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2005.12.27

アスペルガーな研修

【過去記事一覧】~after Asperger~
・アスペルガー症候群 ・私達の困った性格 ・アスペルガーな人々 ・アスペルガーな日々 ・アスペルガーなつき合い方 ・アスペルガーな考察 ・ASをめぐる夫との会話 ・対話のチャネル ★アスペルガーな研修 ・アスペルガーな現場 ・アスペルガーな新人 ・やっぱり阿吽の呼吸ナノダ ・ASを伝えるほどに広がる誤解 ・羹に懲りて膾を吹くか…? ・彼は本当に立ち上がれるか? ・NGでも走ってみることにしたが ・読めない人 ・面接するほうのキモチ ・厄介な人(1~12) ・Mindblindness?自閉症について ・うちの亭主のメールも変(笑) ・連敗中!句読点をつけない人 ・アスペルガー症候群と犯罪 ・自閉症的なスタッフの指導 ・誉める事・評価する感受性 ・なぜ危機感にこだわるのか ・アスペルガーなユーザーサポート ・やっぱダメかな… ・その人の退職 ・お互い不幸にならないために ・この新人さんは断ろうと思う ・事前研修の私の今後の課題

就業前研修において、
成長が確認できない方は、
契約をお断りすることにしている。
先月から、そう方針を変えた。

たった一週間やそこらで、
なにがわかるのか?
これから経験を積んで伸びていく可能性を
うわべだけ見て性急に判断しているのではないか?

心ある人なら、
この一文を見て腹立たしく思うことだろう。。。

ところが、この研修自体に不向きな方がいる。
講師である私が、研修を受ける数名の新人さんを前にして、
どの人にも等しく平等に接しようと誓って見回す初日から、
他の人の5倍ぐらいの接触時間を持たざるを得ない人物。
それがアスペルガーさん(以下ASさん)だったりするのだ。

    *    *    *    *    *    *

例えば私が、衣料業界かなにかの研修講師で、
(↑無理のある設定(笑) )
綿とかウールとか、ポリエステルとか、
衣類の素材の見分け方なんかを
ひとしきりレクチャーした。と、いたしましょう。

そして、一枚の衣服を掲げて、
「それじゃ、これの素材は何だと思いますか?」
と、すごく簡単な一発回答狙いの例題を出して
次なる研修項目の導入部分につなげようとした、とします。

そこで全員が心の中で、「ウール」とつぶやいている中、
トップバッターに指名した人は
「それは、セーターです。」と回答してしまいました。は?
(段取りの腰を折られる(^^; )

「笹木さん、そうじゃなくて『素材』だよ?」
これ、素材は何のセーター?」

「男性用のセーター。」

「うん、だから、そうじゃなくて、この男性用のセーターの「素材」は?」

「…素材?あぁ、素材ですか!
  はい、『素材』とは、繊維の種類です。」

「うん、そう、そうだよね^^;
 だったら、このセーターの素材は?」

笹木さんは、一瞬黙ったあと、急にノートをめくり始め、
慌てた動作が少し粗雑だったので、
机の上から筆記用具を入れた缶ケースを
派手な音をさせて落としてしまい、
女の子がびっくりして、一瞬「キャッ!」と声を上げ、
周りがワラワラと立ち上がって、
床に散乱した筆記具を拾ってあげる。

これで20分ぐらいのロス^^;。。。

気を取り直して研修を続け、
合間合間に、作業実習を挟むと、
笹木さんは、毎回いつも人と違う事をやっている。

「笹木さん、今何やってるの?
今の課題は、布片を素材ごとに台紙に貼っていくことだよ?
あれ?研修前に渡したサンプルはどこ行っちゃったの?
そうじゃなくて、さっきみんなに配ったやつ。」

「え?昼休みにロッカーにしまっちゃったの?
じゃ、すぐ行って取ってきて。」

が、待てど暮らせど、笹木さん、戻ってこない。
心配になってロッカー室にのぞきに行くと、
ガサゴソとなにやら、まだ探している。

「あったの?」

「それがないんです。」

「あぁ、それじゃ、いいよ。予備があるから戻って。」

次の研修項目に必要な作業だから、
一人だけ飛ばすわけにも行かず、
その間、他の人は全員「笹木さん待ち」。
段々私語が交わされ始め、
そのうち、挙手してトイレに立つ人もチラホラ。
段々緊張感が欠けて来るのがわかる。

笹木さん、課題終了。
気を取り直して続行。
笹木さんは、相変わらず、
課題の終了が周りの人と比べてとても遅い。
直前の研修内容が理解できていれば、
誰でもすぐにできるんだけどな。

理解度の確認のために
こちらから逐一問い掛けている質問にも
なかなか正解が帰ってこない。

理解不足で回答を間違えているのではなく、
前述のように、質問の意味からはずれた
とんちんかんな回答である事が多いため、
研修内容を本当に理解しているのかどうかが、
どうにもわからない。

実際はわかっているのに、
単に質問の主旨を履き違えて
かみ合わない回答になるのか、
それとも根本的に理解できておらず、
何もかも身についていないのか、
感覚的に把握できない。

そこそこの進学校を出ていたりするので、
「頭が悪い人であろうはずがない」
という、固定観念も判断を邪魔する。

でも、冷静に考えてみれば、
その段階ですでに、お客様対応の仕事には
不向きなタイプのASさんなんだよね。

衣料業界と仮定したので、
ほかの新人さん達は、
そちら系の専門学校などの出身者とすると、
周りの人達は皆、
彼が「初心者だから」理解不足で、
「未経験者だから」何事も一歩遅れてしまうと感じているが、
もう、わたしの疑問は…初日からすでに色濃い。。。

その日の研修が終って解散した後、
なぜか笹木さんが息を切らして研修室に戻って来た。

「忘れ物?」

「すみません。布地のサンプル、
ポケットの中にありました。
こちらは、一体どうすればいいでしょうか?」

「あ、じゃ、返してもらってもいい?」

「はい。あの、それから、
朝に『忘れた』とお話した印鑑なんですけど、
それも、ポケットの中にありました!
今、押してから帰ります。書類は…あれ?」

「あ、さっきうちの担当者が回収しに来たじゃない。
提出のあった分と用紙はもう、一度引き上げちゃったよ。
回収するときに、笹木さんにも声をかけたと思ったけど。」

「あー、あれがそうだったんですか。」

「え?わかってなかったの?」

「いや、誰か来たな~とは、思ったんですけど。」

「うん、だから、明日でいいよ。明日、印鑑忘れないでね。」

「はいっ!お疲れ様でしたっ!」

    *    *    *    *    *    *

そう言えば、過去にもこんな人は何人かいた。

あの頃は私も、
初心者なのだから、わからなくて当然、
実務経験を積めば誰でも成長していくはず、
と、思っていた。

やがて、何かの得心を得たり、
大化けする転機が誰にも訪れる、
と、思っていた。

が、それはどうも違うらしい…と、
最近はっきりわかってきた。

過去に研修した同じタイプのスタッフさんは、
昨年、ことごとく企業の担当者から
企業先での研修中に交替を要求された。

私はあまりに早い見切りと、
担当者の見る目の無さに腹を立て、
競合他社のスタッフばかり偏重するその姿勢に、
不平等を感じて無念に思ったが、
今思えば、見る目がなかったのは、
私のほうだったんだ。

他社はすでに、彼らの存在に気がついていて、
何段階もの「見極め」を事前研修に組み入れていたんだな。
いまなら、それがよくわかるよ。参ったな。。。
(そして、今度は別な他社が私達に対して
同じような状況を作り出すことになろうとは…)

    *    *    *    *    *    *

このままでは限られた研修時間の大半が
彼一人に割かれてしまうことになる。

5日間で規定項目をきちんと習熟させて
就業させなければならないのに、
今の研修は、資質の無い一人を生かして、
才のある5人を殺す研修だ。

そんなの、いいわけない。

2、3日経っても、状況はまったく変わらず、
この方を入れた場合の現場側のあれこれも
1日ごとに、より強く懸念されていく。

    *    *    *    *    *    *

私は契約会社に、笹木さんは断りたい、と、
明確に自分の意志を告げて、そのとき初めて、
採用が一度決まったスタッフさんにNGの判決を下した。

そんなに、ダメみたいなの?

はい。
(人の可能性に関して、こうはっきり断言したのは
生まれて初めてだったかもしれない。)

ダメです。たぶん、彼は、ずっとこのままです。
企業さんにだったら私が何度でも、土下座してでも謝りますから
彼は、現場に入れないで下さい。私は入れたくありません。
お断りするなら、本当に「絶対今のうち」なんです!

まぁ、ぷらさんがダメって言うんだから、
それは本当にダメなんだろうな。

ありがたい!所長のこのひとことに救われて、
以後、この手法を取ることができるようになった。

自分が面接した人に自分でNGを下すことに
社内の目を気にするストレスは無い。
辻褄を合わせない気持ちも無い。

面接官が相手の事を何もかも見抜けるのなら、
どこに会社にも、社内の問題児なんてあり得ない。
ご同業の人は、たぶん皆、同じように思っていることだろう。
ただし、自分が持つ「見る目」の精度は
逐一上げていかなくてはならない、と痛感する。

笹木さんが明日、印鑑を持ってきたとしても、
その書類を企業さんに提出することはもうない。

その時点で、すでに心は決まっていたのに、
「明日は忘れないでね。」なんて、
どうして私は明るく言ってしまったんだろう。

そんな悔いの気持ちをずっと抱きながら、
私は帰路についた。




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