対応や特定のクレームユーザー対応とか、
そうでなくても目一杯なのに、自分はもうこれ以上の稼動は、
はっきり言って取れません!俺は穣太君の指導はできません。
無理です。稼動的に不可能です。」

みんな心の中では「え…」と思って聞いていたかも?
この流れなら、穣太君の再指導は班長でしょうが。

「わかった!わかった、わかった!」
課長が仲裁に入る。
「今俺、皆さんの話しを聞いていて、
どっちの言い分も正しいと思う。
どっちの気持ちもわかるし、
どっちも間違っていない!
だよなぁ、みんな、大変なんだよなぁ…」

「あの…課長、続けて残りの皆さんの意見も、
ひとりひとり伺ってもいいですか?」

頃合を見て私は場を引き戻した。

「ああ、そうそう、そうだね、続けてください。」

順番は縫子さんに移り、次に社員扱いで入っている
私達とはまた違う立場の契約社員で家族持ちの神谷さん、
同じく優秀だけど実は穣太君に次いで若い千葉さん、
そしてまた席順が契約スタッフに戻って、
前原君、山崎君…と、声高にまくし立てる縫子さんのあとは、
ポツポツと言葉少なに語る男性陣が続いた。

スタッフ側の言葉には、暗に班長批判と受け取れる言もあったけど、
皆一様に共通しているのは、穣太君の今後は厳しいのでは?
という印象と、彼と一緒に仕事をするのは辛いという事だった。

縫子さんからは、「こういうのっておかしくないですか?」という
穣太批判が延々と出た。
すべて仕事人としてのマナーや意識や素養に関するものだった。
皆、自分たちと同じ発想で仕事をする事ができない穣太君に、
多大なストレスを感じ、居ないほうがずっと楽、と
思い始めているのだった。

そして明日からの判定期間、一体誰が研修をするのか?
という事に話題が移った。
もう、彼を指導したいという人は誰も居なかった。
由香ちゃんがあとから、
「あの場では普通班長が手を上げるべきなのに…」
と、私に述懐している。

けれど、神田君じゃやっぱり無理だと私が思っている矢先に、
神谷さんが、「技術的な事なら俺がやってもいいですけど?」
と見かねて手を上げてくれた。神谷さんは本当にいい人だ。
が、神谷さんは二次調査を担当する、
バリバリのエンジニアでもある。
そんな彼が穣太君の育成に時間を取られて、
自分達の上げた二次調査が遅れるのは皆困るので、
「いや、それは困ります!」と言って、
それはスタッフ達が止めた。

じゃ、どうするの?

「わかりました。私がやります。
ただし期限付きで勘弁してください。
それから席が隣なのは苦しいので、
話してもらえるのならやってもいいです。」

由香ちゃん…

「いえ、いいです!どうせ誰もやらないのなら、
私がやります。」

なんだか、自暴自棄になっている気がした。

「お願いできるのならお願いしたいけど、
いいの?本当にそれで?」

「だから、いいんです、もう。
誰かがやるしかないのなら、私が最善だと思います。
その代わり、これからは言いたい事は言わせてもらいます。
今まで黙っていたほうがいいように思って、
飲み込んできた事もたくさんありましたが、
今回の事で私は、それじゃ何も変わらないんだと痛感しました。」

私に対して言っているのか、神田班長に対していっているのか、
それとも先ほどまで同席して、少し前に引き上げた
課長や主任に対して言っているのか、私には掴みかねた。

それにしても困ったスタッフが一人いるだけで、
ここまでゴチャゴチャと揉めるものなんだろうか。
班全体の人間関係がメチャクチャになっていきそうで、
私は、入れてはいけない部分に
ナイフを入れてしまったのではないか?
と、自問自答せずには居られなかった。

【過去記事一覧】~after Asperger~
・アスペルガー症候群 ・私達の困った性格 ・アスペルガーな人々 ・アスペルガーな日々 ・アスペルガーなつき合い方 ・アスペルガーな考察 ・出番です、待たせたね。1(周辺記事) ・ASをめぐる夫との会話 ・対話のチャネル ・アスペルガーな研修 ・アスペルガーな現場 ・アスペルガーな新人 ・やっぱり阿吽の呼吸ナノダ ・ASを伝えるほどに広がる誤解 ・羹に懲りて膾を吹くか…? ・彼は本当に立ち上がれるか? ・NGでも走ってみることにしたが ・読めない人 ・面接するほうのキモチ ★厄介な人(1~12) ・Mindblindness?自閉症について ・うちの亭主のメールも変(笑) ・連敗中!句読点をつけない人 ・アスペルガー症候群と犯罪 ・自閉症的なスタッフの指導 ・誉める事・評価する感受性 ・なぜ危機感にこだわるのか ・アスペルガーなユーザーサポート ・やっぱダメかな… ・その人の退職 ・お互い不幸にならないために ・この新人さんは断ろうと思う ・事前研修の私の今後の課題




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厄介な人5~意思確認

1011

班の中で、「これ以上仕事を続けるのは無理ではないか?」
と今や全員に思われている穣太君(20代前半/男性スタッフ/仮名)
は、そのあともう一度電話して約束をした13:00を回っても、
契約会社に姿を現さなかった。

「今日は来ないのかな?」そう思った矢先に同僚が、
穣太君の来社を告げに来た。
応接室に出て行くと憮然とも無表情とも思える顔つきで、
穣太君がそこに座っていた。相変わらずコートは着たままだ。

「少し遅かったね。どうして電話してくれないの?」
「あぁ、はい、少し迷ってしまって…」
「その間、電話する時間はあったでしょう?」
「あぁ、えーと、トイレに行っていて…」
「それにどうしてコート着ているの?
室内では脱いでね。こういうときは脱ぐものだよ?」
「あぁ、はい。」

「今日、こっちに来てもらったのはね、
実は大事が話があるからだったの。
穣太君、今って入ってどのぐらいになる?」

「えーと、8ヶ月目です。」

「だよね。でね、8ヶ月経ってもシフトに入れていないところに、
企業さんから指摘が入って、
それについて皆さんに聞いてみたところ、
まだ一人前になっていないからだってみんなが言うんだけど、
それ、本当なの?」

「あぁ、はい。今、由香さんとかに教わって、
いろいろわかってきました。」

「そう。由香さん、どう?わかりやすく教えてくれる?」

「はい。」

「そう。でも、一人前になるのがちょっと遅いよね。
それで皆さん、今すごく困っているの。
穣太君がシフトに入らないと、
一人足りない状態でローテーションを回しているのと同じだから、
みんながキツイって言っています。」

「あぁ、そうですね。」

「それで、企業さんのほうも、もうこれ以上待てないんだって。
穣太君ね、今まで先輩達が
2~3ヶ月でシフトに入っていた事と比べると、
まだそれができていないという事で、
『仕事ができない人』ってみんなに思われているけど、
それはわかっている?」

「あぁ、できない事もあります。
(矢継ぎ早に)でもそれは、教わってできるようになりました。」

「そう。それじゃ、仕事はこの先も続けたいって思っている?」

「はい。続けたいです。」

「それは絶対に?」

「はい。自分は仕事が好きだし絶対続けたいです。」

「わかりました。じゃね、企業さんの決定を伝えるとね、
企業さんはあと一ヶ月間は待ってくれるんだって。
つまり今から一ヶ月でどれだけ頑張れるのか、
見たいって言っています。
それできちんとその間に仕事ができるようになれば、
全然問題ないけど、一ヶ月経っても同じようであれば、
考えさせて欲しいそうです。
運良く空きがあれば他の班に移動できるけど、
空きがなければお仕事をご辞退いただく事になるかもしれません。」

「それはクビって事ですか?」

「もしかしたら…って事です。
それにね、穣太君…
穣太君、この仕事の面接のときに、
本当は正社員になりたいので、
今受けている会社が決まったらそっちに行くって言ったでしょ?
今日もそう思ったけど、皆さんの話を聞いていると、
今のままでは、それちょっと無理かもしれない。
なぜなら、穣太君は机と椅子とパソコンがあるような職場は、
今回初めてかもしれないけど、そういったオフィスではね、
目に見えないルールがたくさんあって、
礼儀とかマナーとか常識とかは、とても大事なんだよ?
みんな穣太君の事を、礼儀知らずで注意しても直らない
って言っているよ?」

「え…(絶句)、言われた事は全部守っています。」

「じゃ、どうしてさっき、コート着たまま座っていたの?
それ、少し前に縫子さんに注意されているよね?
(縫子さんから報告済み)
室内にコート着て入るもんじゃないよ?って。
でも何度言っても直らないので、
今度は主任に注意されたんだよね?
(縫子さんが、主任にお願いした)」

「え、注意なんかされていません。
ちゃんと次からは脱ぐようにしていました。」

彼ね、自分の都合が悪くなると、
すぐ、ウソつくのよ!
縫子さんの言葉が脳裏をよぎる。

「あ、そうなの?(私は敢えて言及しなかった)
まずは今から一ヶ月間で結果を出してください。
できますか?」

「はい。」

「それじゃ、今日の話はこれでおしまい。
明日から今度は今以上に頑張ってみて。
それから明日は必ず来てね。」

「はい。わかりました。」

立ち上がり際に、穣太君は
たぶんずっと気になっていた事を私に尋ねた。
「俺が仕事ができないって誰が言ってたんですか?」

「みんなだよ。」

「神田さんもですか?」

「神田さんの判断で、今、こういう話になっているんだよ?」

「え…(再び絶句)」

「何か納得いかない事ある?
そういう事は全部ここで話していいんだよ?」

「え、いや…ただ…
仕事とかで、『これでいいですか?』って神田さんに聞くと、
『あぁ、そんなもんでいいよ』って言われたり、
お客さんがどうすればいいのか質問すると、
『そんなのユーザーに決めさせれば?』って言われたり、
なんかそのとおりにしてきたのに、そんな風に言われるなんて、
意外だなって言うか…」

「神田君、あんまりきちんと教えてくれなかった?」

「あぁ、何か言われて、でも自分はどうすればいいの?って
迷ったりわからなくなる事は確かにありましたけど…でも…」

「自分としてはきちんとやっているつもりでいた?」

「はい。」

「特に問題なく仕事的にイケている気がしていた?」

「はい。ダメだとかできないとか、
そう言うことは言われた事がありません。
だから…」

「だから?」

「はい。だから、なんで今になってこんな風になるのか
…わかりません。。。」

「そうね。そうだよね。
それ、そのまま神田さんに伝えてもいいのかな?」

「あ、はい、お願いします。
あ、じゃ、お疲れ様でした。失礼します。」

最初から最後まで憮然として面白くなさそうな表情で、
抑揚のない話をポツポツとした後、穣太君は帰っていったけれど、
班長の神田君が自分をそのように見ていたという事が、
彼にとって大きなショックだったらしいのは私にもよくわかった。
今はたぶん、彼は裏切られたような思いで胸が一杯かもしれない。

穣太君はボキャブラリーが少ない人なので、
「わかりません」という言葉を使ったけど、
「納得できない」というのが正確な彼の本音なのだろう。
でもさー、それは言わなくてはいけない事だね。
事実をありのまま、きちんと隠し立てせずに伝えるのが、
彼にとって一番いいのではないだろうか。
そうしなければ、たぶんこの先、彼の成長はない。

通常、私達は相手を気遣ったり、
余計な感情的摩擦を防ぐ目的で、
相手に対してあまりストレートな言い回しをしないけれど、
それがすべてのケースで最善かどうかと言えば、
私は本音ではNOと言いたい。
できれば神田君には、私とではなく穣太君のほうと
こうなる前に直接対峙して、
その所感を本人にリアルタイムに伝えて欲しかった。
がそれもまた、なかなかできないのが
人の心の弱さでもあり、いわゆる良識というヤツでもある。

ラッキーな事に(?)その日研修を予定してた新人さんが、
スケジュールの聞き間違いで午後はどうしても都合が悪い
というので、(1対1でもあることだし)私は研修を延期する事にして、
すぐに現場に引き返し、面談の結果を課長に伝えた。

「どうでした?」
「やる気はあるようでした。」
「そうか。それなら頑張ってくれるといいなぁ(笑)~!」
「課長、明日から穣太君の扱いも変わる事ですし、
この件は皆さんにもお伝えすべきと思うんですが…」
「あぁ、そうだね。俺も実際のところどうなのか知りたいな。
夕方皆が集まるのなら俺、入ってもいいよ。」
「お願いします。」

うちの課の社員さん達は、
基本的に殺伐とした話を好まない。
そりゃ誰だって妙な話の責任はとりたくないし、
皆がうまくやっていけるのなら、
何事もないほうがいいと思うのが人情だろう。
私だって、自分がスタッフの頃は、
「あんな人、どうして辞めさせないのだろう?」
と思った事があったけど、
その不満を封じ込めてやって来たのは、
「まあまあ、そう怒らずにさ。やっていれば何とかなるべ?」
という、社員さん達の意見を、
企業の意思と思ってきたからだった。

(そして結局、皆、結果的に"何とか"なった。)
(ただし、そうなるまでに5年かかった…)
(これは本人の努力もさることながら、
周囲が5年掛けてあきらめたというほうが正しい。)
(が、接してみてすぐにダメとわかる人も世の中には確実にいる。)
(結局すべてのところ、ご本人の資質の問題でしかなかったりする)

実際、スタッフを外した課長・主任と私だけのトップ会談(?)では、
契約会社と企業との信頼関係とか、
契約会社の基本的な責任とか、
そういったシビアな話も交わされた。
「質のいいスタッフを安定供給するのが
あなた達の仕事であり、当社への責務でしょう?」
「我々は契約会社の人選を信頼するしかないし、
我々の要求するスキルに満たないスタッフを入れてきて、
それに大して現場育成の良し悪しを
そちらが持ち出すのはおかしいのではないか?」
が、昨今、それを論じていると何もかも始まらないのは、
私も課長達もよくわかっている。
結局、皆さんが快適に働けるよう、
「ここはひとつ、ぷらたなすさん、よろしくお願いします」
で、手打ちとなった。

さて今は、スタッフと社員の交流がほとんどなく、
そういった企業さん側の発想とか体質とかが、
スタッフの方に全く伝わっていない。
いきおい、契約会社ばかりが悪者になってしまい、
今回のような事があると批判と不満が渦巻いてしまう。
社員とスタッフが直接意見を交換し合える場が持てるのは、
私としては大歓迎だった。
二言目には「交代してください」と言ってくる
神田君を牽制したい思いもあった。
どんな場合でも、スタッフを終了させるという事が、
そうそう簡単なものではない事をわかって欲しい。

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厄介な人4~上司達の判断

1011

年が改まり、私は次に入れる新人スタッフの事前研修のため、
朝だけ現場に顔を出して急いで自分の仕事を済ませると、
昼前には契約会社に向かう忙しい日々に再び突入した。

今度の新人さんは40代後半で、
前歯が一本もないためフガフガと滑舌が悪く、
見た目もちょっと変わった感じ。
塾の講師だったと言うけれど、
契約会社として企業さんに推薦できるような雰囲気ではない。

が、今募集を掛けているC班はベテランの退職や、
新人さんの早期リタイアなどが続き、
24時間交代制なのに正規のローテーションが組めず、
スタッフは皆、ハードな変則勤務シフトに疲れきっていた。

班長の芦田君(30代前半/男性スタッフ/仮名)と相談し、
"背に腹は変えられない"という部分で意見が一致し、
「もう、この際、24時間をやってくれる人なら誰でもいいから、
まずは来てもらって現場で育てよう」という結論に達した。
ベストな人選とはとても思えないけれど、
新人さんが就業に非常に意欲的なところを頼みの綱として、
必ず歯を治す約束を取り付けた上で採用を決めた。

ところが研修をしてみると、
大学卒業後、東京でプログラマーを数年やっていたというこの方、
PC操作がまったくおぼつかないorz…
履歴書にある「できれば再び開発の仕事を希望」なんて、
ウソだろ?と目を疑っちゃうよね。
両手でキーを打てないのでタイピングが遅いし、
企業のホームページを見てもらうと、
目が泳ぐしパッと見でサイトの構成を読み取れないので、
リンクを探すのにも、とても時間がかかります。
これじゃ、今時のネット慣れした普通の若者のほうが、
ずっとスキルが高いと言えるし、
「DOSの時代の人なんて、そんなもんですよ。」
と、会社のスタッフ達は言うんですが、そうなんでしょうか。
(あまり詳しくないのでわかりませんが…)

いずれ、もうこんな感じの人しか来ないんだろうか…と思うと、
どこか仕事に希望が持てなくなって来る。
すでに枯渇状態の契約スタッフに
これ以上職場が依存するのは、
激しくマズイ事なんじゃないのかねぇ。。。

契約スタッフはしょせんテンポラリー(一時的な)な人員である。
優秀な人ほど正社員を目指して数年後には転職していくのに、
企業側は今も正社員の削減を推し進めていて、
こうなると、せっかく長年築き上げた
企業としての高い技術スキルやノウハウは、
一体誰が次世代に継承していくのか?と、
疑問を持たざるを得ない。

そんな事を考えながら新年をスタートさせていると、
ある朝、A班長の神田君(30代前半/男性スタッフ/仮名)から、
報告が入った。
「穣太君の件で、昨日ひともめあったんですよ。」
「え?何?」

「お客様から○○が変だと言われたら、
まず△△と□□と××をセットで伺って、
すぐに調査を開始するのがセオリーじゃないですか?
だから、それを由香さんも隣の縫子さんも、
口が酸っぱくなるほど穣太君に言っているのに、
彼、昨日もそれをせずに自分の判断で
回答しちゃったみたいなんです。
結果的には間違いじゃなかったからいいんですが、
2人ともいい加減ウンザリして『どうしてやらないの?』って
穣太君を詰問したみたいなんですね。
そしたら彼、相変わらず『でも~』とか、『こう思ったから』とか、
言い訳ばっかりして、『はい』と一向に非を認めないので、
縫子さんがキレて、『どうしてそう言い訳ばっかりするのっ!』
って怒鳴っちゃったみたいなんですね(笑)」

こういうエピソードを語る時の神田君は、
なぜかいつもうれしそうで喜々としている。

「そしたら周りの人たちも兼ねてからそれを不満に思っていたので、
一斉に『どうしてそう言い訳ばかりするのっ?』と、
縫子さんの口調を真似てガンガン言ったらしいんです(笑)」

そのうち縫子さんも出社してきて、
「ぷらたなすさーん、ごめんなさい。
私昨日、腹が立って腹が立って、
穣太君にすごいキツイ事言っちゃったんですよね。
もし、彼が今日来なかったら私のせいです。。。
すみません。。。」

「その後、由香ちゃんがそこの席に2人で移動して、
どうして昨年末、突然席替えをして自分の隣になったのか、
今、穣太君がどういう状況でみんなにどう思われているのか、
そして一向に一人前にならない自分に
もうちょっと危機感を持たないと、
この先辞めさせられたりすることもあるかもしれない、と、
30分ぐらい掛けて丁寧に説明してくれたんですよね。」

「彼、どうだった?」
「さぁ…真剣に聞いたので、
やっと自分の置かれている立場が
今ようやくわかったんじゃないですか?
だから、今日は来ないんじゃないかと思って…」

ところが予想に反して穣太君は普通に出社してきた。
私達は慌てて解散し、何事もなかったかのように席に戻った。
私はその後の限られた時間を、ほぼ100パーセント、
各スタッフとのメッセンジャーのやり取りに費やした。
人それぞれに性格による温度差はあったけれど、
穣太君を見る周囲からはあまりいい話は出てこなかった。
皆、何がしかの"頭に来るエピソード"をそれぞれに持っていた。

    *    *    *    *    *    *

そして数日たったある日、
ついに穣太君が風邪を理由に休んだ。
欠勤連絡がお母さんからのものだったので、
その話だけでも「社会人としておかしい」「甘えている」と
班内では疑問視する声がすごかったのですが、
それ以上に、彼がその後二日目も三日目も休んだ事で、
「彼はこのまま来ないのではないか?」
という空気が流れ始めた。

しかもこの間に、穣太君へのブーイングは一気に膨れ上がり、
欠勤3日目の朝、班長の神田君が意を決したようにやって来て、
「もう、みんな、耐えられません。穣太君を交代してください!」
と訴えてきた。

「交代ってどういう事よ。クビって事?」
「その通りです(キッパリ)。
もう、指導を担当している由香さんも
サブでお手伝いしている縫子さんも、
精神的に限界だって言ってます。
もう2人とも疲れきっていて可愛そうです。
正直みんな、退職を考え始めている人もいます。
そこまでして育てて、一体何になるんですか?
あんな彼を取って、長年頑張ってきた
俺達を捨てるというわけですか?」

うわ!いきなり穏やかならぬ話だ。

「交代って言ったって、今日の今というわけには
いかないでしょう?誰かを辞めさせるには、
契約会社として法にそった手順もあります。
それに、いきなりクビといわないで、
他の班に移動させるという方法だってあるんだよ?
どっちにしても、それは私の一存ではできません。
課長や主任に相談してからでないと無理でしょ?
そうでしょ?普通。」

「そうですね、確かに。わかりました。
では、早急に課長や主任と相談してください。
もう、俺達は誰も穣太君の面倒は見たくないし、
関わりたくもないし一緒に仕事をしたいとは思っていません。
その辺を、きちんと上の人に伝えてください。」

は~年明けからいきなりコレかよ…
私は今進めている新人研修の悩みと、
他の課からオーダーをもらいながら、
なかなか人を出せないでいる現場での居心地の悪さと、
ケンカして家を出て行った次男と、
長男の奨学金の保証人の件と、
知人から車を譲り受ける手続きに、
この話が加わって、正直かなりの目一杯になってしまった。

吐き捨てるようにツカツカと去っていく
神田君の後姿を見ながら、
手元の受話器を取って契約会社に電話を入れ、
「すみません、今日の新人研修一時間遅れます。
新人さんには、自習しておくよう伝言してください。」
と、告げた。

    *    *    *    *    *    *

午後までにはだいたいの方向性を決めて出なければならないので、
私はそれまでの短い時間にたくさんの人とメッセンジャーを交わし、
膨大なやり取りをした。

親切で面倒見の良い由香ちゃんが、
穣太君の指導をギブアップしたのは本当の話で、
彼女は、「ぷらたなすさん、正直言って、私、もう、いいです」
とメッセージしてきた。

どこが苦しかったかは今ならわかる。
コミュニケーションというのは、
言葉を交わして心を通じ合わせる事だけを言うのではない。
・依頼する→引き受ける 
・指示する→応える 
・命令する→実行する
自分のアクションが他人に行動に反映されたときもまた、
そこに意思の疎通を感じ取って満足するわけで、
言ってもやらない、指示しても守らない、指摘しても認めない…
の繰返しでは、確かなものが何も得られずに、
やがて人の心は疲弊して荒れていくのだ。

望んでもそうならないものは、最初から望まないほうがいい。
もしかして班長の神田君の意見は、
最初から的を得ていて的確だったのではないか?と思い始めた。
事の発端が「指導に不熱心な班長批判」から始まったので、
私はそちらにばかり気を取られていたけれど、
それは間違いだったのではないか?

が、たぶん私は人に対して、
敏感すぎて逆に鈍感なのだろうと思う。
みんなが腹を立てるところ、眉をひそめて嫌悪するところ、
そういったところが、イマイチ実感として同調できないでいる。
それは、なぜその人がそういう行動を取るのか、
いつも自分の中に答えがあって、
自分で納得しているからかもしれない。

評判の悪い、穣太君の業務中のMIXIだって、
班長が2ちゃんねる三昧でときどきニタニタ薄ら笑いをし、
先輩達もヒマなときに自分のMIXIを開いているのを見たら、
「それはやっていい事」とストレートに解釈するだろう。
先輩達は、自分が実際にやっているので誰も彼に注意できない。
だから彼はやめない。指摘されたら当然反論するだろう。
「普通、研修中の新人は覚えるべき事が日々たくさんあるし、
たとえ先輩がやっている事でも自分は遠慮するのが常識で…」
こんな理屈がたぶん彼には、よほど理論的で
ストレートな言い方をしないと通じないのだろう。

ひとつひとつのエピソードに対して、
私はそんな風に彼側の事情を理解してしまうのだ。
そして、どうして彼に伝わるような言い方をしないのだろう、
などと、彼の肩を持つような発想をついしていまうのだが…
まぁ、いいや。つべこべ考えずに、
ここはさっさと上司達に相談してしまおう。

    *    *    *    *    *    *

たった数時間のうちにいろいろな人と話し合い、
様々な打ち合わせを重ねたし、
私を含まない組み合わせで、
何かの話し合いもあったと思うけれど、
その中身は割愛する。

結論として、企業側の課長と主任から言われた事は、
「まずは意思確認をして下さい」というものだった。(妥当)
そして、彼が今後もやる気があるのなら、
期間を定めて再度スキルアップに努力してもらい、
一ヶ月経っても改善が見られない場合は、
就業を辞退してもらいましょう、という話になった(妥当)。

その日、3日間休んでいた穣太君からは
「病院に寄るので遅刻しますが午後には出社する」
という連絡が入っていた。
私は彼に電話をして、
「今日は出社しなくていいので、午後に契約会社に来てください」
と、告げた。

「え…でも、会社…」
「今日はいいです。課長からもOKをもらっています。
話があるから必ず来てね。」
「え…あ…はい。。」

スタッフ達は今や全員が彼に大なり小なりの拒否感を持っている。
彼のいない職場を望んでいる。
思えば同じような事は過去に二度あった。
スタッフ達の不満の原因も言い分も過去の二回とすべて同じ。
「仕事のスキルじゃないんです。
常識とかマナーとかやる気なんです」
「人として、アンタそれってどうよ!といってやりたいぐらいです」

穣太君は違うんじゃないかと思いながらも、
ずっとずっと考えていた事。
それはやっぱり彼もまた、アスペルガー症候群か
その傾向の強いスタッフさんなんじゃなかったか?って事。
もしもそうなら、就業を辞退させるのは至難の技かも。
自分のどこが良くないのか自分で気がついていないと、
いつまでも納得せずにトラブルの原因となる。
が、ここはまず、現状を明確に伝えるのが、
一番彼にためになると思って契約会社に向かった。

【過去記事一覧】~after Asperger~
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厄介な人3~疲弊

1011

現在の私は管理的な業務が中心で、
現場に立ち入ってあれこれ指示出しをする事がないため、
自分が面接し就業前に事前研修をして現場に入れた新人さんが、
その後どうなっているのかをあまり知る機会がない。

穣太君は高校も普通の学校だし、
見た感じ特に変わった風でもないし、
言葉遣いも礼儀も普通。
事前研修は大変意欲的で、
教えた事の飲み込みが早く、
応用力もあり、勘がいいのは天才的だな、と思った。

ただし、面接時にコートを脱がなかったとか、
応募の理由を「え?シュウカツなんで…」
と、憮然として答えるなど、
目上の人に対して失礼だな、と感じる事はあった。
また、研修中に「うわ!やば!」と突然声を上げて、
「見てください、これ!俺の友達が…」
と、MIXIの画面をこちらに向けるなど、
「え!」と思う事もたまにあったけど、
社会的な未熟さや若さゆえの怖いもの知らずの言動は、
彼の年齢とそれまでの職歴を考えれば、
さほど大きな欠点とは思えなかった。

それに実際、コンビニ経験しかなかったり、
工場内軽作業の現場しか知らなった若いスタッフが、
数年後には職場で立派な社会人に育っている事を思うと、
そういったところを逐一細かく気にして、
今から人の良し悪しを判定するのは性急な判断だと思った。

なので、穣太君がそれほど「使えない」という話は、
自分としては何となく意外だったし、
彼のどこか人をカチンとさせる言動にばかり
目を向けてしまっている話だとしたら、
仕事と感情を分けて考えるように
班の雰囲気を変えなければいけないと思っていた。

けれどメールができない、と言うのなら、
これまた話は別で、それは感情云々ではない。
実は、穣太君は以前にも似たような話が上がっていて、
私は一度、彼のフォローアップ研修を引き受け、
3日間彼に付いた。
(過去日記「間違いじゃないから言えない

その時は、技術スキルよりも
彼のやる気や仕事をする上での意識、
そして職場のマナーとか、
そういうった批判が中心だったので、
私はそこにばかり終始する班の空気に疑問を感じ、
まずはお客様対応の実際を順序だてて教え、
穣太君のとっ散らかっている思考回路を整理してあげて、
その後、随分良くなりましたとみんなからの反応があったため、
自分としては安堵していた。

それがまたもやの再燃??
私はスタッフの一人一人にメッセンジャーを送って、
こっそり「どうなの?」と聞いてみた。

「相変わらず調べもしないで、適当に回答するんですよ。」
「お客様の話も良く聞かずに
自分の意見を押し通そうとするんです。」
「同じ事を何度も何度も聞いてくるんです。」
「こちらの都合も考えずにベラベラ話し掛けてきて、
それも自分の好きな話ばかりなので迷惑してます。」
「間違っている事を何度教えても、直そうとしないんです。」
「この作業ができないと調査に支障がでるから、
覚えておいてね、と言っているのにやっているのを、
今まで一度も見たことがありません。」
「やる気があるのか疑いたくなります。」
「仕事をなめていると思います。」
「自分に対して危機感が全然ないんです。」

まぁ、出るわ、出るわ、辛辣な批判の数々。
けれどスタッフ達は、班長の神田君が、
まともに彼を育成指導していないのも良くわかっているので、
行き場のない様々な不満をどこにどうぶつけていいものか、
出方に迷うあまり、なるべくそれを考えないようにして、
結果として無視していることがよくわかってきた。

それにしたって、やっぱりメールができないのは
確かにマズイよね。
私は神田班長やスタッフの皆さんの意見を聞きながら、
由香ちゃん(30代前半/女性スタッフ/仮名)を指名し、
もう一度一から指導してやってください、とお願いした。

由香ちゃんは分別のある女性スタッフである。
優秀で機転も利き判断力もある人ですが、
誰かを差し置いて自分が何かをする、
という事をあまり好まない。
班長や古い先輩達がほかにいるのに、
そこで自分が指導役を引き受ける事に、
いろいろと複雑な思いを抱いて最初は躊躇したが、
みんなが困っている状況を解決できるなら、と、
最後には引き受けてくれた。

後から彼女は、
「前原君や山崎君を助けたかったんですよね」
と、言っている。
神田班長が穣太君をその2人に押し付けたことで、
2人は長い間負担が大きくすごく困っていて、
見るからに大変そうだったから、と、
昨日話していました。

    *    *    *    *    *    *

私が由香ちゃんにお願いした事は、
大きく言えばたったひとつ。

お客様対応でもメールでも、実際にさせてみて、
できていないこと、わかっていなかった事、
間違っている事などが出てきたら、
書き出してリストにして毎日本人に見せて。
この一点。

無知の知という言葉があるけれど、
人は自分がどの程度のもので、
何ができて何ができないのかを
はっきりと自分でわかって納得していないと、
自発的な成長は望めないのだ。

そのためには、ただ「ダメだ」と言葉で伝えるだけではダメで、
文字や図やグラフなど目に見えるものにして、
本人にフィードバックしてあげるのが一番いいと思う。

ただし、そこに主観が入ってしまうと、
本人がなかなか納得しないので、
YesかNoかで正誤判定ができるものだけ
ピックアップするよう指示を出した。
いつ誰が見たって「それは間違い」というものしか、
リストに載せちゃダメ。
「仕様をよく覚えていない」じゃダメだよ?
「一度に設定できる項目の数を間違えて覚えていた」
と書かないと、穣太君の頭には入らないよ?

けれど、この指示は由香ちゃん的には難しかったようで^^;
後で日々のリストを眺めてみると、
「申し訳ありませんと不要に連発しない」とか、
「一度注意されたことは次からはやらない」とか、
あんまりYes/Noじゃないものも結構入っているな。
でも、そこまで望むのは酷というものだろうと思い、
指摘は特にしなかった。
自分の業務をこなしつつ片手間に見てくれているので、
役目を引き受けてくれただけでも大変だと思うし。

由香ちゃんはお客様対応が抜群にいい。
感謝される事も多い。
お客様対応がいい人というのは、
基本的に人好き=他人と話す事を苦にしない人で、
しかも相手の言葉から
主旨や真意を汲み取るのが上手な人である。
また、相手のレベルに合わせて自分の説明を
臨機応変に変える事ができるので、
話をしながら常に相手の人と成りを
分析しながら自分の行動に反映させている人だと思う。

なので、お客様対応がいい人は、
研修担当としても向く人だと思っていて、
その彼女が付いてもう一度指導してくれるのなら、
穣太君のためにもそれが最善と思っていたのですが…

    *    *    *    *    *    *

数日後、彼女に感想を聞いてみたところ、
「基本的な事があまりにも何もわかっていなくて
正直、びっくりなんですけど…」
と、答えが返ってきた。

「え、例えば?」
「○○の仕様の基礎的な事や、エラーの意味とか、
一番簡単な△△調査の手順とか…
神田さん、そういうの、本当にちゃんと穣太君に
きちんと教えたんでしょうかね??」
「何を聞いても、『教えた』って言っているけど…」
「うーん…なんか『どうして今でもこれがわからないの?』
って叫びたくなるんですよね。」

「あぁ、そう。。。由香ちゃん、それね、
きちんと穣太君に伝えていいよ?」
「本当ですか?言っちゃっていいんですか?
でも、なんか、怒鳴ってしまいそうで、
私、怖いんですけど…」

「怒鳴るのはまずいかもしれないけど(笑)、
『8ヶ月になるのになんでできないの?』って、
誰もちゃんと言わないから、
それでいいんだと思っちゃって、
自分でよくわかっていない部分もあるでしょ?
みんな人がいいし大人なのでそうなんだと思うけど、
私が見ていると、言わなさ過ぎだよ。
『ダメなものはダメ』ってきちんと言わないと…」

「言っているんです!私も縫子さんも何度も!
前原君も山崎君も(神田さんはよくわかんないですけど(笑))、
それなりに言っているんです。だけど穣太君は
それをそう思わないみたいなんです。」

穏やかな由香ちゃんが、いつになく声を荒げたので、
私は少し驚いた。
由香ちゃんも自分で恥ずかしく思ったのか、
落ち着いた声に戻って、こう言った。

「ぷらたなすさん、私思うんですけど、
スタッフの指導って誰に責任があるんですか?
私達がここまでやらなければいけないものなんですか?」

私は言葉に詰まった。

「ぷらたなすさんにお願いされたから、
私は業務としてやってますけど、これって本当は、
班長の役目ですよね?
班長の神田さんが最初から基礎をきちんと教えていれば、
こんな事にはならなかったんじゃないですか?
仕事なのでやれと言われれば来年もやりますけど、
はっきり言っていつまでこれを続ければいいんですか?」

"なんでこんな人を入れたんですか?"といわれると思い、
心の中で覚悟を決めていたら、批判の矢が班長に向かったので、
私は内心ほっとした(本音)。
けれど、信頼している由香ちゃんがそう言ってきた言葉は、
信じないわけにはいかず、
「そうだね、もう一回、みんなで話さないとね…」
と、言葉を濁して席に戻った。

それが昨年の暮れの話だった。
由香ちゃんの顔つきは、目が引っ込んで生気がなく、
本当に精神的に疲れている感じがした。
まずいな…と、そのとき初めて、
本気で私はそう思った。

【過去記事一覧】~after Asperger~
・アスペルガー症候群 ・私達の困った性格 ・アスペルガーな人々 ・アスペルガーな日々 ・アスペルガーなつき合い方 ・アスペルガーな考察 ・出番です、待たせたね。1(周辺記事) ・ASをめぐる夫との会話 ・対話のチャネル ・アスペルガーな研修 ・アスペルガーな現場 ・アスペルガーな新人 ・やっぱり阿吽の呼吸ナノダ ・ASを伝えるほどに広がる誤解 ・羹に懲りて膾を吹くか…? ・彼は本当に立ち上がれるか? ・NGでも走ってみることにしたが ・読めない人 ・面接するほうのキモチ ★厄介な人(1~12) ・Mindblindness?自閉症について ・うちの亭主のメールも変(笑) ・連敗中!句読点をつけない人 ・アスペルガー症候群と犯罪 ・自閉症的なスタッフの指導 ・誉める事・評価する感受性 ・なぜ危機感にこだわるのか ・アスペルガーなユーザーサポート ・やっぱダメかな… ・その人の退職 ・お互い不幸にならないために ・この新人さんは断ろうと思う ・事前研修の私の今後の課題




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厄介な人2~指導者の資質

1011

仕事でたくさんのスタッフ達と関わっていると、
人の有様っていろいろだなぁ、と本当に思い知らされる。

私達の仕事は法人向け特定商品のユーザーサポートですが、
内容が調査や遠隔オペレーションを含む技術的なものであるため、
研修やOJTは単に業務的な仕事の進め方やルールを
手順に沿って淡々と教えるだけではすまない。

基礎的な技術知識を教え、商品の仕組みを教え、
その上で自社商品の仕様や機能・特性を覚えてもらい、
次に調査ツールの使い方や良くあるケースの履修、
同時にグレードごとの値段やオプション、各種手続き。

そして最後は横に座った先輩にサポートを受けつつ、
実際にお客様対応をこなして経験を積み、
8割程度自力でできるようになれば一丁あがり!です。
経験者は1ヶ月~2ヶ月、初心者は2~3ヶ月程度かな。

もちろんこの時点ですべてが完成している必要はなく、
(無理だし、そんなの!(笑))
不明点があれば保留にして班長や先輩に確認する…、
お客様に時間をいただいて後日回答の了解をもらう…、
自分に不足している知識に気付いたら自力で勉強しておく…
など、技術的な事よりも、そういった判断や行動が
ひとりでも的確にできていればOKなのである。
そこさえきちんとしていれば、
後は班長や先輩達がフォローするので、
大きなミスやお客様とのトラブルになる事などはほとんどない。

なので新人スタッフ育成の当面の目標は、
何とかして早くそのレベルまで持っていくことなのですが、
昨今のように契約スタッフの質が低下していると、
教えられる方よりも教える側の適性を
問われる事が現場では多い。
それによって新人スタッフの仕上がりに、
大きな差がついてくるからです。

A班の神田班長(30代前半/男性スタッフ/仮名)は、
その普段の仕事ぶりから見ても、
新人の育成や指導には向かないと思える人で、
彼、そもそも人に物を教えるのが面倒で嫌いなんですよね。
だから、チョコチョコっと表面的な事を簡単に伝えて、
「あとは自分でやって。」でおしまい。

反面、他人にはとても批判的な性格の持ち主であり、
少々至らない点のある新人が入って来ると、
二言目にはすぐに「アイツはダメだ。使えない。交代してくれ。」
と、口角泡を飛ばす感じで言ってきます。

悪人じゃないよ。本当は茶目っ気があって、
むしろ矛盾のない論理で周囲を煙に巻く愛すべき超サボリ人^^;
けれど、そんな彼の「アイツはできない」は毎度の事だし、
だからと言って指導の工夫や人への寛容さを求めても、
大方のスタッフ達があきらめているのと同じく、
私もすぐには不可能だと思った。

彼には相当のエネルギーを持って対峙しないと
相手の意見を聞き入れないところがある。
話の矛盾を突かれ、理論的に「負けた」と思ったときしか、
人の言う事を聞きいれない。
だから正社員達や主任・課長さえも契約スタッフの彼には、
毅然としてものが言えず、その状況に苛立つ女性スタッフが、
周囲に不満を漏らし始めるんだよね。誰か班長を指導してください!
神田班長は昨年5月に入った新人を育成もせずに放置しています!

こんなときでも、男性スタッフは聞いてもあまり多くを語らない。
長い間人を見ていると、男性は押しなべて上下関係には従順で、
その上スキルに大きな差があったりすると、
相手に向かって物申す事はほとんどないし、
どちらかと言えば静観している事が多い。
(だから何か問題が起こっていてもなかなか表面化しない)
そうね、皆一様に「できないのはできないヤツが悪いんだろ?」
この真理に誰も表立って太刀打ちできないのだ。
特に男性は矛先が自分に向けられるのが怖いのだとも言える。

    *    *    *    *    *    *

昨年5月に入った新人スタッフが、未だ以ってシフト入りしていない。
神田班長に理由を問えば、「彼は仕事ができない」からだと言う。
が、そもそもこの話が持ち上がってきたのは、
「神田班長がリーダーとしての仕事をあまりに何もやらず、
新人スタッフの育成・指導さえもほったらかしにして、
自分は仕事中に2ちゃんねるを見たりアスキーアートに没頭したり、
好きな事ばかりして遊んでいる」という声が
人づてにあれこれ上がり始めていたからで、
新人さんができる、できない、の以前にまず、
やるべき事を彼が新人にきちんと教えたのかどうか?
という大きな疑問が残った。
なのである日、神田君に聞いてみた。

「神田君は穣太君(20代前半/男性スタッフ/仮名)を
できない、使えない、ってそればっかり言うけど、
一体どこがどうできないの?
新人は普通、最初から何もできないのが当たり前で、
それをそんな風に断じてしまっては、
何も始まらないんじゃないの?」

「それじゃ、正直に言いますけど、
彼、はっきり言ってこの仕事無理です。
使い物になりません。
ぷらたなすさんは、俺が指導や育成をちゃんとやったかどうか、
疑っているみたいですけど、俺はやるべき事は全部やりました。」

(ホントかよ^^;…みんなは、そうじゃないって言ってるぜ(笑)??)

「一体、これ以上、何をどうしろって言うんですかっ?
やってダメなものはダメなんです。
彼をなんとか一人前にしろってどうしても言うのなら、
俺はここではっきり断ります!
もし俺が引き受けたとしても、そのためには
ものすごく時間がかかりますし、
それに大変な稼動を取られます。
班長としての業務をすべてほったらかしにしていいと言うなら、
やってもいいですけど、だったら班長業務は
この際すべて投げてもいいんですね?」

(班長業務?すでに"ほったらかし"という話だけど^^;…??)

私はここで神田君と不毛な議論に時間を割く気もなかったので、
言いたかった言葉はこの際飲み込み、
穣太君をもう一度きちんと育成するためには、
さっさと担当者を変えちゃった方がいいな、と即断した。
そして最後に尋ねた。

「穣太君だけど、シフト入りできないというのは、
どういった判断によるものなの?」

「数え上げればキリがないですけど、
まず彼は、メールができません。
お客様の質問に対してあさっての方を向いた回答をしますし、
それ以前に、文章がメチャクチャです。
言葉の使い方もおかしいし、一向に直らないし、
今この時点で彼の作ったメールは、
とてもとてもお客様に返せるようなシロモノではないので、
彼の名前で出されているメールは、
ほとんど誰かの添削が全般的に入っていて、
正確に言えば、すべて他人が書いたのと同じぐらい、
全部直しています。」

メール!!!!
おっと!それをすっかり忘れていた!
そうだ。メールだよ。
私達の職場の交代制は土日や夜間は、
たったひとりでユーザー対応をする勤務形態ですが、
(法人相手なのでそれで十分)
電話だけでなく、メールでも質問を受け付けているので、
的確な回答をメールで返せなければ、
確かにシフト入りは難しい。

しかも、こればっかりは経験とセンスもあるので、
ビジネスメールの経験を積まずにこの職場にやってくると、
人によっては周囲の集中砲火を浴びて、
大いに苦戦する事になる。
それに文章というのは個人差がとても大きい。

それらの指導をお願いするなら、
やはり神田君ではなく別の人の方が絶対適任だと思った。
神田君はさ、自分と同じ程度の新人なら指導できるけど、
圧倒的に差のある新人さんの育成は、やっぱり無理ね。
彼の話を聞いていると、中身に間違いはなくても、
感情が先に立ってしまっているのがよくわかる。

「できないのはできない人が悪い」
それは本当ね。でももしかしたら彼に人をつけると、
「できる人までできなくしてしまう」かもしれない。
それは、人の心の安定と伸びやかな成長は、
相手の受け入れ(肯定)があってこそ、と、
私自身が信じているからだ。

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2007.02.10

厄介な人1~教えているのか?

1011

事の始まりは、A班の神田班長(30代前半/男性スタッフ/仮名)が、
班長としてもあまりに何もやらないばかりでなく、
苦情や難しい調査など、やりたくない事はさらっと人に押し付けて、
自分はヒマさえあればじゅう2ちゃんねるを見てニタニタしたり、
アスキーアートの作成に没頭している!
というスタッフの不満から始まった。

本来、神田君ってそういう人なんだよね。
知識もあって優秀な分だけ、どこか職場をなめている。
本当は仕事もお客様対応も億劫で大嫌い。
一日中部屋にこもってオンラインゲームに熱中したい人。
が、仕切りの能力が決してないわけではなく、
毅然とした指示も出せるし、リーダーシップもある。

リーダー(班長)に据えても、自信が持てずにあれこれ考えすぎて、
スタッフに対して支持も仕切もできない人が居る中で、
それはそれで得がたいキャラクターなので、
わかっていながら任せて放っといてた…というのが本音かな。
そしてそれは実際、あまり表面化せず、
一見長いこと上手くいっているように見えた。

しかし、最近それが少しずつほころび始めてきた。
こんなとき、女性スタッフは男性スタッフのように、
「神田さんはああいう人だから仕方ないんじゃないですか?」
と言って感情を表に出さずにやり過ごしている事はあまりない^^;
「変だ!」「おかしい!」「それって不公平じゃない?」
と段々不満が募ってきたら、いろいろな手段を使って
大なり小なり周囲に情報を発信し始める。
ま、そろそろみんなも腹に据えかねてきたんだね。

そんなわけで、最近チラホラ聞こえ始めてきた神田班長の悪評。

私は何人かいる班長達のうちでも判断が的を得ていて、
全体を非常に的確に見渡せる事ができる
B班班長のレイちゃん(20代後半/女性スタッフ/仮名)に、
「何か聞いてる?」と尋ねてみた。
彼女は班長になってからの1年間で
苦労した分だけ大変優秀なリーダーさんに成長した。
かつてこのblogで愚痴ったりした事がウソのようだよ。
苦手だった"スキルの高い男の子"も完全掌握だね。

「まあ、いろいろ話は聞いてますけど…
目下のところ、穣太君の指導・育成を他人に押し付けて、
自分は全然何もやっていないところに不満が集まってますね。
穣太君は入ってから8ヶ月にもなるのに、
いまだシフト(交代制のローテーション)に
入れていないのも、班長の放置と怠慢が原因って、
みんな言ってますよ。」

え?

席に戻った私は、慌ててA班のシフト表を見てみた。
先月も今月もずっとカレンダーどおり。
あらららら、迂闊だった。通常新人さんは三ヶ月前後で
遅番や夜勤も含めたローテーション勤務のシフトに入り始め、
そこでようやく先輩達と肩を並べる同列の立場になる。

よその班で起こっている様々な問題に対処しているうちに、
A班の穣太君が就業8ヶ月になる当月になっても、
いまだシフトに入っていないことに、
指摘されてはじめてようやく気がついた。
なんじゃこりゃ?何やってんだ一体???

私はタイミングを見て神田君を呼んで尋ねた。
「穣太君なんだけどさ、一体なんで今もシフトに入ってないの?」

「そんなの…無理だからですよ。」
「無理?」
「無理ですね。できません。」
「できません?できないってどういう事よ?」
「彼は夜間や土日にたった一人では
まともに仕事なんかできないです。」
※職場は土日祝と夜間は当番者が単独1名で業務に就く。
※法人相手の調査系のユーザーサポートなので
  平日の日中帯以外はそれで十分足りる。

「そうなの?それはどうしてわかるの?
実際にやらせてみたの?」
「やらせるって…(苦笑)、そんな危険な事…」
「できない人をできるところまできちんと教えないから、
いつまで経ってもできないんじゃないの?」
「(かなりムッとしてケンカ腰に)教えました。
教えました。ええ、何度も教えたし注意も指導もしました。
(ムキになってくる)それでも彼はで・き・な・い・んです。
できないっていうか、やらないんです。
これ以上、一体おれに何をどうしろって言うんですかっ?」

私はこの時、神田君の言い分を毛頭信用していなかった。
神田君の教えっぷりの手抜きといい加減さは暗黙の周知の事実で、
土台となる基本知識の部分から、
丁寧に正確に繰り返し教えていかなくてはならないところを彼は、
「ああ、それに関してはそんなもんでいいから」
「これをやったらこうなるぐらいの話なんでマニュアル読んどいて」

ユーザー対応上、新人スタッフに不明点を質問をされても、
「そんな馬鹿なユーザーには付き合う必要ないから」
「またかよ、マニュアルの○ページ読めで終わらせろよ」
「営業がクソだから、低脳な客ばかりがくだんない質問してきて…」

おいおい、なんだよ、それって。
あまりに聞き捨てならないときは、割って入って、
「そういう言い方はするもんじゃないでしょ」と注意しても、
これがなかなか直らない。
"言ってもできない"のは、オマエのほうなんじゃないの??
そんな人が新人スタッフを「使えない」と酷評しても、
誰が素直に信じるもんか。
あんたって、いつでも誰に対しても、二言目には
「アイツはダメだ」だよね?

後日私は、"虎の衣を借りる狐"作戦に出る事にして(笑)、
気心の知れている今野主任(50代前半/男性性社員/仮名)に
「ろくな育成もせずに、『使えない』と言って指導放棄し、
昨年夏の新人スタッフが未だに立ち上がっていない。
そのせいでシフトにも入れずに居るから、突っ込み入れてくれ。」
と、確認という名のプレッシャーを掛けてもらった。

主任曰く、
「ぷらたなすさん、先日の件、俺、神田さんに言ったから。
彼、2月には入れるよう頑張りますって言っていたよ(笑)。」

は~、私には感情的にムキになっても、
正社員の上司には、こうだもんなぁ。。。
ま、いいや。やってくれれば何でもいいのだ。
そこは一切問わない。

    *    *    *    *    *    *

後日、「主任から突っ込みが入った」と嘘をついて^^;
穣太君が2月にシフト入りするための指導案について、
神田班長と相談する事にした。

そしてその前に、女性スタッフ達にメッセンジャーを投げて、
「正直、どうなの?」と、聞いてみた。
由香ちゃん(30代前半/女性スタッフ/仮名)から即レス。
「はっきり言って、全然何もやってませんね、今まで。」
縫子さん(40代後半/女性スタッフ/仮名)からもレス。
「彼、自分が面倒なもんだからすぐに人に押し付けちゃうんですよ。
あれで、育つわけなんてないです。」

だよねぇ。。。

由香ちゃんから再度。
「神田さんは、嫌な事はみんな前原君に押し付けちゃうので、
前原君も困るって思っているんですけど、
前原君は口下手な人なので神田さんにそれを言えないんですよ。
だから、横で見ているとかわいそうで気の毒で、
何とかしたいといつも思っているんです。
穣太君の育成の件だってそうですよ。
自分は何一つ教えないで、『それじゃ前原君、明日からよろしく(笑)』
って、何なのそれって…とがっかりします。」

A班は構成メンバーが皆優秀で人柄も大人。
傍から見ているといつも活気と笑い声が絶えず、
うちの課の中で一番うまくいっている稀有なケースだ…
と思っていたけど、関わってみると決してそうでもなさそうです。

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2007.02.07

「ゆうとおん」の畑理事

去る1月17日に、授産施設で働く男性が、
3歳の幼児を歩道橋から投げ落として重傷を負わせ、
殺人未遂の疑いで逮捕されるという事件があった。


時間が経てばリンクも消えると思いますが…↓
http://www.asahi.com/national/update/0118/OSK200701180038.html


今夜、NHKのニュースウオッチ9を見ていたら、
容疑者が通所している「ゆうとおん」という施設の、
畑さんとおっしゃる理事の方が、
経済的に困難な状態の容疑者の親に代わって、
ご自身が被害者の方への賠償責任を負う…
と明らかにした旨の報道がありました。


それが何を意味して具体的にどういう事になるのか、
私にはイメージも確信も何もないし、
冷淡と言えば冷淡な反応なのですが。


ただ、私はTVで畑さんとおっしゃる方の
数分間のコメントを耳にして、
目の奥が少しだけ熱くなりました。


でもたぶん、感動したからではありません。


blogに書こうと思ってそのつもりで聞いていたわけではないので、
一字一句をここに書くことはできませんが、
「想定外だった」と語る様子や、
どの施設からも断られた容疑者を受け入れた時の心情、
大金を決して持ち歩かせず、
一日毎に封筒に小分けにして渡し、
「(この金額だと)行動範囲は限られてきますから」
と、不要に遠出させないための工夫などを聞いていて、
この方は、障害者と真剣に向き合い、
彼らの幸福を真に願っている人なんだなぁ…と、
強く感じました。意思っていうのかな、そんな感じ。


私はこの理事長さんが、容疑者の親御さんに代わって
賠償責任を負うのが当然であるとは全然思いません。
この方も、ある意味災難ではあります。
(個人的には、「想定外」というのは正確な本音ではなく、
「なにかある」事を常に警戒しつつも、
"まさか"の隙をふいに突かれてしまったような
感覚なのだと思います。)


ですが、畑さんという方が冷静に考えた上で、
自分の正当性を主張したとしても、
たぶん瞬時に悪者になってしまい、
いわれのない批判や軽蔑を受けて、
世論を敵に回してしまうかもしれないね。


それをこの方はたぶん、良くご存知なのではないかと思います。


容疑者が以前から似たような事件を起こしている
再犯者というのも痛いよね。。。
「だったらもっと事前に何とかならなかったの?」というのが
一般的な感覚でして、確かに特殊な性癖のある人は、
いかんともしがたい固執から離れることはできないのでは?
と、私も思う。
だけど、(悪い予感はあったから)公的などこか(忘れた)に、
支援の相談をしに行っているわけで、
何もしていないわけではない、と。


2chで


精神病院で働いている俺が思うに、
この理事長は悪い人ではない。
というよりもこの業界ではいい人だと思う。


上記のようなコメントを見つけました。
私もまさに同感です。
そして、いい人であるがゆえに、
苦難の道を好んで歩いてしまっている気もしますが、
この方はこの方なりに、
「どう考えてもそうするしかない、それが最善」
と、わかってやっている部分もあるのではないかと、
私は思ったりします。


私は家族や近親に知的障害者はおりませんし、
その苦労をリアルに感じる事はありません。


ですが、そこまでのものでは全くないにせよ、
"自分達とは少し違う思考をする人達"の存在は、
職場において痛いほどよく感じており、
それが持って生まれたものでどうしようもなく、
たとえ仕事の現場では「使えない」人であっても、
それゆえに差別やいじめを
受けるべきものではないと考えたりするので、
この方の心情は理解できますよ。


こちらの方のblogのコメント欄に、

『「ゆうとおん」の畑理事長が今日の記者会見で「知的障害者一般が事件を起こすわけではないことを理解してほしい」と訴えたのが印象的だった。』

とありますが、そうだよね、とも思います。


だから、ふと目頭が熱くなったのは、
ささやかな共感なのかもしれません。


けれど私は職務上、「使えない人」には、
自己判断でクビを言い渡す役目でもあります。
意外にもそこに悩みはありません。


仕事の上で、社会性の有無や想像力の欠如は、
業務スキル以上に致命傷で、
厳しい判断を言い渡さなくてはいけない事もあるし、
それは、組織の品質と集団の平和を守るためでもあります。
冷たいようですが、そうしないと
職場のコミュニティが疲弊し崩壊する危機をはらんでいるからです。


例え話ですけど、コピーを10枚お願いして、
「できました」とすぐに依頼者に持って来るべきところを、
取るだけ取っていつまでもずっと自分の机の上に置いたまま、
何度注意してもそれのどこが悪いのか理解できないような方を、
職場は必要としておりません。


ならば、彼らはいったいどこへ行けばいいのか?
彼らの幸せはどこにあるのか?明るい未来はあるのか?
誰が悪いのか?責任は誰が取るべきなのか?


そんな(たぶん解決不能な)複雑な思いが、
私の目頭を熱くしたのかもしれません。
疲れてんだな、あたし。
きっとね…


2007.02.06

居心地のいい他人

今日(正確には昨日になってしましましたね)、
1月の検査の結果を聞きに某総合病院に行ったら、
先生の都合で時間が13:00を回ってしまいそうだとの事。


この病院の外科は乳腺外来の評判が良くて、
いつも私とほぼ同世代か、
それ以上の年齢の女性達ですごく混雑しているので、
最終結果を聞きに行くだけでも、
一日がかりだろうと思い有給をとりましたが、
本当は私が見てもらっている先生は、
今日は外来担当じゃないんですよね。


自分の仕事の都合上、
少し無理を言って今日にしてもらったので、
担当の先生、今は病棟のほうにいるらしいのですが、
文句は言えません^^;


が、時計を見るとまだ30分以上もあるので、
看護士さんに断って昼食を食べに行く事にしました。


というのも、前回売店で買った
ナンのサンドイッチがすごくおいしくて、
今日はそれを食べるのを楽しみにやってきたからです。
「え~13:00過ぎになったら、売れちゃうよ~!」
おなかもすいてきたので、
もうそればっかりが気になっちゃって(笑)、
こういうときのこらえ性がないのが、
もう若くはない、いい証拠だと思います。


私、40代後半に足を踏み入れてしまいましたが、
若い頃と比べて何が違うって、
"おなかがすいた""のどが渇いた""眠い""熱い""寒い"などの、
生理的欲求への耐性が格段に落ちていると思います(爆)!
うちの母がどこに行くにもバッグに飴玉を忍ばせていたり、
ちょっと歩くとすぐに「のどが乾いた。なんか飲もう?」
と、自販機に向かう事に合点が行き始めた私です^^;


そんなわけで、
「あと30分しかないし今急いで食べなくても、
ここでずっと待っていても構わないですよ?」
と、看護士さんが言いかけたのをさえぎり、
「30分で食べてすぐに戻ってきます」
と、一礼して駆け足で売店に向かった自分を、
ちょっと我が儘だな~と思いましたが、
「ナンのサンドイッチ」で頭が一杯の私は、
今日はごめんなさいモードね(笑)。


売店に駆け込むと、まだあった!!!良かった!
そうそう、これがもう一度食べたかったのよ!
シールを良く見ると「ジャンヌ・ダルク」と書いてあり、
名の知れた大手のパンや惣菜会社ではなく、
市内某地区のパン屋さんのものらしい。
ふーん。今度お店のほうに直接行ってみようかな。
だっておいしいよ、これ。


さて、お目当てのモノを買ったのは良いけど、
どこで食べようかな。
前回は自販機コーナーのベンチで食べたんだけど、
時間が14:00過ぎと遅かったせいもあるのか、
缶コーヒーを飲んでいる人は居ても、
モノを食べている人は誰も居なかったので、
チョイ人目が気になったし…


ふと見ると売店内のパーティションで区切られた、
すごく狭くて窮屈な場所に3人掛けの長椅子がひとつと、
プラスチックの軽くてチープな4人掛けのテーブルセット。


ああ、ここで買ったパンやお弁当類は、
あそこで食べてもいいんだな…と思い、
店員さんに尋ねると、「どうぞ、どうぞ!」と、
笑顔で勧めてくれました。


仕切りの内側に入るとテーブルには、
知り合い思われる年配女性の二人組が
話をしながらお弁当を食べていたので、
(病院の関係者ではなさそうです)
私は自動的に空いている長椅子へ。


長椅子といっても座席が個々に分かれているタイプで、
私はバッグと脱いだコートを丸めて、
それを真中の座席に置いて自分は左端に座り、
ナンのサンドイッチのラップをはがし始めると、
すぐに4人目のお客さんが入って来ました。


テーブル席は仲よし年配女性二人組が、
さかんにおしゃべりしている真っ最中で、
そのテーブルにつくのはちょっとね^^;…
なので私の次に来たその(これまた)年配の女性は、
私が座っている長椅子の右端の空席に座ると思い、
私は彼女のために長椅子の真中に置いていた自分の荷物を
半分だけ寄せて相手のために荷物のスペースを作ってあげました。


ですが、彼女は少し躊躇しているようでした。
今思えばたぶん長椅子の自分のヒザの上ではなく、
きちんとテーブルの上に置いて、
買ったものを食べたかったのだと思います。


が、そのときは、
荷物の置き場所に迷っているようにしか見えなかったので、
それに気がついたテーブル席の片方のおばさんが、
「荷物、ここに置いてもいいですよ?どうぞ?」
と、今までお互いに対角線上に座っていた席を移動し、
お友達の真向かいに座りなおしてくれました。


ですが私の次に来た彼女は、
やっぱり長椅子の方が良さそうと思ったようで、
「あら、ゆっくりお話していていいですよ。」と恐縮したあと、
長椅子のほうに腰掛ける姿勢をとりました。
なので、私はもう一度真中の座席の自分の荷物を
ギュッと自分の方へ寄せて、
彼女が荷物をすぐに置けるようにスペースを半分空けました。


あぁ、すみません。
少し微笑んでその人は私に会釈すると席に座り、
私と同じように売店で買ったサンドイッチのパックを、
パリパリと音をさせて開封し始めました。


すると間もなく、友達同士の二人組みは食事を終え、
去った後入れ替わりに、
今度もまた60代ぐらいの一人の女性が入ってきました。
と思うか思わないうちに、やはりまた同じ年頃の女性が来ました。
二人は「相席…よろしいですか(笑)?」
などと互いに穏やかに声を掛け合って対角線上に座り、
買ったばかりの昼食を空けてそれぞれに食べ始めました。


三人掛け長椅子の左席に座っている私と、
同じ椅子の真中を挟んで座っている右席の女性と、
テーブルに相席して斜めに座っている女性が2人。
40~70代と思われる他人同士の女性が私を入れて全部で4人。


誰も口を利かずに、
売店で買ったパンやお弁当を無言で食べるのみなんですが、
それなのに、なんて居心地のいいお互いの距離感なんでしょう。
こんなに狭いところに他人同士が座っているのに、
人目を気にするでもなく、相手を無視するでもなく、
「とにかく手近なところでパッパと食べちゃいましょう」
という共感の元に、緊張もせず、会話を強いられる事もなく、
全員がリラックスした気持ちでご飯が食べられるなんて。
私はそこに流れている人をトゲトゲしくさせない空気に、
妙な感動と安堵感を覚えて、
これは絶対今日の日記に書こう!と思って帰宅しました。

いえだいたいね、
こんな狭くて椅子も座り心地が悪く、
どう見てもゆっくりできなさそうな場所なのに、
一人でさっさとご飯を食べちゃおうなんて思うのは、
年代が違っても結局似たもの同士だと思うんですよ(笑)。
結構一人でなんでもやっちゃうし、
あまり至近距離に他人が居ても気にならないタイプ…かな。
でも、言葉を交わさなくても同じ感覚の人達だな~なんて思う事、
最近は本当に滅多にないんですよね。


だから敢えて書くべき内容でもない、
取るに足りない些細な事なんですが、
この30分間は、なんか私、妙に幸せだったのね。
皆さん、ご年配というのも空気が穏やかで、
良かったのかもしれないですね。
うん。こういう柔らかいやり取りって、
そういえば、今の若い人達にはないものかもしれないなぁ…
などと思いましたもん。
でも昔ってもしかしたら、どこに行ってもこうだったのかもね。


さて、前の日記で、「今、職場が大変」と書きましたけど、
片や自分の職場に目を向けると、
ある特定の男性スタッフがすっかり厄介物扱いされて、
グループ全員から断固拒否されている状態。
もう、話が「一緒に仕事したくないから辞めさせてくれ」
という状況になってます。


が、その原因はその男性スタッフが
生れ付き持っている(と思われる)特異なキャラクターにあります。
社会性・コミュニケーション・こだわりの強さ・想像力の欠如…
そう、またもやあの話です。。。
リーダーが昨年の春、さっさと早い段階でサジを投げ、
育成や指導を他人任せにして放置し、
ずっと長い間無視してしまったために、
逆に問題が外から見えず、私も全く気がつかずに、
数ヶ月も経った今になって班員の不満が爆発して来たのです。


集団の中に同じ発想を持ち得ないスタッフがいると、
どんなにメンバーが疲れ果てギスギスすることか。
が、それは彼にやる気がないからではなく、
性格が悪いからでもないんですよね。
でも、「もうこれ以上一緒に仕事したくない」
と、優秀で才能のあるメンバーがそれぞれに、
嫌気が差して退職まで考えている現実があります。


例えば今日のお昼のように、
何も誰も言わなくても皆が同じ感覚と人間関係の距離感で、
他人と関わっていければ良いのに…と思いますが、
それがとても困難な事とわかっているだけに、
今日のような穏やかで平和なひとときを、
余計に幸せに感じるのかもしれません。


そうね、あそこに波長の合わない人が入って来たら、
私は途端に居心地が悪くなって、
なんとなく途中で別な場所に移動したかもしれません。
難しいよね。人の性とこの世の中は。。。


乳腺外来も本日で終了

昨秋の健康診断で、
胸に乳腺腫やのう胞・石灰化(?)が見つかり、
「乳がんではないようだし問題ないと思いますが、
念のため再検査を」と勧められ、
「婦人科じゃありませんよ!外科ですからねっ?」
と何度も念を押されて紹介状を手に訪れた
某総合病院の乳腺外来。


再度の超音波と一度のマンモグラフィーで済むと思ったら、
「良性だと思いますが念のため…」と、毎回同じセリフで、
再検査(細胞診[穿刺吸引細胞診]/私の場合は超痛い!脂汗)
※ネットで見た「痛くない」なんて大嘘っぱちだ!!!
  実は場所に寄るらしいけど。
+再々検査(病理組織検査[針生検]/麻酔でもやはり痛い!)
をして、初診から二ヶ月たった本日、
やっと「黒ではありません」と先生のご神託が。
そして「ようやく黒白がはっきりしたので、
あとは半年毎の経過観察で」という事になりましたよ~。


個人的には胸騒ぎも悪い予感も全くなく、
本当に全然心配していなくて、
そんな事より公私共に諸事雑事が多くて、
今日が予約日だったことも先週忘れかけていました。
(後でまた書きますが、今、ちょっと職場が大変なんです。。。)


というか、
「悪性のものではないですね、でも一応見てみましょうね」
と言う言い方をどこでも誰からもされると、
ここまでやってやっと見つかるようなものなら、
逆にたとえ乳がんでも命がどうこうという事はないんじゃないの?
なんて、やけに気楽に考えちゃうので、
素人というのは"たち"が悪いですよね(笑)
どの先生も説明があっさりしていて明るいし^^;


一応ネットでも調べたり体験記を読んだりしましたけど、
大きな手術が必要な人は、
早い段階で先生が渋い表情をするみたいなので、
私の場合は、違うかな、と。
といって、あまり敵の足元見ちゃいけないと思いますが。


ところで私が利用した某総合病院は、
外科だけが異常に混んでいて、
患者さんの性別や年代を見渡してみると、
皆さん、やはり私と同様に乳腺外来が目的だと思われます。
案内板には「外科」としか書いていませんけどね。


私、総合病院なんてほとんどかかった事がないので、
自分がよくわからないだけかもしれませんが、
紹介状を持ってはじめて訪れた初診の日なんて、
午前中に行って会計終わったのが夜の7時だよ。。。
というか、総合病院の会計担当者が、
その時間まで残っていて、
次々にカルテを持ってやってくる外科の患者さんの為だけに
窓口が一つ開いているの、私は初めて見ました。


それに混雑がひどい日は、婦長さんみたいな人が
マンモグラフィー(レントゲン)を終えて
再び受付に戻って来た患者さんに
だいたいの診察時刻の目安を教えてくれるんですよね。


私も、窓口に写真を出したら、
「ぷらたなすさんは、15:30過ぎになると思いますので、
その間、昼食を取って用足しがあれば、
それも済ませて構わないですよ。
病院を出てもいいし、家が近ければ一度帰宅しても結構ですので、
15:30になったらまた来てください」
と、言われてびっくり。


ネットでも評判が良さそうなのでその病院にしましたが、
混んでいる時の対応もなかなか!
お陰様でその時は、
車で郊外のショッピングセンターまでひとっ走りして、
(といっても、自宅の近所ですが(笑))
チャックが壊れてしまったブーツをその日のうちに、
買い換えることができました。
これは、正直大変ありがたかったです。


そしたら、今日は客さばき?がさらに進化していて(笑)、
11:30にいつもの婦長さんらしい人が出てきて、
居合わせた患者さん全員に向けて混雑のお詫び告げた後、
「希望者には診察時刻をお教えしま~す」
するとみんながぞろぞろと一列に。
「22番の方ですね。そうしますと15:00過ぎになりますね…」
なんて、見るもの聞くものすべてが物珍しいぷらたなす(笑)


私は本日、結果だけだったので早かったですが、
あんなにたくさんいた患者さんが、
昼前に一斉にどこかにいなくなってしまったのが、
なんとも不思議な光景でした。
いまどきの総合病院がどこもこんな風だったら、
ごめんなさい(笑)


それにしても、女性のがんの中では、
乳がんが胃がんを超えて今は第一位だというのに、
私が見た限りでは、どの病院の検索サイトにも、
診療科目として個別には載っていないんですよね。
いくら「外科」だといっても、
マンモグラフィーなんてどこでもできるって感じじゃないと思うのに、
それを公に掲げるとなんか経営や税法的に、
不都合でもあるのかなぁ…
なーんて、つい疑問とうがった見方をしてしまう私でした。

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